ESG四半期レポート:2023年第2四半期

シュローダーでは、企業とのエンゲージメントや実態調査など、サステナビリティへの取り組みを掲載したサステナブル・インベストメント・レポートを四半期毎に作成しています。本レポートでは、2023年第2四半期のサステナブル・インベストメント・レポートを構成する内容の一部をご紹介します。今回のテーマは、社債投資家は鉱山会社に対して自然への影響についてどのように責任を問うか、循環型経済はなぜ真のサステナビリティに不可欠なのかについてです。

社債投資家は、鉱山会社に対し、自然への影響についてどのように責任を問うか



Ella Thomas
社債ポートフォリオ・アナリスト

インパクトの創出は、株式投資家だけの仕事ではありません。私たちは、地理空間データや生物多様性の豊かさなどの分析を通じて、どのように社債のリスクを特定しているかを説明します。

化石燃料からの脱却が進むにつれ、素材への需要は増大します。ネット・ゼロ経済への道筋は金属を多用することになるため、移行を推進するために必要な重要な材料のサプライヤーである鉱山会社にとってはポジティブな要素となります。

一方、地球の有限な資源の採掘と利用にはリスクが伴います。鉱山会社は世界に大きな影響を及ぼし、汚染、土壌浸食、人間と野生生物の衝突、生物多様性の損失をもたらします。これらはひいてはコストの増加、操業許可の喪失、風評被害につながる可能性があります。例えば、2019年にブラジルのミナスジェライス州で起きたブルマジーニョ尾鉱ダム決壊事故では、270人が死亡し、多大な環境破壊をもたらしました。責任を負うことになった鉱山会社は、災害の影響を受けた地域社会に対して70億ドルの支払いを命じられ、元CEOを含む16人の幹部社員が殺人と環境破壊の罪で起訴されました。

リサーチ
2021年、シュローダーのサステナブル投資チームは、ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)のデータを用いて、自然関連リスクに最もさらされているセクターに関する調査を開始しました。この調査は、社債チームが関連するセクターを特定し、分析の最初の出発点を定めるのに役立ちました。

分析は以下の2つの段階に分けられました。
1. 企業のリスク・エクスポージャーと情報開示の特定
2. リスクの管理

各リスク・エクスポージャーを特定するため、約70社の鉱山所在地と、生物種の全体数および絶滅危惧種の数を指標とした生物多様性の豊かさに関する学術研究のデータを組み合わせました。その後、インベストメント・インサイト・ユニットが地理空間分析を実施し、鉱山所在地と生物多様性の豊かさのデータをプロットしました。

企業のリスク・エクスポージャーを特定した後、企業の方針、サステナビリティ・レポート、その他の外部のデータソースを分析し、グローバル・スタンダードに照らして企業の情報開示レベルを評価しました。また、これらの企業がどれだけ積極的に影響とリスクを管理しているかを把握することもできました。例えば、生物多様性に関連する地域での事業、影響を受けた絶滅危惧種、攪乱された土地面積と修復された土地面積、生物多様性管理計画、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)やサステナビリティ会計基準審議会(SASB)、CDPなどの標準的な枠組みに基づく要求事項などを評価しました。

エンゲージメント
調査とその後の分析により、よりよい慣行に向けて後押ししたい鉱山会社とのエンゲージメントを開始するための出発点が見えてきました。その一社が、2022年6月にエンゲージメントを実施した金生産会社Endeavour Mining社です。私たちの主な目的は、同社が生産拠点でどのように自然関連リスクを管理しているかをより深く理解することでした。私たちは、自然資本と生物多様性の問題について、より良い慣行が見られることを期待していると強調しました。

同社は最近、20億ドルでTeranga Gold社を買収し、西アフリカ最大の金生産会社となりました。足元の買収活動が、生物多様性に関するリスクを増大させている可能性があるとの懸念があり、この点を同社に伝えました。さらに、新規に買収する鉱区については、包括的な環境・社会的影響評価を実施すること、すべての鉱区で生物多様性に関する標準的なアプローチを実施することの重要性を強調しました。

Endeavour Mining社は、採掘事業による影響を軽減するための措置を講じています。例えば、セネガルでは、プロジェクトの開始時に、操業開始予定地域の社会・環境評価を実施しています。直近、同社はある場所にチンパンジーの集団がいることを確認しました。西アフリカのチンパンジーは絶滅の危機に瀕しており、セネガルでは保護の対象となっています。同社は、チンパンジーの個体数を保護し、できればその数を増やすために、約1500ヘクタールの立ち入り禁止区域を設定し、そこでは採掘や採掘に関連した活動は一切行なわないことにしました。さらに同社は、Sabodala-Massawa鉱山周辺の野生生物を保護するため、さまざまな地方自治体や環境団体と協力していくことを約束しました。

Endeavour Mining社はまた、土地保全と鉱山の回復の目標について概説し、今後の戦略について詳しく説明しました。

同社は、現在のESG戦略の強化に積極的に取り組んでおり、重要な環境問題を管理する能力があると評価しています。今回のエンゲージメントでは、人権や気候変動、水の利用等、その他の重要なトピックについても議論しました。私たちは、今年の同社の進捗状況をモニターし、戦略と実施についてさらなるフィードバックを行う予定です。

