昭和大学らの共同研究グループが出血性膀胱炎の新たな発症機構を解明



昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)大学院生の落合翔さん(薬学研究科衛生薬学4年/現:薬学部社会健康薬学講座衛生薬学部門 助教)、佐々木由香講師(薬学部社会健康薬学講座衛生薬学部門)、原俊太郎教授(同)を中心とする研究グループは、出血性膀胱炎の新たな発症機構を解明し、米国実験生物学会連合学術誌『The FASEB Journal』オンライン版に掲載されました。本研究成果は出血性膀胱炎の治療や予防に応用できる可能性があります。




 出血性膀胱炎は、ウイルスや細菌、薬剤、放射線などが原因となり、出血を伴いながら発症する膀胱の炎症性疾患です。本研究により、この出血性膀胱炎の発症に生理活性脂質であるプロスタサイクリン(PGI2)が関与することが明らかとなりました。

 PGI2を産生するPGI合成酵素(PGIS)は、脂肪酸の一種であるアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(※1)の作用により生じたプロスタグランジン(PG)(※2)H2を、生理活性脂質であるPGI2に生合成する酵素です。PGISは血管内皮細胞などの血管系細胞に高発現し、心循環器系の恒常性維持において重要な役割を果たすことが知られていますが、研究グループではこれまで、PGI2産生酵素であるPGISが炎症性疾患の亢進にも関わることを報告してきました(関連文献1、2)。

 本研究ではPGISの遺伝子欠損マウスを用い、抗がん剤として知られるシクロホスファミドによる出血性膀胱炎モデルを作成し解析を行いました。PGIS遺伝子欠損マウスでは、出血性膀胱炎で見られる膀胱内の出血や膀胱炎に伴う膀胱重量の増加が抑制されていました。また出血性膀胱炎時には血管透過性の亢進や好中球の浸潤が認められますが、PGIS遺伝子欠損マウスではこれらの症状も緩和されていました。

 加えて、PGI2が作用するIP受容体の拮抗薬(RO1138452)の投与によっても出血性膀胱炎の発症が抑制できることを見出しました。PGISの遺伝子欠損やIP受容体の拮抗薬投与により、出血性膀胱炎による侵害受容性疼痛の抑制もみられており、PGISやIP受容体が出血性膀胱炎の治療標的となることが示唆されました。

 現在、シクロホスファミドによる出血性膀胱炎は、予防薬の併用等によりほとんど発症が防がれています。一方で、今回用いたシクロホスファミドによる出血性膀胱炎モデルは、指定難病である間質性膀胱炎(※3)のマウスモデルとしても用いられており、これらの治療標的が現在治療薬の限られる間質性膀胱炎の症状緩和に繋がる可能性があります。

【用語解説】
(※1)シクロオキシゲナーゼ:アスピリンをはじめとした非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の標的分子。NSAIDsは、プロスタグランジン類生合成の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジン類の産生を抑制することにより抗炎症作や解熱鎮痛作用を示す。
(※2)プロスタグランジン:生殖や組織保護等の生体恒常性維持から、炎症反応や発がん等の病理作用に至るまで、様々な作用を示す生理活性脂質。
(※3)間質性膀胱炎:膀胱の痛み、頻尿、強い尿意、排尿困難など、膀胱や排尿に関する極めて不快な症状をもたらす疾患(間質性膀胱炎診療ガイドラインより引用)。

【発表論文名】
・雑誌名: The FASEB Journal
・論文名: Absence of prostacyclin greatly relieves cyclophosphamide-induced cystitis and bladder pain in mice.
 (邦題: プロスタサイクリンの欠損はマウスでのシクロホスファミドによる膀胱炎と膀胱痛を顕著に軽減する)
・著者名: Tsubasa Ochiai, Yuka Sasaki, Chieko Yokoyama, Hiroshi Kuwata, Shuntaro Hara.
 (落合 翔、佐々木 由香、横山 知永子、桑田 浩、原 俊太郎)
・掲載日時: 2021年9月23日
・DOI: 10.1096/fj.202101025R

【関連論文】
 1) Sasaki Y et al. (2015) Sci Rep 5:17376
 2) Ochiai T et al. (2021) Biochem Biophys Res Commun 546: 124-129

▼本件に関する問い合わせ先
 昭和大学 薬学部 社会健康薬学講座 衛生薬学部門 教授
 原 俊太郎(はら しゅんたろう)
 TEL: 03-3784-8196
 E-mail: haras@pharm.showa-u.ac.jp

▼本件リリース元
 学校法人 昭和大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL: 03-3784-8059
 E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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