-
-
-
かつてトヨタグループの研究開発会社である豊田中央研究所(愛知県長久手町)で機能薄膜研究室長や理事、顧問を務めた中部大学の多賀康訓特定教授らは、このほど最大約10%まで伸ばしてもクラックが入らない新しい薄膜材料を開発した。
平坦なガラスやプラスチック基板表面に成膜したあと、曲げても割れにくいため自動車用インストルメントパネル(インパネ)や大型ディスプレー、ショーウインドー など、様々な用途に適用できると期待している。
1.研究成果のポイント
・最大10%まで伸ばしてもクラックが入らない反射防止用の薄膜材料を開発
・ガラスやプラスチック基板表面に成膜し、曲げても高い性能を維持
・自動車用インパネやディスプレーの曲面化に対応し事業化を目指す
2.発表概要
テレビの画面、透明なガラスやプレスチックの向こうにある景色や物が、後ろから照らす太陽光や室内用照明の反射で見えにくくなる。その問題を防ぐための反射防止膜はすでに広く商品化されている。しかし膜材料の多くは数%伸ばすとクラックが入って白濁するため、曲面に利用することは難しい。
かつてトヨタグループの研究開発会社である豊田中央研究所(愛知県長久手町)で機能薄膜研究室長や理事、顧問を務めた中部大学の多賀康訓特定教授らは、このほど最大約10%まで伸ばしてもクラックが入らない新しい薄膜材料を開発した。平坦なガラスやプラスチック基板表面に成膜したあと、曲げても割れにくいため自動車用インストルメントパネル(インパネ)や大型ディスプレー、ショーウインドーなど、様々な用途に適用できると期待している。
開発したのは金属酸化物とフッ素樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、金属インジウム(In)からなる薄膜材料。金属酸化物は酸化セリウム(CeO2)、シリカ(SiO2)、酸化ニオブ(Nb3O5)、アルミナ(Al2O3)の4種類で、それぞれを含んだ膜をスパッタリング技術によって基板上に積層する。
基板表面にCeO2-PTFE-In、SiO2-PTFE-In、CeO2-PTFE-In、SiO2-PTFE-Inの順に4層積層した実験では、波長約400~800nmの可視光のうち、約410~660nmの光の反射率は1%以下だった。成膜しない基板では4%以上の光を反射した。波長が約660nmを超えると反射率は十分には低下しないが、積層する膜の組み合わせと層数をコントロールすれば可視光の全波長領域で反射率を1%以下に抑えられる。
基板表面に成膜して引き伸ばす実験では、最大で約10%伸ばしてもクラックは確認できなかった。市販されている反射防止膜は2~3%の伸びでクラックが発生して白濁するという。
開発した反射防止膜材料は自動車のインパネや大型ディスプレーのほか、メガネレンズやカメラのレンズにも利用できると期待している。企業と組んで3年以内の実用化を目指す。
3.お問い合わせ先
【研究内容について】
中部大学 特定教授 多賀 康訓
電子メール y-taga@isc.chubu.ac.jp
電話 0568-51-9819
▼本件に関する問い合わせ先
中部大学 学園広報部広報課
TEL:0568-51-7638
メール:cuinfo@office.chubu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/