手術支援ロボットの最新機種ダビンチSPによる国内初の「乳頭乳輪温存乳房全摘出術」を施行

学校法人藤田学園

~整容性と根治性を両立した体への負担が少ない乳房再建手術~

藤田医科大学病院(愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98 病院長:白木良一)乳腺外科は、米国インテュイティブサージカル社の最新手術支援ロボット「ダビンチSPサージカルシステム(以下、ダビンチSP)」を用いた乳頭乳輪温存乳房摘出術を施行したことを報告いたします。先端ロボット・内視鏡手術学(宇山一朗教授)、乳腺外科(喜島祐子教授)、形成外科(井上義一准教授)の領域横断外科チームにより2024年4月に第1例目、同6月に第2例目を行い、いずれも経過は非常に良好です。

多孔式(マルチポート)のダビンチXiを用いての症例は他病院で報告されていますが、単孔式(シングルポート)のダビンチSPによる同手術は、国内で初となります。喜島教授(写真左)は、「ダビンチSPを用いたことで、切開創が小さいことに加え、直視下の手術に比べ患者さんの回復が早いと感じる。乳がんは若くして発症することも多く、安全・確実にがんを取り切ることはもちろん、整容性も大きな課題。
乳腺外科の領域ではロボット支援手術はほとんど普及していないが、整容性と根治性に優れたダビンチSPによる術式を確立し、保険収載への道筋をつけることで患者さんの精神的負担の軽減やQOL向上に寄与していきたい」と話しています。
 
 

根治性・安全性・整容性の両立──ダビンチSPで乳がん手術の課題をクリア
早期の乳がんに対しては、乳頭乳輪温存皮下乳腺前切除術を実施してきました。乳房表面の皮膚・乳頭乳輪を残しつつ、皮下乳腺を全切除する手術です。乳房外側の切開部から丁寧に手術を進める必要があり、とくに乳房の内側領域を安全に処理するためには皮膚を強めに牽引したり、場合によっては切開線を長くする、乳輪縁に別の切開をいれる必要があるという課題がありました。
これらの課題解決に向け、当科では2022年2月に導入したダビンチSPの活用を検討。一般的に普及しているダビンチXiが4本のアームで構成されるのに対し、SPは1箇所の切開創(ポート)から、複数の鉗子による手術操作が可能なうえ、その切開創が3.0-3.5cmで済むために整容性が確保できるというメリットがあります。術者においては、ダビンチ初の2関節を有する軟性鏡(カメラ)と、自由に屈折する専用鉗子が、乳房の内側へのアプローチを容易にし、より安全安心な手術が可能に。喜島教授も「さまざまな課題をすべて解決できるのがSPだった。操作性も良く、術者のストレスが非常に少ない」と評価しています。


乳頭と乳輪を残し、より自然な乳房再建が可能に
今回の手術では、脇の下を3㎝ほど切開してダビンチSPのカメラ(内視鏡)や専用鉗子を挿入し、乳頭と乳輪を残したままでがん病巣と乳腺をすべて摘出しました。摘出後は、大胸筋と小胸筋の間にティッシュ・エキスパンダーと呼ばれる皮膚拡張器を挿入。ティッシュ・エキスパンダーには、少量の生理食塩水を注入し、2~4週間に1回、約半年かけてその量を増やしながら、少しずつ皮膚をのばしていくことで、左右バランスの良い自然な乳房を再建します。切開創が目立たないことに加え、乳頭乳輪は元のまま、さらに皮膚拡張器の挿入により多少の胸のふくらみを感じられるため、患者さんにとっては乳房の喪失感が非常に少ないといえます。
約半年後、両乳房のバランスが整ってきたらティッシュ・エキスパンダーを手術で取り出し、そこにシリコン型のインプラントを留置することで、再建の工程が終了します。

尚、本手術の適応は、がんステージが0期およびⅠ期で、がんの位置やタイプ、乳房の形など、さまざまな要素を検討した上で決定します。遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)に対する予防的切除にも対応可能です。


日本におけるロボット支援手術のオピニオンリーダーとして
当院は2008年、全国に先駆けてダビンチを導入して以降、その治療実績は国内トップレベルを誇ります。大学内にはダビンチ(インテュイティブサージカル社)、hinotori(メディカロイド社)、Hugo(メドトロニック社)の3メーカーのトレーニングセンターが揃い、日本のロボット支援手術の第一人者である先端ロボット・内視鏡手術学の宇山一朗教授らが全国の外科医を指導するとともに、産学連携で新しい術式の開発などにも取り組んでいます。これらの恵まれた環境を生かし、乳腺外科においても患者さんの体への負担が少ないロボット支援手術の導入を進めています。


 

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