金利のピーク?投資家の選択肢

世界各国でインフレ率が低下し、米連邦準備制度理事会(FRB)は、来年の利下げを示唆する中、金利はピークに達したとの見方が強まっています。このような環境下における、各資産の投資機会について、シュローダーのスペシャリストがディスカッションを行いました。


キース・ウェイド
チーフ・エコノミスト

レミ・オルピタン
マルチアセット・インカム&グロース戦略ヘッド


トム・ウォーカー
グローバル上場リアルアセット共同ヘッド

米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を5.25~5.5%、イングランド銀行(BoE)は5.25%で据え置くことを決定し、金利がピークに達した可能性があることが示唆されています。金利が長期に亘り高止まりするとの考え方もある中、今一度、金利がピークに達した時に取るべき投資行動を考察します。

ディスカッションは、チーフエコノミストのキース・ウェイド、マルチアセット・インカム&グロース戦略のヘッドであるレミ・オルピタン、グローバル上場リアルアセット共同ヘッドであるトム・ウォーカーの3名のパネリストにより行われました。

金利はピークに達したか?
キースウェイド:金利はピークに達したと考えておりますが、その主な理由はインフレの改善です。インフレ率は世界中で大きく低下しており、1年前には9%程度であった米国のインフレ率は現在3%程度となっています。欧州ではさらに大きく改善しており、10%程度から3%以下に低下しています。英国においても4.5%程度まで低下しており、10%程度からの低下であることを考慮すると、大きな改善と言えます。このことから、中央銀行はその役目を果たしたとの見方が強く、市場は来年の利下げを期待しています。

ただ金利はピークに達しましたが、すぐに低下するとは考えていません。米国については、最初の利下げは来年2024年9月になると考えています。一方で、欧州ではより早期に利下げが行われる可能性があると考えています。欧州中央銀行(ECB)とBoEはインフレ率の低下だけでなく、景気後退のリスクを伴う経済活動の低迷にも注視しています。そのため、ECBは、早ければ3月に、BoEはおそらく5月に利下げを実施する可能性があるとみています。つまり、金利はピークに達したと考えますが、金利の低下のスピードには差異が生じていくという見方をしています。

金利のピークは投資家にとってプラスなのか?
レミ・オルピタン:インフレがピークに達し低下しているということは、喜ばしいことと言え、株式市場も債券市場もそのような動きとなっています。金利がピークに達したことにより、正の相関関係となっていますが、この先ずっと続くわけではありません。来年は利下げが予想されており、利下げにつながる要因は、市場に織り込まれる必要があります。

経済成長率がインフレ率を上回るペースで低下しているために利下げが実施されるのであれば、それは問題と言えます。そのような環境下では、株式が低迷し、債券が好調となることが見込まれます。このような環境になるという証拠はまだ十分ではなく、これは利下げが来年後半まで予想されない理由の一つです。ただし、当面は資本コストが低下したことを喜ぶべきと言えます。

2024年を迎えるにあたり、第2四半期からは、FRBが利下げを行う必要があるのか、そしてその理由は何なのかを考える必要があります。失業率の上昇なのか、経済の低迷なのか?これはリスク資産にとって良い環境とは言えません。

金利のピークが不動産市場にもたらす影響は?
トム・ウォーカー:この5カ月間、私はお客様と多くの時間を割いて、金利がピークに達した時に何が起こるかについて説明してきました。過去5回のピークサイクルを振り返り、株式、債券、不動産のパフォーマンスを見た場合、不動産がアウトパフォームしていることは明確です。

ここ数年において、我々は最もパフォーマンスの悪いセクターの一つでした。不動産セクターは足元、バリュエーションの魅力度が非常に高いと言え、我々の試算では20%程度の割引率で取引されています。

過去のサイクルでは、このような大幅な割引がみられた局面では、不動産は債券と株式の双方を3年、5年ベースでアウトパフォームしていました。市場は不動産セクターの価値に気付き始めているようであり、11月の不動産セクターは、世界金融危機以来、4番目に好調な月となりました。

