追加リターン獲得につながるESGファクターとは?

今日、投資家の多くはESGポートフォリオからインパクト以上のものを得ようとしています。彼らはリターンも求めているのです。ESGが期待リターンに対してプラスとなるのか、それともマイナスになるのかについて、これまで何千もの論考が発表されてきました。
しかしコンセンサスは得られておらず、今後も得られそうにありません。なぜなら、どの会社がESGの観点から「良い」会社であり、どれが「悪い」会社なのかについて、合意がほとんど存在しないからです。
さらに根本的な点として、「良い」会社がより大きなリターンを生み出すはずだという明確な根拠も存在しません。結局のところ、資本主義は経済のシステムであり、倫理のシステムではないのです。

本レポートにおいて、私たちは異なるアプローチを採用し、企業活動の中でESG投資に関連性のある特定の活動が期待リターンに対してプラスの効果を与えるのか、そして、もしそうならそれはなぜか、を検証しました。
ESGに関して利用できる多くの尺度のうち、私たちはプラスのリターンに関連があると思われる3つ、研究開発(R&D)、炭素強度、労働者安全を選び、詳細に検証しました。
通常、期待超過リターンは追加的なリスクや、他の投資家対比での情報の効率的活用に対する対価として認識されますが、今回検証の対象とした3つのファクターもその例外ではないことが示されました。
そしてさらに、どのタイプのESGファクターが超過リターンを生み出す可能性が最も高いかについての洞察も得られました。



アシュリー・レスター、PhD
ヘッド・オブ・シュローダー・システマティック・インベストメンツ

ヘッティー・マッカーシー
クオンティティティブ・アナリスト、
シュローダー・システマティック・インベストメンツ


研究開発
検討する最初の活動は、研究開発(R&D)です。企業のR&DがESGに関連性があるということは、一見、自明ではないかもしれません。しかし、世界の知的蓄積に貢献するR&Dは、企業が行う最も社会的に重要な活動の一つです。科学技術の進歩は経済発展にとって中心的なものであり、企業のR&Dはその中において、公的資金による研究と並んで重要な役割を果たしています。
(※本項目の以下本文は下記からリリースPDFをダウンロードの上、ご確認をお願いいたします)


炭素強度
私たちが検証した第二の活動は炭素強度です。近年、気候変動問題がこれまでになく大きく叫ばれるようになる中で、投資家の関心はますます低炭素経済への移行に対する役割を果たす企業への投資へと向かっています。
企業の気候変動に対する寄与を表す尺度として最も広く用いられているのが炭素排出量ですが、企業の気候変動リスクを表す尺度としての完成度は低く、一部の企業にとってそれは明白です。風力タービンや太陽電池のメーカーは、長期的な排出量削減にとって極めて大きな役割を果たす可能性がありますが、大量のCO2排出の原因ともなっています(その工場が石炭火力発電による電気を使用している場合等)。
より広い意味で言えば、カーボンプライシングが国家経済の主要な特性となれば、企業による直接の排出量よりも、製品の需要に対する価格弾力性や炭素削減の限界費用といった要素がより重要となるでしょう。しかし、炭素排出量に関するデータは広く入手でき、かつ比較的信頼性が高いため、企業の炭素リスクを表す重要な指標となっています。

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労働安全衛生
私たちが検討する最後のESG関連指標は、労働者安全です。この四半世紀の間に金融関連の文献でこのトピックを扱ったものはなく、世界の政府による検討の中心にもなっていません。企業のESG特性に関するレポートにおいてさえ、傾向としてあまり注目されてはいません。しかし、このように関心が非常に薄いにもかかわらず、労働者安全は極めて重要な事項です。国際労働機関(ILO)の推計によれば、毎年280万人の労働者が業務の結果として死亡しており、さらに3億7,400万人が業務により重傷を負っています。

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まとめ
近年、「ESGはより優れたパフォーマンスにつながる」かどうかについての論考が非常に多くなされています。実際に、Google Scholarで「ESG stock performance」(ESG株式のパフォーマンス)を検索すると、2万4,400件ものヒットがあり、その1万5,000件近くが2017年以降に発表されたものです。
しかし、「優れたESG」が株式パフォーマンスの向上につながるかという問いは、「優れた会計」が優れた株式パフォーマンスの向上につながるかどうかを問うことと同じくらい結論を導き出すことが難しい問いであると考えます。会計情報の中には将来の財務パフォーマンスに関連性の高いものも、そうでないものもあるのと同じように、ESG情報のすべてが将来の株式リターンを予想する上で等しく関連性があるわけではないのです。

本レポートではこの見方を、ESGの一部の特性に限定して詳細な検証を行い、それらがパフォーマンスの向上に関連するのか、その理由は何かを探るという形で適用しました。
その答えは、それぞれのケースで若干異なります。
企業のR&Dとアウトパフォーマンスの関連については、それを裏付ける相当程度の研究上の蓄積があります。R&Dはもともとリスクを伴う活動のため、R&D強度の高い企業に対するリターンが真の意味の「リスクプレミアム」を表す可能性があるのは当然です。
しかし、それと同程度に、投資家の限られた理解と会計規則の予測できない変化も、R&D強度の高い企業のアウトパフォーマンスにつながる可能性があります。これとは対照的に、炭素強度の高い企業は数年前までは株式市場において地球温暖化への影響の代償をほとんど若しくは全く支払ってきませんでした。
しかしながら、近年における規制上の圧力が、特に炭素強度の相対的に高い業種において、そうした企業が「よりグリーンな」競合他社に対してアンダーパフォームすることにつながる可能性があることを示すデータが出てきています。
最後に、労働者に対して安全な職場を提供する企業がアウトパフォームする可能性があることも示されました。ビジネスの観点から言えば、これはそうした企業が質の高い労働者と先を見据えたマネジメントを行っている可能性が相対的に高いためです。財務の観点からは、あまり馴染みのない指標に対する投資家の無関心のためである可能性が高いと考えられます。

最終投資家にとっては、ESG投資を追求する様々な理由があるかもしれません。多くの投資家にとっては、投資が自分の価値観に合致していることを確認できるだけでも十分かもしれません。
しかし、リターン源泉としてESGに関心を抱く投資家は、1つで全てを満たす万能なESG指標を見つけようと模索することや、「パッシブな」ESG投資が長期的にアウトパフォームするという考え方は諦めるべきです。市場を上回るリターンを獲得することは、簡単なことではありません。
ESGを活用して市場を上回るリターンを獲得することも同じく困難であり、綿密な考察と分析が求められるのです。




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組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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