関西学院大学 障害者、性的マイノリティー...「垣根なき共同体」を目指して~公開シンポジウム「誰一人取り残さないために~SDGsと多様性尊重の取り組み~」開催



多様性(ダイバーシティ)を認め合い、「垣根なき共同体」の実現を目指して関西学院が制定した「関西学院インクルーシブ・コミュニティ実現のための基本方針および行動指針」について紹介し、これからの社会のあり方を考えるシンポジウム「誰一人取り残さないために~SDGsと多様性尊重の取り組み」が5月21日、オンライン併用で行われました。本学の望月康恵・人権教育研究室長(法学部教授)と、障害を価値に変えるという視点でビジネスを展開する株式会社ミライロの垣内俊哉・代表取締役社長、早稲田大学の下田啓・スチューデントダイバーシティセンター長(法学学術院教授)が、大学や企業が取り組むべき課題について語り合いました。




 関西学院大学西宮上ケ原キャンパスの中央講堂を会場に、オンラインを含め約140人が聴き入りました。最初に、村田治学長が、本学が国内の大学の中で早くから、SDGsの目標に掲げられている多様性、平等、ジェンダーという課題に取り組んできた経緯を紹介。続いて、望月教授が2020年4月に制定した「関西学院インクルーシブ・コミュニティ実現のための基本方針および行動指針」の内容とともに現在までの取り組みについて、ダイバーシティ推進本部長を務める柳屋孝安・学院常任理事(法学部教授)が同推進本部の役割と取り組みについて、それぞれ説明しました。
 
 シンポジウムではまず、垣内社長が「バリアバリュー~障害を価値に変える」をテーマに、幼少期から車いす生活だった自らの生い立ちを振り返りながら、学生時代に起業した経緯を説明。「障害があることで不便、不自由はあるが、視点を変えれば、障害が強み、プラス、価値に変わる」と語りかけました。そのうえで、日本の地下鉄のバリアフリー率が欧米諸国より進んでいるデータを示し、「日本は障害者や高齢者が世界一外出しやすい国ですが、外出したくなるかは別。社会の対応が、無関心か過剰かに二極化している。多くの人が違いを理解していないからだ」と強調。「障害は人にあるのではなく、環境にある。社会にあるバリアを解消していかなければならない。ハードは変えられないものがあるかもしれないが、ハート、意識、行動を変えることは今すぐできる」「ハードもハートも世界に誇れる日本にしていきたい」と環境、意識、行動の変革の重要性を訴えました。

 一方、「早稲田大学におけるダイバーシティと学生支援」と題して話した下田教授は、最初にダイバーシティについて、少子化などの予測をもとに「大学自体を継続可能にするための解決策」であり、さらに米国のスポーツにおける人種差別の歴史を振り返りながら「機会平等、真の競争がない社会は実力主義を語れない、ダイバーシティ&インクルージョン抜きの『実力主義』は幻想にすぎない」とし、「大学が能力主義の現場である証」と指摘。そのうえで、2017年に制定したダイバーシティ推進宣言などの推進体制や、学生主体で動いているスチューデントダイバーシティセンターについて説明しました。課題としては、学内で温度差があり、「気まずさの民主化」という言葉で「心構え」の共有、相談業務にあたる人材育成・確保、多言語サポート対応の難しさなどがあると語り、「組織としてのコミットメント」「人的な『輪』の拡大」の必要性を訴えました。

 パネル討論では、垣内社長が、大学に入学する障害者は増えているが、占める割合はまだ1.2%で、米国の19.4%、英国の17.3%に比べると低い数字を示し、障害者の教育水準を上げるには小学校~高校のバリアフリー化を進める必要があると指摘。2016年のリオデジャネイロ、2018年の平昌とオリンピックで現地に出かけた際の経験として、バリアフリーが最悪だったリオデジャネイロでは車いすを押すのが取り合いになるほど多くの人からサポートを受けたのに対し、施設的に完ぺきだった平昌では全く声をかけられなかったことを紹介し、「障害者の教育機会・社会参加が増える中で、社会に出ても距離・壁があれば居心地がよくない。ハードもハートも必要で、意識を変え、社会全体の行動を変えていくことが求められる」と語りかけました。
 下田教授は「ダイバーシティでは組織自体が変わる必要があるが、ほかの組織とどう関わるかが重要になる」「大学と企業が連携していくことが大事。インクルーシブ・コミュニティの実現という目標に向かう中で、一つの正解があるわけではない。同じような関心を持つ当事者同士が交流し、アイデアを出し合い、共有していく。そのうえで知識・意識を変えていくつながりが必要。目標を目指すには数値化で達成度を図ることも重要だ」と指摘しました。

 議論を受けて、望月教授は「インクルーシブ・コミュニティ実現に向けての取り組みは始まったばかり。本学は学生が世界市民になることを目標にしている。地に足をつけて、自分たちができることは何かを考え、世界へ目を向けさせたい」「教育機関は知識を提供することに固執しがちだが、共同体を作ることは、こうした経験を共有することができた学生・人々を世に送り出す大切な作業がある。ハードを作るのは大切だが、ハードを作る人々の気づき・共感がなければ、どんなに作っても無駄になる。大学として、様々な取り組みとしながら、共感できる人々をいかに作っていくのかという視点が大切だと改めて感じた」と語りました。


■関西学院インクルーシブ・コミュニティ実現のための基本方針および行動指針
 https://ef.kwansei.ac.jp/efforts/inclusive

▼本件に関する問い合わせ先
関西学院広報室
住所:兵庫県西宮市上ヶ原一番町1-155
TEL:0798-54-6017
FAX:0798-54-0912


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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0 万円
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〒662-8501 兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
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