シュローダー 2026年市場見通し:日本株式

日本企業のポジティブな変化に注目

2026年市場見通し
日本株式
日本企業のポジティブな変化に注目


豊田一弘
日本株式運用総責任者

来年度の2桁増益は織り込まれたものの堅調な推移を予想
今年度の日本企業の業績は、昨年度比で概ね横ばい圏での着地が見通される中、2025年のTOPIX(東証株価指数)は20%を超える上昇となりました。今年度はトランプ関税など利益に対するインパクトが大きなスイング・ファクターが存在したため、市場は来年度の業績をベースにした株価形成を進めたものと判断しています。2026年度の日本企業は2桁の増益がコンセンサスとなっており、この水準の増益は既に株価に織り込まれたと見られるものの、日本企業における資本効率の改善から下値は限定的と見ています。向こう1年のスパンで見た場合、今年よりもマイルドな上昇になると思われますが、引き続き堅調な相場を想定しています。

まず、マクロ的な視点では、企業の成長投資に注目します。企業が持ち合い株の売却などに伴うキャッシュを成長投資に振り向ける動きが加速するものと見ています。高市政権では企業の設備投資促進税制の導入が予定されていることに加え、来年改訂予定でのコーポレートガバナンス・コードではバランスシート上のキャッシュの活用に焦点を当てる内容が盛り込まれるようです。企業の生産性向上に資する設備投資やシナジー創出を狙ったM&Aなど日本企業の活発なリスクテイクが全体として将来利益への期待を高める方向に作用すると見ています。一方、ボトムアップのアクティブ投資の観点ではやや注意が必要です。企業の積極的な投資の果実は中長期での企業価値に大きな影響を与えます。従って、適切なゴールを設定し、成長機会をとらえ、ディシプリン(投資規律)の効いた投資を実施した企業は中長期で企業価値の大幅な向上を実現できるものの、それができなかった企業は逆に企業価値を毀損することになります。その意味で、2026年は今後の日本企業の企業価値を占う上で非常に重要な局面を迎えるものと見ています。

また、個人消費の動向も重要なポイントの一つと言えます。2026年はインフレ率がやや鈍化すると予想される中、遅れていた実質賃金のプラス転換がいよいよ実現するものと見られます。賃金上昇の定着で消費者の「インフレマインド」が消費の活性化につながる可能性があります。マクロ面で見ると、日本の実質消費はコロナ前の水準に依然として戻っておらず主要先進国において稀な状況となっており、十分なアップサイド余地を有していると言えます。一方、ミクロで見ると、消費の二極化により(個人レベルでも二極化の動きがあります)、企業の優勝劣敗が進むと見られます。資産効果を背景とした高額消費が一つの極だとすれば、価格センシティブな商品群でのディスカウンターの活況はもう一つの極と言えるでしょう。このような難しい事業環境に対応できる企業は、消費者から大きな支持を得られる可能性があります。

外的な要因として、国内の政治情勢にも注意が必要です。最大の争点は衆議院の解散、総選挙です。総選挙の結果次第では市場に大きなインパクトを与える可能性があると見ています。例えば、高市政権の信任が得られた場合、政治の安定性が増すという観点で市場はポジティブに受け止める可能性がありますが、一方で、積極財政に対するマーケットの懸念が高まるネガティブなシナリオも想定されます。従って、金利、為替、株式それぞれのマーケットに大きな影響を及ぼすことが想定されますので、来年の最も大きなイベントの一つとなり得ると判断しています。

日本銀行の金融政策とターミナルレート
「金利のある世界」に戻った日本経済において、注目されるのが日銀の決定する政策金利のターミナルレートです。今年、日銀は1月、12月とそれぞれ25bps(ベーシスポイント)の利上げを決定し、政策金利は75bpsまで引き上げられました。現在、日銀は中立金利を1%から2.5%のレンジで示していますが、次の利上げ以降は政策金利がいよいよその中立金利ゾーンに入ることになり、マーケットでは今回の利上げサイクルにおけるターミナルレートが意識されることになります。株式市場では現在1.25%-1.5%のターミナルレートがコンセンサスになっていると思われますが、来年の後半に25bpsの利上げを行い政策金利は1%まで引き上げられると予想します。12月の金融政策決定会合後の記者会見で植田総裁は中立金利に関する追加的な情報を提供しませんでしたが、来年は何らかの情報が提供される可能性がありますので、注意深くフォローしていきたいと思います。

「東証要請」が日本企業にもたらしたもの
2023年3月に東証から上場企業に対して出された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がもたらした最も大きな成果の一つは企業の「キャッシュアロケーション」の開示にあると思います。キャッシュ・インフローとその使い道であるキャッシュアウトフローが多くの企業で開示され、投資家との議論に活用されています。

インフローの観点では、複数年度の営業キャッシュフロー予想に加え、持ち合い株の売却資金などバランスシートの効率化がどのように進められるかに注目します。一方、キャッシュ・アウトフローの観点で最も注目するのは投資と還元のバランスです。投資に関してはその意思決定においてディシプリンが保たれているかという点が最も重要です。この点、マネジメントの重要な投資計画に関して社外取締役の適切なチェックが働いているかどうか、というガバナンスの観点も検証ポイントとなります。

また、株主還元という点では大きな進展がみられています。上場企業の自社株取得枠は2024年度に大幅拡大し、20兆円弱の水準に達しました。2025年度についても前年度同様に高水準を維持しています。企業の余剰資本が投資家に返還され、その資金が成長機会を捉えようとする企業の成長投資へ供給される、という好循環を継続することが重要です。資本の効率性をより意識した経営姿勢は日本の株式市場の魅力度を高めることに寄与すると見ています。この観点では、昨今、日本企業が「ベストオーナー」の観点で事業売却などの意思決定を行っていることは注目に値します。バランスシートを拡大させずにいかにボトムラインの利益を増やすかという姿勢は重要で、このような日本企業のポジティブな変化はさらに加速するのではないかと思います。


【本資料に関するご留意事項】
  • 本資料は、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。
  • 本資料に示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。
  • 本資料は、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、弊社はその内容の正確性あるいは完全性について、これを保証するものではありません。
  • 本資料中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。
  • 本資料中に個別銘柄についての言及がある場合は例示を目的とするものであり、当該個別銘柄等の購入、売却などいかなる投資推奨を目的とするものではありません。また当該銘柄の株価の上昇または下落等を示唆するものでもありません。
  • 本資料に記載された予測値は、様々な仮定を元にした統計モデルにより導出された結果です。予測値は将来の経済や市場の要因に関する高い不確実性により変動し、将来の投資成果に影響を与える可能性があります。これらの予測値は、本資料使用時点における情報提供を目的とするものです。今後、経済や市場の状況が変化するのに伴い、予測値の前提となっている仮定が変わり、その結果予測値が大きく変動する場合があります。シュローダーは予測値、前提となる仮定、経済および市場状況の変化、予測モデルその他に関する変更や更新について情報提供を行う義務を有しません。
  • 本資料中に含まれる第三者機関提供のデータは、データ提供者の同意なく再製、抽出、あるいは使用することが禁じられている場合があります。第三者機関提供データはいかなる保証も提供いたしません。第三者提供データに関して、本資料の作成者あるいは提供者はいかなる責任を負うものではありません。
  • シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。
  • 本資料を弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。

この企業の関連リリース

この企業の情報

組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

検索

人気の記事

カテゴリ

アクセスランキング

  • 週間
  • 月間
  • 機能と特徴
  • Twitter
  • デジタルPR研究所