Endeavour Mining社とのようなポジティブなエンゲージメントは、私たちが企業への投資を行うか、あるいは継続するかを決定する際の重要な要素です。
インパクトの創出は、株式投資家だけの仕事ではありません。私たち社債投資家の重要な仕事でもあります。

循環型経済とは何か、なぜ真のサステナビリティに不可欠なのか

現在の経済モデルは時代遅れです。私たちの地球と未来の世代が繁栄するためには、循環型経済への移行が必要なのです。




Jack Dempsey
ファンド・マネジャー

Paul Lamacraft
シニア・インベストメント・ディレクター

今日、人類は地球が維持できる資源量の1.7倍1もの資源を消費しており、世界人口は急増している一方で、温室効果ガスが急速に発生し、気候を不安定にしています。
循環型経済への移行がなければ、地球は過重な負担を強いられ、次世代の繁栄は失われるでしょう。
しかし、循環型経済とは何か、なぜそれほど重要なのか、そしてどのような機会があるのでしょうか。

循環型経済とは
真の循環型経済とは、消費者が必要とするものを、その過程で廃棄や汚染を生じさせることなく提供することです。既存の「Take(資源を採掘して)、Make(作って)、Waste(捨てる)」という直線型の経済システムに対し、循環型経済は、効率性や再生特性、再利用性とリサイクル性を念頭に置いたシステムの設計に努めるものです。

循環型経済は、廃棄物や汚染が発生しないようにし、素材を使い続ける、というものです。生産のバリューチェーンを単純化することで、生産が始まる前の段階で排出をなくすことを促進することができます。そのため、この新しいシステムは、エネルギーだけでなく産業や農業、土地利用に関連する生産プロセスから排出される、世界の温室効果ガスの45%へ対処することができます。

このグローバルかつ永続的なトレンドは、将来にわたって地球と生活水準を守るために不可欠です。消費者がサステナブルな製品やサービスを欲し、より高い環境基準を求めており、各国政府はインセンティブや支援を提供しています。テクノロジーもまた、この移行を後押ししています。

これにより、2030年までに4.5兆ドル、2050年までに25兆ドルの機会が生まれると推定されています2。投資家は、その成功に向けて資産を投下することで、支援し、利益を得ることができます。私たちは、このような影響力の大きい企業に投資することで、優れたリターンが得られると考えています。

なぜそれが重要なのか
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇を産業革命前と比べ1.5℃に抑えるためには、2030年までに温室効果ガス排出量を2010年比で45%削減し、2050年までにネットゼロにする必要があると予測しています。一方で、米国エネルギー情報局は、2050年の温室効果ガス排出量が2010年比で30%増加すると予測しています。

このような状況の中、循環型経済への移行が不可欠であり、さらなる注力とエンゲージメントが投資機会につながるとみています。

投資機会はどこにあるのか
循環型経済への移行の成功は、影響力とイノベーションに依存しています。これらの要素は、投資機会を提供するうえで支援材料となる5つの主要なサブテーマに反映されています。

1. 循環型サプライチェーン:サステナブルな調達と再生可能な材料から始める
2. サービスとしてのプラットフォームおよびプロダクトの共有:製品の利用率を高めるシステムの開発
3. 製品寿命の延長:製品デザインにおいて寿命の長さを考慮
4. 回収とリサイクル:使用期限が過ぎた材料を回収し、再利用する
5. テクノロジーの実現:ソフトウェア、デジタル化等でビジネスを支援
これらのサブテーマは、よりサステナブルな未来を推進し、それに貢献することができる投資機会の規模の大きさを示しています。

アクティブ・オーナーシップ:どのように影響力を行使するか
私たちは、以下の方法で企業への影響力を行使しています。
対話:企業やその他の投資先が、循環型経済関連のリスクや機会にどのように取り組んでいるかを理解
エンゲージメント:資本配分の再調整や経済的弾力性のさらなる注視等を通じて、循環型経済の成果を向上させることを目指す
議決権行使:必要に応じて、株主総会で議決権を行使する際に、エンゲージメントの成果を考慮する

循環型経済
未来の世代のための繁栄
3:World Bank.
出所: Schroders、2023年6月時点


2023年第2四半期
エンゲージメント

2023年第2四半期
株主の議決権行使


弊社は、我々には株主の議決権を行使する義務があると考えています。従って、議案を評価した上で、株主に対する受託者責任のもと、議決権を行使します。シェアブロッキング等の理由により制限が設けられていない限り、全ての決議において投票しています。
今四半期は保有する企業が開催したうち約96%にあたる4100回の株主総会において議決権を行使しました。


【本資料に関するご留意事項】
  • 本資料は、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッド(以下、「作成者」といいます。)が作成した資料を、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が和訳および編集したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。英語原文と本資料の内容に相違がある場合には、原文が優先します。
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この企業の情報

組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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