無人航空機による「クロツチクジラ」の 希少な生体撮影に成功

First drone footage of Sato's beaked whales (Berardius minimus)
in Abashiri Submarine Canyon, Hokkaido, Japan


2023年5月8日、東京農業大学 生物産業学部 海洋水産学科(北海道オホーツクキャンパス・網走市)の小林 万里 教授と研究員の小林 駿 博士、あばしりネイチャークルーズ(前田 光彦 船長・網走市)の生田 駿 氏が、無人航空機を用いて「クロツチクジラ(Berardius minimus)」の群れの撮影に成功しました。「クロツチクジラ」は2019年に新種として記載されたハクジラ類で、生息域が限定されており、洋上での浮上時間が短い上、警戒心も非常に強く船舶で接近することが難しいため観察例が少ない種です。

今回、無人航空機によって真上から「クロツチクジラ」生体の姿がはっきりと撮影され、映像が公開されるのは世界初だと思われます。

「クロツチクジラ」が観察されたのは、網走港から北東に約20kmの網走海底谷と呼ばれる海域で、調査チームはこの日5頭と3頭からなる、少なくとも2群(3回)の撮影に成功しました(図1)。オホーツク海には同じツチクジラ属の「ツチクジラ(B. bairdii)」が同所的に生息していますが、撮影された個体の外部形態の特徴(体長、黒っぽい体色、明瞭な「ダルマザメ」の噛傷、相対的に短い吻部)などから、調査チームは今回撮影された鯨類は「クロツチクジラ」であると同定しました。今後、調査チームは撮影された映像などをもとに、本種の行動や群れの組成について研究を進めていく予定です。


図1. クロツチクジラの群れの発見位置

「クロツチクジラ」の群れを発見した位置はそれぞれ☆で示しています。細い線は10m間隔の等深線、太い線は100m間隔の等深線を表しています。発見地点周辺は、網走海底谷と呼ばれる急峻な谷状の地形になっています。GMT: The Generic Mapping Tools ver. 5.4.5 (Wessel et al. 2013) で作成。

図2. 無人航空機で撮影されたツチクジラとクロツチクジラの比較

「ツチクジラ(図左)」の体色が明るい灰色または黄土色であるのに対して、「クロツチクジラ」の体色は黒に近い暗色で、白い「ダルマザメ」の噛傷が目立ちます。また、「クロツチクジラ」は「ツチクジラ」よりも体長に対する吻の長さが短く吻部が白いという特徴があります。さらに「クロツチクジラ」は成熟個体の体長が「ツチクジラ」と比べて有意に小さいことが明らかになっています。
 今回撮影された個体の外部形態(図右)は、いずれも「クロツチクジラ」の特徴と一致しており、推定体長も既知の「クロツチクジラ」の体長の範囲の中に収まっていました。以上のことから、今回撮影された鯨類は「クロツチクジラ」であると同定しました。

撮影:生田 駿


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農林水産業が非常に盛んな日本の食料生産基地北海道・オホーツクにキャンパスがあり、周囲には、世界自然遺産の知床等、大自然が存在。生物産業の最前線となるフィールドで、この地でしかできない教育・研究を展開しています。

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