取り壊す建物から出る粉塵とアスベスト、高い気温で繁殖する虫や微生物、プライベートな空間の少ないテント生活、衛生的な施設のない中での出産、地震のトラウマによる子どもたちの退行……被災した人々は数々の課題に直面しています。世界の医療団は現地でのこころのケアも含めた医療支援を継続しています。
2023年2月6日、トルコ南東部とシリア北西部を襲った大地震から6ヶ月。1,500万人が被災しましたが、瓦礫撤去の際に生じるアスベストや粉塵が原因の疾患や長期的ながん罹患率増加の可能性など、人々は新たな健康リスクにさらされています。世界の医療団は、すでに結膜炎、アレルギー性喘息、皮膚疾患が増加しているのを把握しています。
さらに、高い気温と清潔な水の不足によって微生物や虫の繁殖が増え、疥癬や胃腸炎の増加を引き起こしています。また、震災以来、ほとんどの人々がテントやコンテナで生活していますが、狭く密な生活空間で、腸チフス、コレラ、結核といった伝染病のリスクも高まっています。
©Huseyin Aldemir
「季節が進むに伴い、損傷が激しく倒壊の危険性がある建物は徐々に取り壊され始めました。この解体の結果、アスベストの脅威が出てきました。アスベストは人体に有害な物質です。環境技術者会議所(the Chamber of Environmental Engineers)が行った調査では、およそ2棟に1棟の建物からアスベストが検出されました。これは、特にこの地域の人々に深刻な危険をもたらします。(中略)上気道炎の増加は続いており、私たちの移動診療チームは、地方と都心部の両方で診療を続けています」と語るのは、トルコのハタイ県の県都アンタキヤを拠点とする世界の医療団の緊急フィールドマネージャー、クマ・アリ・エズベクです。
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特に女性と子どもは災害の影響を受けやすく、女性は、食料の確保、料理、水が使える場所での洗濯や掃除など、大家族の世話をすることが求められており、苦労しています。被災地全体では35万6000人の妊婦がいることが確認され、そのうち3万9000人が今後数週間で出産する見込みです。トイレやシャワーなどの衛生施設の不足は大きな悩みの種です。
エズベクは、「震災後の現地活動の一環として私たちの移動診療チームが行った調査によると、特に女性や子どもたちにとっては、さまざまなサービスを利用することや自分たちのプライベートな場所を作るのが難しいことがわかりました。そこで、私たちは安全な場所を作りました。心理社会的支援、保護サービス、性と生殖に関する保健サービス、診察、シャワーや洗濯機の利用、美容など、幅広いサービスを受けることができます。これにより、被災者たちは自分たちのためのプライベートな場所で、安心して快適に過ごすことができます」 と付け加えました。
地震発生数日後に、世界の医療団は医療チームを派遣して官民による緊急医療保健サービス提供を支援しながら基礎医療の不足を埋め、特定のニーズにも応えました。2023年2月以来、世界の医療団は、トルコのハタイ県と県都アンタキヤ地域で1万2,000人以上の診察と5,000人への個別・集団心理社会的支援セッションを通じて1万7,000人を支援し、シリアのアフリンとイドリブでは8万3,000人以上に基礎医療サービスを提供しました。世界の医療団は、公的機関や地方自治体、またこの地域で活動する他のNGOと協力しながら、安全な場所の数を増やすなど、この地域でのサービスの拡充を目指しています。