各国金融政策の相違がもたらす影響は?
キース・ウェイド:日本では、金利がピークに達したというよりも、むしろ上昇にむかうことが見込まれることから、逆方向に向かっていると言えます。日本銀行は今般、利上げに踏み切るための地ならしをしていると言われていますが、我々は来年2024年の春までは利上げを実施しないと考えています。また、日銀はインフレについて上昇基調が維持されることを望んでいます。つまり、英国と米国について前述したことは全て日本では裏返しとなり、日本では金利上昇が見込まれます。

我々が世界的な懸念として強調しているのは、世界各国の政府の財務状況です。OECDの債務残高の水準を見ると、大幅に上昇していることがわかります。世界金融危機の後大きく上昇し、その後低下することなく、新型コロナウイルス感染拡大後、再び上昇しています。小幅に低下はしているものの、以前の水準には戻っていません。

インフレ率を低下させるために、失業率の上昇が必要であるということであれば、それは給付金の増加や税収の減少を意味します。財政赤字は悪化する傾向にあり、すでに高水準にあることが懸念点であると言えます。英国の財政赤字はGDP比で5%弱、米国では6%であり、足元での景気サイクルでは1-2%の水準であるべきなのです。

レミ・オルピタン:金融政策の相違は投資機会を提供するものであり、マルチアセットの観点からは、資産配分の点で役立ちます。金融政策の相違はまた、債券市場全体の相関が落ち着くことを意味します。欧州ではECBが一番に利下げに踏み切ると考えており、あえて言えば、他の市場と比べて欧州株式に上昇可能性があると考えています。

中国は?
キースウェイド:不動産市場の低迷は、中国経済の大きな足かせとなっています。住宅販売に好転が見られていないことは残念なことです。中国では住宅ローンを組みやすくするためなどの支援策が実施されていますが、英国や米国では、いったん住宅価格が下落し始めると、人々は価格が底値に下落するまで待とうとするために、購入に消極的になることがわかっています。そのため、中国では将来的に緩和が行われる可能性があります。

中国、特に習近平国家主席の見解は、中国の不動産市場には過度な負債があり、レバレッジの解消を望んでいます。中国にはかつてのような成長エンジンがないため、中国の経済成長率トレンドは低下しています。中国経済が必ずしも弱いというわけではなく、経済成長率はこれまでの5.5%や6%ではなく、4.5%になるということを意味します。

中国は輸出の回復に取り組んでいるように捉えられます。中国の輸出企業は、売り上げを上げるために価格を引き下げており、欧米では多くの商品が中国から購入されているため、欧米にとってはプラスと言えます。

サマリー
キース・ウェイド:金利と利回りの上昇は明らかにリスク資産にとって重荷となっていますが、金利が低下するに伴い、流動性が戻り始め、リスク資産に回帰します。しかし、金利低下のペースや、どの水準まで下がるかについては、多くの議論がなされています。過去10年間は例外的な状況と言えるため、参考にはなりません。我々は金利は3.5%の水準で横ばいになると考えています。長期的に見た場合、この数値は念頭に置いておく必要があると考えます。

レミ・オルピタン:当面はリスク資産に留まるのが良いと考えています。中央銀行がソフトランディングを達成し、経済成長率が安定した場合、リスク資産が下支えされる状況が継続します。ただし、今年軟調となったエリアで利益を得るときが来た可能性があるとも捉えられます。金利がピークに達し、経済成長率が安定化した場合、米国以外の市場や、バリュー株や小型株に目を向ける良い機会であると考えます。

トム・ウォーカー:市場がマクロに注視する一方で、高齢化、デジタル化、賃貸世代、eコマースなど、構造的な変化が複合的に存在し続けています。市場が不動産のファンダメンタルズに再注目した時、不動産市場(在宅勤務を巡るあらゆる問題を抱えるオフィスを除く)は、強いポジションにいることに気付くでしょう。低供給、強い需要、収入拡大につながる価格決定力などが一部の家主には期待できると考えます。

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組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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