【シュローダー】2024年7月 グローバル債券チームによる経済見通し
グローバル・アンコンストレインド債券チーム・ヘッド
グローバル債券やグローバル・クレジットを運用するグローバル・アンコンストレインド債券チームによる、マクロ経済環境見通しとポートフォリオへの示唆をご紹介します。
米国インフレの改善を理由に、ソフトランディングシナリオの実現可能性をさらに引き上げた一方、ノーランディング・シナリオの実現可能性を引き下げています。なお、ハード・ランディングの実現可能性は非常に小さいとの見方を維持しています。
千里の道も一歩から
主要な中央銀行の会合は派手な花火はなく終わりました。欧州中央銀行(ECB)は緩和サイクルをスタートさせましたが、この動きは事前に十分に認識されていました。しかしながら、最近のユーロ圏サービス・インフレの根強さと経済成長の回復基調を考慮すると、ECBの次の動きは慎重なものになると予想されます。
米連邦準備制度理事会(FRB)については、金利見通しを修正し、年内の利下げ回数の示唆は中央値では年内1回に引き下げられました。ただし、最頻値では、8人の委員が2回の利下げを示唆しており、市場もこちらを織り込んでいます。
では、ソフトランディング・シナリオの実現可能性をさらに高めた理由とはなんでしょうか?端的に言えば、インフレ圧力緩和の兆しとなります。運用チームでは様々な経済指標を考慮しますが、現在の環境下では、米国のインフレ動向が最も重要と言えます。低インフレはFRBに金融政策緩和の余地を与えるため、「ソフトランディング」への究極の道となります。5月発表の米消費者物価指数(CPI) は、住居費は粘着性を示したものの、全体としては明るい兆しを示しました。そして、住宅を除くサービス(いわゆるスーパーコア)指標は大幅に改善し、前月比ベースでは下落となりました。
「民主主義の経験は、人生そのものの経験のようなものだ – 常に変化する」
(ジミー・カーター米第39代大統領)
2024年は世界的に多くの選挙が実施、予定され、投票人数は20億人超と、記録的な人数となる見込みです。そのような中、政治的に不安定になる可能性は常にあったと言えます。とはいえ、先進国およびエマージング国の両方で、これほど短期間にサプライズが相次ぐとは、投資家も予想していませんでした。
フランスの財政問題は同国の国債の評価を低下させ、予期せぬ解散総選挙の発表は市場のストレスをさらに強めました。見通しは不透明であり、フランスの政治情勢が今後大幅に変化する可能性を否定できないため、今回の欧州資産の下落が買いの好機だとは現時点では考えておりません。ただし、無差別的な売りの性質から、投資機会がいずれ訪れるとみています。
ポートフォリオへの示唆は?
ソフトランディング・シナリオの実現可能性がさらに高まりましたが、市場の織り込みも進んだため、ここからの更なるラリーの可能性は高くはないとみています。よって、デュレーションに対しての強気姿勢は弱めています。イールドカーブに関してもこれまでの強気な姿勢はやや弱め、より機動的なポジション構築を行う方針といたします。国別配分では、英国に対して強気、米国およびドイツは中立といたします。なお、カナダについては、中銀の姿勢や弱い経済指標を鑑み強気に転じています。
資産配分については、欧州における政治不透明感を警戒し、カバードボンドに対する強気姿勢をやや弱めています。ただし、国際機関債その他政府関連債対比では引き続き選好する姿勢といたします。なお、エージェンシー・モーゲージ債は高クオリティのクレジットとして証券化商品の選好を継続いたします。社債については、欧州投資適格社債を対米国で選好する姿勢を継続しています。米国投資適格社債については、スプレッドが歴史的にタイトな水準になっており、国債対比でのリスク・リターンの魅力度が薄いと考え、全体的に弱気の見方を維持いたします。
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