-建設現場における墨出し作業を効率化し更なる生産性向上を実現-
大成建設株式会社(社長:相川善郎)と株式会社リコー(社長執行役員:大山晃)は、「生産プロセスのDX」の一環として、プロジェクションマッピングを利用した墨出し技術「T-iDigital MARKING」の高度化に関する共同開発を進め、更なる高品質・高精度な墨出し技術を実現しました。図面との投映誤差を概ね2ミリ以内
※1に抑え、投映面積を従前の3.5倍以上
※2に拡大したことで、専門工事業者が工種ごとに行う墨出し作業の合理化・省力化による一層の生産性向上が図れます。
建設工事では各工程の最初に「墨出し」作業を行います。これは設計図や施工図等に記載された様々な基準線、設備機器等の取付け位置などの寸法情報を、実際の施工現場に原寸大で書き出す重要かつ不可欠な作業で、多くの手間と時間を要していました。大成建設が2021年に開発した「T-iDigital MARKING」は、プロジェクションマッピングを利用した新たな墨出し技術で、建物の床面に原寸大で投映した図面を基に、作業員が直接マーキングすることにより正確で迅速な墨出しを可能にしました。
大成建設とリコーは、今回本技術の高度化に向けた共同開発に取り組み、4K超短焦点プロジェクターを新規に開発するとともに、「T-iDigital MARKING」の複数機能を拡張しました。さらに新規開発した本技術を建設現場に導入し、墨出し作業の効率化および更なる生産性向上に有効であることを実証しました。
「T-iDigital MARKING」の高度化技術の特徴は以下の通りです。
(1)高品質な画質による広範囲の投映画像を実現
リコーのプロジェクター技術と実績を基に、新規開発した4K超短焦点プロジェクター(写真1参照)の導入により、4K(3840×2160ピクセル)の高品質な画質に加え、従来の約3.5倍となる300インチ(約6.6m×3.7m)に投映範囲を拡大しました。高品質な画質で広範囲な投映画像の適用により、墨出し作業の効率向上に大きく寄与することが期待されます。
(2)カメラを利用した自動補正により投映画像の精度を向上
投映面を認識する撮影カメラや投映するプロジェクターのレンズの歪み補正(キャリブレーション)と床面の障害物への対応が可能な自動補正システムを開発し、投映画像の精度向上を図りました。各レンズのキャリブレーションにより算出された補正パラメータを基に、レンズ歪みに起因する投映画像の歪み補正を実施しています。また、建設現場特有の床面の段差や設備工事による立上げ配管などの障害物による投映画像の歪み補正にも対応できます。投映画像の精度向上により、設備墨出しだけでなく、より高い精度が求められる建築墨出しへの適用も可能となります。
(3)図面位置合わせなど準備作業の自動化により時間を短縮
従来は、プロジェクター本体の設置後、投映画像の縮尺・回転角調整や図面の位置合わせといった準備作業を全て手動で行っていましたが、これら一連の準備作業を自動化することで時間を短縮しました。本技術では、建設現場の基準墨に合わせて床面に設置した専用基準尺
※3(ARマーカー)をカメラで読み取ることで投映位置を認識し自動で投映画像の縮尺・回転角を調整して図面の位置合わせを行います。このため次の作業エリアに機材を移動するたびに必要となる準備作業の時間が約5分に短縮され、墨出し作業全体の効率が向上します。
今後、大成建設とリコーは、建築・土木分野の建設工事で用いる墨出し作業全般に本技術の積極的な導入を図ることで、生産プロセスDX化による建設現場の生産性向上に向けた取り組みを推進してまいります。
(本体拡大) (全 景)
写真1 4K超短焦点プロジェクター
写真2 投映状況 写真3 墨出し作業状況
※1 誤 差:平滑床での歪みが概ね2ミリ以内(外周部の歪みは3ミリ程度)
※2 投映面積:従来の160インチ(約3.5m×2.0m)から300インチ(約6.6m×3.7m)に拡大
※3 基準尺:AprilTagと呼ばれるARマーカーを表面に3つ付けた長さ1300mm、幅200mm、厚さ5mmの器具を画像投映領域面に対して
水平および垂直方向に配置。このARマーカー間の距離を基準寸法として撮影画像上の距離を自動で算出。