業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図のとおりです。
5. 企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の標的が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について調査しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体は調査対象から除外しています。
調査対象の総数は15件です。
5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が5件(33.3%)、「非上場企業」が主体となった事例が10件(66.7%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は4件増加、「非上場企業」の件数は13件減少しました。
割合を比較すると、「上場企業」の割合は29.1ポイント増加しました。
5-2. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は変動なし、「非上場企業」の件数は13件減少しました。
割合を比較すると「上場企業」の割合は15.4ポイント増加しました。
5-3. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は3件減少、「非上場企業」の件数は7件減少しました。
割合を比較すると、炎上した企業のうち、「上場企業」の割合は1.3ポイント増加しました。
5-4. 炎上の対象となった従業員数と売上高の散布図
従業員数2,000人未満、売上高1000億円未満の規模の企業で炎上事案が多く発生しました。
一方で従業員数約2,000人以上の企業でも炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や企業規模でも、炎上は発生する可能性があるといえます。
また下図のグラフにはありませんが、従業員数約1万人、売上高約7000億円といった大企業の炎上事案も確認されました。
■分析コメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏
9月の事例で興味深いのは、企業が提供する広告やコンテンツが、想定しづらい形で消費者に不安や混乱を引き起こし、炎上に繋がった点です。まず、ライオンのCM効果音に対する批判は、音声が「Jアラート」に似ているために視聴者に不安感を与えたというものでした。Jアラートは、緊急時に国民へ危険を知らせる重要なシステムであり、その音声は国民にとって緊迫感を伴うものです。このような警告音に類似した音を広告に使用することは、意図せず視聴者の心理的負担を増大させる可能性があります。広告やコンテンツ制作においては、視聴者が予期しない不安やストレスを感じることのないよう、背景や社会的文脈を十分に考慮した演出が求められるといえます。
ゆうちょ銀行の広告での「Mizuho Bank」と記載された通帳は、企業の広告作成における確認不足が原因でした。色調を変化させるなどしなければ透かしに気づきづらいことが、見過ごされた背景にあると考えられます。ただし、少なくとも異なる金融機関のものであることは丁寧に確認すれば気づけたはずです。特に金融機関においては、消費者の信頼がビジネスの根幹を成しているため、こうした確認不足によるミスがリスクとなります。この事例は、広告作成の過程での確認体制の強化がいかに重要であるかを示しています。
これら二つの事例に共通する特徴は、視覚・聴覚を通じて消費者が抱く感情や印象が企業の評判に直結する点です。対策としては、広告やコンテンツの制作段階で、消費者の反応をシミュレーションするプロセスを組み込むことが重要です。特に、音やビジュアルに関しては、消費者に不快感や誤解を生じさせないためのチェックや、他社の物が使われていないかなどのチェックが必要といえます。
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)