株式会社ニッスイの 小尾 純志 研究員と名城大学大学院総合学術研究科の 本田 真己 准教授らのグループは、ニンニクやタマネギ、ブロッコリースプラウトなどに含まれる含硫化合物(ポリスルフィド類(注1)、イソチオシアネート類(注2))が、加熱調理の過程で心疾患のリスクを増大するトランス脂肪酸(注3)の生成を促進することを発見しました。そして、このトランス脂肪酸の生成は、調理の工夫(抗酸化成分を多く含む油脂の使用や低温調理)で抑制できることを明らかにしました。
本研究成果は、2024年 11月 27 日にElsevier社が出版する国際学術誌の「Food Research International」に掲載されました。
【本件のポイント】
・ポリスルフィド類とイソチオシアネート類などの含硫化合物は、高温条件下(140 ℃以上)で油脂(トリアシルグリセロール(注4))中の不飽和脂肪酸(注5)のトランス異性化を促進する。
・ポリスルフィド類とイソチオシアネート類を豊富に含む野菜(ニンニク、タマネギ、ブロッコリースプラウトなど)は、加熱調理の過程で植物油脂(大豆油、オリーブ油)中の不飽和脂肪酸のトランス異性化を促進する(図1を参照)。
・イソチオシアネート類による異性化促進作用は、少量の抗酸化剤の添加で抑制できる。
・ポリスルフィド類による異性化促進作用は、低温・短時間の調理により抑制できる。
・含硫化合物を含む野菜の加熱を伴う料理への使用は、トランス脂肪酸の増加につながることは確かであるが、ただちに健康に害を及ぼすレベルではないので、過剰な注意は不要と考えられる。
本件に関する詳細については、添付PDFもしくは本学サイトニュースリリースをご覧ください。
名城大学ニュースリリースURL:
https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/26b6a9a6605139e56a96c334aba35383.pdf
【用語の解説】
(注1) ポリスルフィド類
R−Sn−R'(R と R' のいずれも水素原子ではない)で表される化合物の総称。ニンニクやタマネギなどのネギ属の野菜に豊富に含まれる香気成分である。
(注2) イソチオシアネート類
−N=C=Sの官能基をもつ化合物の総称。キャベツやブロッコリーなどのアブラナ属の野菜に含まれる辛味成分である。
(注3)トランス脂肪酸
不飽和脂肪酸のうち、二重結合がトランス型の構造をもつものの総称をいう。主に油脂の加工・精製過程で生じるものと天然由来(反すう動物由来のバターなど乳製品など)のものが存在する。多くの疫学研究により、トランス脂肪酸の摂取は心血管系疾患リスクの増大に相関があることが示されている。この結果を受け、WHO (世界保健機関)は、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることを推奨している。
(注4)トリアシルグリセロール
1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロール。食用油脂の主成分である。
(注5)不飽和脂肪酸
炭素と炭素の間に二重結合をもつ脂肪酸。天然の不飽和脂肪酸の二重結合は、ほとんどがシス型である。
【掲載論文】
雑誌名: Food Research International
タイトル: Vegetables containing sulfur compounds promote trans-isomerization of unsaturated fatty acids in triacylglycerols during the cooking process
(含硫化合物を含む野菜は調理過程において油脂中の不飽和脂肪酸のトランス異性化を促進する)
著者名: Junji Obi, Taro Sakamoto, Kiyomi Furihata, Seizo Sato, Masaki Honda
掲載日時: 2024年11月27日に電子版に掲載
https://doi.org/10.1016/j.foodres.2024.115425
【お問い合わせ先】
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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