ウクライナ侵攻から1年 NGOは、民間人の保護、人道的アクセス、現地化、恒久的解決策を求める

ウクライナ侵攻から1年を迎え、27のNGOが国際社会に対し、民間人の保護、支援が困難なコミュニティへの人道的アクセス、現地化、恒久的解決策を至急優先させるよう要請

1年前に戦争が激化して以来、ウクライナでは約4,400万人の人々の生活に影響が及んでいます。ウクライナ国内では、600万人の国内避難民(IDP)を含む約1800万人の男女、少年少女が緊急の人道支援を必要とし、さらに800万人が近隣諸国への避難を余儀なくされています。
国際的な武力紛争の激化から1年を迎えるにあたり、ウクライナ・アドボカシー・ワーキング・グループのメンバーは、国際社会に対し、民間人の保護、支援が困難なコミュニティへの人道的アクセス、現地化、恒久的解決策を至急優先させるよう要請します。

民間人の保護
この12ヶ月間の紛争の激化は、爆弾や対人地雷、クラスター弾などの法的に禁止された兵器の使用により広く民間人に犠牲を強いています。ほぼ毎日行われるミサイル攻撃は、民間人や水道、電気、ガスの供給システム、通信インフラを含む民間インフラに繰り返し影響を与えています。これらの攻撃は、女性、男性、子どもたちにさまざまな影響を及ぼしています。人々の安全や心身の健康に影響を与え、生活に支障をきたし、医療や教育へのアクセスも損なわれています。
多様でさまざまなアイデンティティを持つ女性と少女は、家庭内暴力や性的搾取など、ジェ ンダーに基づく暴力(GBV)の極めて高いリスクに直面し続けており、性と生殖に関する健 康を含む不可欠なサービスが受けられていません。少女と少年達は残虐行為を目撃し続け、多くの人が長期にわたる身体的・心理的な傷害に苦しんでいます。前線に近い戦闘が激しい地域では、拷問や紛争に関連した性的暴力を含む重大な人権侵害の発生が広く報告されています。前線近くに残る人々の多くは、高齢者や障害者であり、特定のニーズを持ち、サービスや避難所、IDPシェルターへのアクセスに障壁を経験しています。LGBTQI+、ロマ、外国人など、差別のリスクにさらされている人々も、人道支援を公平に、あるいは尊厳をもって利用することができていません。

人道的アクセス
特にウクライナ東部・南部では人道的ニーズが高まっているにもかかわらず、ロシア支配地 域への人道的アクセスは拒否され続け、援助者が援助を最も必要としているコミュニティにたどり着くことは不可能に近い状況です。昨年2月以降、一切の援助を受けていない地域もあります。現在戦線を越えて流れている援助は少量であることが多く、ボランティアやその他のコミュニティワーカーにとって大きな個人的リスクを伴うものです。400万人以上の人々が援助へのアクセスが極めて困難な地域に居住しており、ロシア支配地域や活発な敵対行為の影響を直接受けている地域に住む人々のニーズは最も高いものです。援助機関の合同の人道援助車両は度重なる試みと交渉にもかかわらず、ロシア支配地域に入れませんでした。マリウポリとザポージャ州から民間人を避難させるための輸送は16回のうち3回しか成功していません。
ウクライナ支配地域とロシア支配地域の間では、安全確保や家族との再会を含め、民間人の移動の自由はありません。現在戦闘がなくなった地域では、広範な地雷埋設が安全な人々の帰還、復興、援助物資の輸送を妨げています。民間人、援助関係者、救援物資が自由に移動できるように、必要な場合は安全なルートを通じて、定期的で自由な人道的アクセスを確保する必要あります。人道支援団体は国際社会に対し、人道的アクセスについてハイレベルで、かつ最優先事項として、緊急で的を絞ったアドボカシーを行うよう求めています。

現地化について
戦争が激化したとき、最初に対応したのは、女性団体や社会的に疎外された人々と協力している団体など、現地の団体でした。今日でも、特にロシアの支配地域やその他のリスクの高い地域において、人道援助の主要な提供者となっています。しかし、彼らは依然として深刻な人材・物資の不足に陥っています。多くの資源は一握りの国際機関によって集中管理されており、人道支援システムは効果的に援助実施を現地化するのに苦労しています。多言語コミュニケーションのための準備も一貫性がなく、現地の組織の有意義な参加を妨げています。
さらに、利用可能な資金は通常、短期的なものであり、手間のかかるコンプライアンス、報告、デューデリジェンスの要件が課されます。資金的な支援にとどまらず、現地の市民社会組織や被災したコミュニティが進行中の人道的対応や、最終的な復旧・復興努力に関わるあらゆる意思決定の場に参加できるよう支援されなければなりません。真に支援の現地化の国際約束前進させるためには、集中した取り組みが必要です。

