東日本国際大学は8月1、2日の両日に「第3回福島・チェルノブイリ・スリーマイルアイランド国際シンポジウム」を開催した。これは、3つの原発事故を教訓・事例とした、福島第一原発事故の事故収束、福島の復興と地元コミュニティ再建の方途を多角的に提示、検証することを目的としたもので、国内外の研究者や専門家ら約20人が発表者として参加。原発対策の世界の英知が結集し、議論を深めた。
同シンポジウムは2017年に第1回をウクライナのキエフ市など、第2回をアメリカ・ワシントンで開催した。日本初開催となる第3回は、「チェルノブイリ・スリーマイルアイランドの教訓を福島に生かす~コミュニティ再建の方途を目指して~」をテーマに、原発に一番近い大学である東日本国際大学の主催で実施。主管は同大福島復興創世研究所、責任者を環境除染の世界的権威である同研究所の大西康夫所長が務めた。
原発関連企業や一般企業、行政関係者、地元住民ら約340名(2日間延べ)が参加し、真剣に各講演に耳を傾けていた。
シンポジウム1日目は、開会式で吉野正芳復興大臣が「風評と風化という2つの風に負けないよう、復興庁として重く受け止めて対策に取り組んでまいります」と述べ、同大の吉村作治学長、福島復興創世研究所の大西所長があいさつした。
プレゼンテーションでは9名の専門家・研究者が、福島原発事故からの環境回復や廃炉、放射線医療への課題などを発表した。
2日目は、大西所長をはじめ、海外の専門家7名がチェルノブイリとスリーマイルアイランドに関してプレゼンテーションを実施。2日間の発表者が登壇してのパネルディスカッションも行い、議論を深めた。
閉会式では、元復興副大臣の若松謙維参議院議員が4年前に吉野復興大臣とハンフォード・サイトを視察に行った経緯を話しながら「世界で起きた原子力災害はすべてが進行中であるため、国際協調が非常に大事です。ぜひこのような活動を継続していただきたい。今後も福島復興のために努力してまいります」と語った。
学校法人昌平黌の緑川浩司理事長は「震災後、原発に一番近い大学として今回のシンポジウムを開催した意義は大きい。原発事故の収束がなければ福島の復興はありません。今回本学で開催できたことに心から感謝いたします」と話し、大西所長は「福島の人たちが『これからどこに向かっていくのか』という自分たちの将来を見つけることに役に立ちたい思いで開催しました。地元の人が力を付けてコミュニティが回復していくことを期待します」と述べて2日間を締めくくった。
また8月3日は、発表者が福島第一原子力発電所などを視察し、改めて福島の現状を確認、認識した。
◆各プレゼンテーションのタイトルと発表者
【8月1日:福島に関する内容】
1.原子力機構による福島県における環境回復に向けた取り組み
飯島和毅(日本原子力研究開発機構 福島環境安全センター)
2.福島における環境回復の状況と課題について
小沢晴司(東北地方環境事務所)
3.福島第一周辺の環境と課題
角山茂章(福島県環境創造センター)
4.福島第一発電所周辺での農業学的環境修復
三倉通孝(日本原子力学会 福島特別プロジェクト委員会)
5.福島第一の現場と福島復興本社の取り組みについて
大倉誠(東京電力ホールディングス 福島復興本社)
6.2011年3月11日の福島原発事故による間接的健康影響
ユリヤ・リャムジナ(福島県立医科大学)
7.福島第一原子力発電所の廃炉戦略
野村茂雄(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)
8.福島第一原発事故の廃炉に関わる燃料デブリ処理研究
佐藤修彰(東北大学多元物質科学研究所)
9.東京電力HD福島第一原子力発電所の廃炉に向けた課題とJAEA/CLADSにおける国際協力の取組み
鷲谷忠博(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構)
【8月2日:チェルノブイリとスリーマイルアイランドに関する内容】
10.チェルノブイリ原発事故からの復興
大西康夫(東日本国際大学福島復興創世研究所)
11.チェルノブイリ新安全閉じ込め構造物内の核燃料の臨界時における放射線の危険性
ガンター・プレッツシュ(Gesellschaft fur Anlagen- und Reaktorsicherheit:GRS)
12.チェルノブイリ原子力発電所の新安全閉じ込め構造物(安全面について)
バレリー・スルモフ(ノヴァルカ JV NOVARKA)
13.シェルターオブジェクト(SO)内の効果的な増倍率の変化に係る調査
ローマ・ゴドゥン(ウクライナ国立科学アカデミー原子力発電所安全問題研究所 Institute for Safety Problems of NPP of National Academy of Sciences of Ukraine)
14.新安全閉じ込め構造物に係る熱、湿度及び放射線の分析及び予測(CFDモニタリング)
パブロ・クルコフスキー(ウクライナ国立科学アカデミー熱工学研究所 Institute of Engineering Thermophysics,National Academy of Sciences of Ukraine)
15.チェルノブイリ原子力発電所のオブジェクト・シェルター(SO)及び新安全閉じ込め構造物(NSC)における熱、湿度、及び放射線に係るコンピューターモニタリング
ミハイロ・メテル(ウクライナ国立科学アカデミー熱工学研究所 Institute of Engineering Thermophysics,National Academy of Sciences of Ukraine)
16.原発事故後の状況に関するIAEAの見解
タチアナ・キロチツカ(国際原子力機関 IAEA)
17.事故により生じた水処理の歴史
ジム・バーン(Byrne&Associates)
18.TMI-2汚染除去の歴史
ジム・バーン(Byrne&Associates)
▼本件に関する問い合わせ先
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