三井住友DSアセットマネジメント株式会社(代表取締役社長 兼 CEO:猿田隆)は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行しております。このたび、マーケットレポート「運用者の視点:中国企業の『重複上場』」を2020年7月14日に発行いたしましたので、お知らせいたします。
<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、米国に上場している中国企業が自国市場の香港株式市場にも上場する『重複上場』についてです。
【ポイント1】加速する米国上場中国企業の香港への『重複上場』
■米国に上場する中国企業が香港株式市場に『重複上場』する動きが加速しています。先陣を切ったネット通販最大手のアリババ(2019年11月に香港上場)を契機に、その後多くの米国上場中国企業が『重複上場』の意向を表明しました。2020年6月には、オンラインゲーム大手のネットイースとネット通販第2位のJDドットコムが立て続けに香港に上場しましたが、いずれの銘柄も知名度が高く、新型コロナウイルスの感染拡大でオンラインゲームやネット通販需要が拡大するとの見方から多くの投資家の注目を集めました。とりわけJDドットコムは、アリババに対抗して始めた618セール(6月1日-18日)の最終日である同社の創立記念日を香港上場日とし、香港証券取引所での銘柄コードを「9618」とするなど上場を祝う姿勢が強くうかがえました。
【ポイント2】『重複上場』の理由にある米中対立
■アリババが香港に『重複上場』したのは、香港証券取引所が普通株と議決権が異なる種類株を発行する企業の上場を認めたことが最大の理由でした。一方、ネットイースやJDドットコムなどが『重複上場』を決めた背景には、別の理由も見え隠れします。それは米中対立が続く中で、米トランプ政権や議会が米国で上場する中国企業への視線を厳しくし始めたことです。これにより、米国に上場する中国企業がすぐにでも米国上場の地位を奪われるわけではありませんし、米国上場の中国株に投資し、収益源としている米国の投資家も数多く存在します。しかし、中国企業が米国で資金調達し、上場を維持することのハードルが以前よりも高まるリスクを踏まえれば、本国の香港で『重複上場』を目指すのは自然な流れであり、中国政府も、自国市場への回帰を基本的に歓迎しているとみられます。
【今後の展開】香港株式市場で高まる中国本土の存在感
■『重複上場』はネットイースやJDドットコムで終わりではありません。今後も複数の米国上場中国企業が『重複上場』に向かう見込みであり、インターネット検索大手の百度や、教育サービス大手の新東方教育科技、中国でケンタッキーフライドチキンやピザハットを運営するヤム・チャイナなどの名前があがっています。いずれも中国や香港の投資家にとってなじみの深いサービスを提供する企業で、上場すれば人気の案件となる可能性が高そうです。また、こうした銘柄が将来的にストックコネクト(上海・深セン-香港株式相互取引制度)の対象になれば、中国本土の個人投資家に新たな投資機会を提供することにもなります。香港株式市場では、中国本土の存在感が、上場銘柄の顔触れと投資家層それぞれの面で、今後一段と高まっていきそうです。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
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