【東洋大学国際観光学部News Letter 2024 Vol.1】 新しい観光のパラダイム「日本の鉄道経営と今後のイノベーション 」

学校法人東洋大学

 東洋大学国際観光学部では、新しい観光の考え方・取り組みを連載で紹介する「新しい観光のパラダイム」を、2021年度から公開しています。コロナ禍が落ち着き、観光の復活が本格的に進められているこの時期に、観光産業・教育における新しい潮流を解説するコンテンツを、連載していきます。2024年度のテーマは「日本の鉄道経営と今後のイノベーション」「再始動したインバウンド観光とその展望」「ポストコロナにおける宿泊産業の潮流」「対面サービスのコミュニケーション、その価値の再構築」の4つです。東洋大学ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。

日本の鉄道事業の特徴

 日本の鉄道運営は、その安全性や定時性で世界的に高い評価を得ている。また、その特徴として、鉄道会社が線路や駅施設などを保有し、黒字の運営を基本としていることが挙げられる。線路などの鉄道インフラの維持管理には多額の費用が必要であるが、日本では、鉄道会社がその費用を負担して運営することが、当然のように受け止められている。
 海外に目を転じると、ヨーロッパをはじめとする海外諸国の鉄道経営は赤字である。このため、鉄道インフラの費用は、国などが負担しているのが一般的である。その一方で、ヨーロッパでは人口が20万人程度であっても、LRTと呼ばれる便利な路面電車が運営され、活気のある都市が多い。都市のLRTなどの公共交通も、地方自治体が費用を負担しながら運営が行われている。
 
LRTと活気のある町

鉄道会社の幅広いビジネス展開

 日本の鉄道は民間会社が運営している場合も多く、海外鉄道と異なり高額なインフラ費用を負担しながらも、鉄道輸送事業以外からも多くの収入を得ることによって発展を遂げてきた。
 たとえば、駅構内を利用した事業のほか、ホテル、ショッピングセンター、駅ビルなど、ビジネス展開の幅を拡げてきた。観光分野においても、宿泊や飲食を含む一連のサービスを提供し、観光産業の中で大きな役割を果たしている。このような幅広い事業展開も、海外の鉄道には見られない日本の鉄道経営の特徴となっている。

今後のまちづくりに不可欠な鉄道

 日本の鉄道会社は、これまで目覚ましい発展を遂げてきた。しかし、将来を見据えると、インバウンドの旅行客が増加傾向とはいえ、国内の人口は減少すると予想されている。では、鉄道の重要性や社会の中での役割は、今後変化していくのであろうか。
 鉄道は、移動のニーズを満たすだけでなく、住みやすいまち、魅力的なまちを作るために必要な社会インフラである。人口の減少が進む将来は、まちをコンパクトにし、人々を利便性の高い公共交通のネットワークで結ぶ「コンパクト+ネットワーク」のまちづくりが大切であると言われている。このようなビジョンを実現するために、鉄道やLRTの役割は非常に大きい。これまで人口の増加とともに発展してきた日本の鉄道は、今後も政策のイノベーションにより、さらに重要な役割を果たしていくことが期待される。

鉄道駅とLRT
 



 
黒崎 文雄
東洋大学国際観光学部 教授
専門分野:鉄道経営、公共交通
研究キーワード:鉄道改革、上下分離
 

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