シュローダー マクロ経済見通し(2024年7-9月期)

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

基本シナリオ

【米国】


足元、米国経済が直ちに景気後退に陥るとの懸念が広がりつつありますが、市場参加者は過度な懸念をしていると考えます。失業率の悪化は解雇によるものではなく、主には求人数を上回るペースで移民による労働供給の増加がみられたためです。労働市場は安定化し、雇用と賃金上昇が落ち着きを取り戻すとみています。堅調な消費に支えられ、米国経済は24年に2.7%、25年にはやや減速するものの2.1%の経済成長を達成するとみています。インフレについては従来予想を下方修正し、インフレ率は24年に2.9%、25年に2.1%に低下すると考えます。コアインフレ率の減速を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は24年9月に利下げを開始し、25年末までに計100bpsの利下げを実施すると考えます。


【ユーロ圏】

一部のユーロ圏経済指標は、サービス業は好況である一方、製造業のセンチメントが悪化していることを示唆しています。世界では製造業の景気サイクルが好転の兆しを見せる中、欧州製造業の回復ペースが劣後していることは、欧州製造業の競合優位性が失われつつあることを示している可能性があります。製造業が足枷になるとみて、ユーロ圏経済成長率については従来の見通しを下方修正し、24年に0.8%、25年に1.3%になると予想します。一方、好況なサービス業を背景にコアインフレ率は3%弱の水準で停滞しており、インフレは今後も粘着性を示す可能性があります。よって、インフレ率については従来見通しから上方修正し、24年に2.6%、25年に2.5%と緩やかなペースでの減速を予想します。インフレ減速の勢いが衰えることから、欧州中央銀行(ECB)による25年末までの追加利下げ幅は計100bpsにとどまるとみており、足元の市場の利下げ期待は過度であると考えます。


【英国】

英国経済は好調であり、24年に1.1%、25年に1.5%の経済成長を予測しています。ただし、英国ではモノや労働力の供給がタイトであることから、旺盛な需要は物価に波及しやすいと考えます。そのため、英国のインフレ率見通しについては、24年に2.5%に減速するものの、25年に2.8%に再加速するとみています。イングランド銀行(BoE)が24年8月に利下げに踏み切った際にインフレ見通しについて警戒感を示していたことも踏まえ、 25年末の英国政策金利は4.25%になると想定しています。


【エマージング諸国】

コモディティ価格の下落を主要因としてエマージング国のインフレ率は減速しましたが、その効果は薄れつつあります。また、足元の経済成長が堅調であることを踏まえると、インフレ圧力が再燃する可能性があり、中央銀行による積極的な利下げを妨げる可能性があります。中央銀行による利下げペースが遅れること等も影響し、経済成長率については24年に4.2%を記録した後、25年には3.9%へ減速することを見込んでいます。


今後想定される他のシナリオ

足元、市場参加者の間で景気後退懸念が高まりつつありますが、先述のように労働市場は正常化に向かっていると考えており、基本シナリオについては前回から変わらず「ソフトランディング」を想定しています。基本シナリオ以外で最も可能性の高いリスクシナリオとして、リフレーションシナリオの「過度な利下げ」を想定しています。各中央銀行が景気後退を過剰に意識し過度な利下げを実施することで、経済成長にはプラスに働くものの物価上昇圧力がかかるというシナリオです。その他のリスクシナリオとしては、スタグフレーションシナリオの「中東情勢の深刻化」、経済成長を維持しながらインフレ抑制を達成する「生産性向上」、デフレーションシナリオの「2025年の米国景気後退」や「米国債券市場の警鐘」を想定しています。

 
 



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