恒久的な解決策
ウクライナ全土で600万人近くがIDPとなっており、前線の移動により定期的に新たな人々が故郷を追われています。現在も避難所に居住するIDPは、最も弱い立場に置かれている人々で、その64%は女性、25%は子ども、17%は高齢者、15%は障害者です。これらの避難所には適切な生活環境がなく、GBVのリスク軽減を含む基本的な保護基準を満たしていないため、女性や少女が危害や虐待にさらされる可能性が高まっています。ウクライナ全土のIDPは、精神衛生・心理的支援サービスやGBVサービスを含む保護、社会的支援、法的支援、現金給付などへのアクセスを必要としています。
避難民のための恒久的な解決策は、人道的対応、復旧・復興計画の中心に据えられる必要があります。一方、IDPに仮設住宅や恒久的な住宅を提供するプログラムを採用している地方自治体はごく少数にとどまっており、大多数のIDPは小さな避難所や友人・知人の家に身を寄せています。国全体の復旧・復興計画と連動した包括的かつ恒久的な解決策や住まいに関する戦略がなければ、IDPや難民は長期にわたって家を追われることになります。約800万人の難民が保護を求める欧州全域で、継続的な受け入れ支援と、教育、医療、社会サービス、労働市場、住居へのアクセスを含む難民の包括的包摂かつ早期の統合手段を確保することも同様に重要です。ウクライナ内外の避難民や、紛争の影響を受けた国内のコミュニティは、トラウマを克服するための長期的な支援、基本的ニーズを満たすための現金給付、回復力を高めるための戦略などを必要としています。

私たちはすべての関係者に対して、以下のことを優先的に行うよう呼びかけます。
● 人道、必要性、比例、区別の原則を十分に考慮した上で、国際人道法が完全に支持されるよう求めること。民間人および学校や病院を含む民間インフラに対するすべての攻撃は、体系的に非難され、関与した個人の責任が追及されるべきである。
● 2023年人道的対応計画および地域難民対応計画(RRRP)に全額資金を提供すること。(対応計画とそれ以上にある)すべての支援が女性、子ども、社会から疎外された人々を含むすべての被害者の特定のニーズと優先事項に関する意見を反映すること。
● (対応策とそれ以上にある)すべての支援は横断的ジェンダー分析および性別、年齢、 人種、民族的背景、障害に焦点を当てたデータに基づくこと。
● 紛争地域に対する人道的アクセスに関する対話を早急に強化し、人々がどこにいても人道支援にアクセスできるようにすること。
● 現地の組織に対する直接的で柔軟かつ無制限の資金提供を拡大すること。 女性の権利団体、女性主導の組織、LGBTQIA+、そして周縁化された人々と活動する若者主導の組織が資金を獲得できるように、小規模で新たな人道支援NGOやボランティアネットワークのための新しいプールファンドやコンソーシアムを創造する。仲介者、国連機関および国際NGOと連携して、報告手続き、デューデリジェンスおよびコンプライアンスの手続きを協調させ、簡略化する。
● 多言語コミュニケーションの機会提供を含む現地化のためのアプローチを開発するため、すべての意思決定の場と対話において、女性の権利団体、女性主導の組織、LGBTQIA+、および周縁化された人々や影響を受けたコミュニティとともに活動する若者主体の組織を含むウクライナの市民社会組織による有意義な協議と参加を確保すること。
● ウクライナからの難民が将来について自発的に十分な情報を得た上で決定できるようになるための受け入れ、包摂、早期統合への支援を提供して基本的ニーズを満たすための保護・支援の取り組みを倍増させること。
● ウクライナ国内外において、避難民や家族のための恒久的な解決策を確保するために、人道・復旧・復興支援、援助団体・現地関係者間の協調を拡大すること。高齢者を含むIDPが解決策策定や住居、雇用、その他のニーズに関する地方や国レベルの意思決定に意味ある形で参加することが、こうしたプロセスの中心になければならない。こうしたことは国外に避難している人々にも拡大されなければならない。

原文はこちらから:
https://www.mdm.or.jp/news/25772/
*この声明は世界の医療団日本が ”Ukraine one year on: NGOs call for the protection of civilians, humanitarian access, localisation and durable solutions” を和訳したものです。

SIGNATORIES
1. ActionAid
2. Arbeiter-Samariter-Bund
3. CLEAR Global
4. Cherkasy Human Rights Center
5. Christian Aid
6. Danish Refugee Council
7. Handicap International
8. HelpAge International
9. Helping to Leave
10. International Rescue Committee
11. INTERSOS
12. Medicins du Monde International Network
13. Mercy Corps
14. Norwegian People’s Aid
15. Norwegian Refugee Council
16. Oxfam
17. People in Need
18. Plan International
19. Polish Humanitarian Action
20. Premiere Urgence Internationale
21. Right to Protection
22. Save the Children
23. Solidarités International
24. Stabilization Support Services
25. War Child
26. Welthungerhilfe
27. World Vision
本件に関するお問合わせ先
認定NPO法人 世界の医療団
(特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン)
Tel:03-3585-6436
Email:communications@mdm.or.jp

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組織名
世界の医療団
ホームページ
http://www.mdm.or.jp/
代表者
オスタン ガエル
上場
非上場
所在地
〒106-0044 東京都港区東麻布2-6-10麻布善波ビル2F
連絡先
03-3585-6436

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