【中部大学】米糠発酵物がインフルエンザの補完療法に役立つ可能性を動物実験で解明ー体重減少の抑制、肺内ウイルス量減少、抗体増加を確認ー

このたび中部大学生命健康科学部臨床工学科の河原敏男教授と林京子研究員らは、人体
の免疫担当細胞の約80%が集中している腸管の機能を刺激すれば、免疫機能を高めること
ができ、その結果としてインフルエンザ症状を緩和できるのではないかと発想。米糠発酵
物に注目し、健康食品の製造・販売を手掛ける株式会社マックスプロバイオ(滋賀県近江八
幡市、前原義輝社長)と共同で、その効果をマウスを用いた実験で実証した。



研究成果のポイント
・マウスを、免疫機能正常群(抗がん剤非投与)と免疫機能低下群(抗がん剤で免疫力を低
下)に分け、米糠発酵物を経口投与した。
・免疫機能正常マウスにインフルエンザウイルス感染の1ヶ月前または2ヶ月前から米糠
発酵物を投与すると、非投与マウスに比べて体重低下が抑えられ、肺のウイルス量が減少
し、血液中の中和抗体価が増加した。
・免疫機能低下マウスではマクロファージ(注1)活性が抑えられたが、米糠発酵物を投与す
ると活性は統計学的に有意に上昇した。また、インフルエンザウイルス感染に伴う体重減
少およびウイルス産生量の抑制や、血中の抗体価の上昇も認められた。
・さらに、免疫機能低下マウスには大腸狭窄(注2)が起こったが、米糠発酵物を投与すると
狭窄は生じなかった。






発表概要
インフルエンザは、A 型およびB 型インフルエンザウイルスの感染によって起こる呼吸
器感染症で、世界的に罹患者は極めて多い。症状の強弱は、感染者の免疫力のレベルに大き
く左右されることが知られており、高齢者やエイズ患者、糖尿病患者、妊婦などは症状が長
引いたり、重症化したり、時には死に至ることがある。インフルエンザ対策としては、ワク
チン接種による予防処置や治療薬の投与がある。しかし、ワクチンには遺伝子変異したウ
イルスに対しては予防効果が低下したり、治療薬の場合には頻用すれば薬の効き目の弱い
変異ウイルスを誘導したりする恐れがある。社会的にウイルス感染から身を守るには未だ
不十分と考えられる。そのため現在も効果的なインフルエンザ対策が求められている。

このたび中部大学生命健康科学部臨床工学科の河原敏男教授と林京子研究員らは、人体
の免疫担当細胞の約80%が集中している腸管の機能を刺激すれば、免疫機能を高めること
ができ、その結果としてインフルエンザ症状を緩和できるのではないかと発想。米糠発酵
物に注目し、健康食品の製造・販売を手掛ける株式会社マックスプロバイオ(滋賀県近江八
幡市、前原義輝社長)と共同で、その効果をマウスを用いた実験で実証した。

米糠発酵物は日本が得意とする発酵食品として健康への効果が期待されている。作製に
は、まず米糠の中に生菌を接種して培養する。生菌が米糠を餌にして活動を始め、菌が増殖
していく。その発酵物中には、酵素、アミノ酸、オリゴ糖等が含まれる。ヒトがこれを体内
に取り込むと、生菌及びこれらの物質が腸内での細菌叢環境に変化をもたらす。つまり、良
質の生菌を飲用する事で悪玉菌を減らして善玉菌を増やす事が確認されている。

本研究の結果、米糠発酵物が自然免疫を刺激した。具体的には抗がん剤の5-フルオロウ
ラシルをマウスに皮下注射すると、体内のマクロファージの異物貪食能が低下した。しか
し、米糠発酵物を投与すると貪食(どんしょく)(注3)の能力は上昇した。つまり、米糠発酵
物は自然免疫系の衰えを防止する効果を示した。

米糠発酵物はインフルエンザウイルス感染によって起こるマウスの体重減少を阻止する
こともわかった。マウスにウイルスを感染させると、ヒトのようにくしゃみや鼻汁が出る
代わりに肺でのウイルス増殖に伴う食欲減退によって体重が減少する。米糠発酵物は、こ
の体重減少を抑えたことから、インフルエンザ症状を緩和する効果がみられた(図1)。
米糠発酵物は体内(肺)でのウイルス増殖を抑えることもわかった。ウイルスをマウスの
鼻腔から接種すると、3〜4日後に肺で増殖したウイルス量が最大になる。米糠発酵物を
投与すると、ウイルス量は減少した(図2)。この効果は、免疫機能低下マウスでも確認で
きた。

米糠発酵物は血液中の中和抗体価(注4)を増加させることもわかった。マウスにウイルス
感染させると、1 週間後からウイルスの増殖を選択的に抑制する抗体(中和抗体)が増加し
始め、2〜4週間後にピークに達する。感染2 週間後の抗体量は、米糠発酵物を投与した
マウスで増加した(図3)。

米糠発酵物は腸管の形状にも影響を及ぼすことがわかった。免疫機能低下マウスの腸管
組織の形状を調べたところ、空腸と結腸の部位に狭窄が生じていた。インフルエンザウイ
ルス感染と抗がん剤による免疫機能低下という2つの条件が重なると、腸管の形態にまで
影響が及ぶということがみられた。このような現象は、世界で初めて確認された。
米糠発酵物をいつから摂取するのが効果的かも調べた。本研究では、米糠発酵物をウイ
ルス感染の2ヶ月前、1ヶ月前、または感染直後から開始した。感染2ヶ月前と1ヶ月前で
の比較では、マウスの症状緩和や抗体産生量に顕著な差がなかった。ところが、感染直後か
ら投与したマウスでは、1ヶ月前からの投与に比べて効果が劣っていた。従って、ウイルス
流行期の一定期間前から米糠発酵物を飲み続ければ、高い効果を期待できることが示唆さ
れた。

今回の研究成果は、補完医療(注5)と療法に関する国際的な学術誌BMC Complementary
Medicine and Therapies の電子版で公開された。



論文の情報
論文の情報
雑誌名: BMC Complementary Medicine and Therapies
論文タイトル:Oral fermented rice bran supplementation suppresses viral replication
and stimulates immune functions in immunocompetent and immunocompromised mice
infected with influenza virus
著者:Kyoko Hayashi, Satomi Asai, Yoshiteru Maehara, Jung-Bum Lee, Masako Hinatsu,
Taizo Watanabe, Kazuo Maehara & Toshio Kawahara
DOI: 10.1186/s12906-025-05240-y
URL: https://link.springer.com/article/10.1186/s12906-025-05240-y



用語解説
注1 マクロファージ:
全身の組織に広く分布し、自然免疫系で重要な役割を担う細胞。体内に侵入した細菌など
の異物を食べる能力に優れ、食べた微生物を消化・殺菌して、病原体の感染を防いでいる。
直径は15~20μm と比較的大きい。

注2 大腸狭窄:
大腸の腸管の一部が完全にふさがってしまう大腸閉塞に対し、内容物の一部が通過できて
いる状態を大腸狭窄と呼ぶ。大腸が狭くなり、食べ物や飲み物が正常に通過しにくくなって
しまうことになり、この状態が長く続き、大腸が完全に塞がってしまうと大腸閉塞となり
命にかかわることもある。

注3 貪食(どんしょく):
体内の細胞が不必要なものを取り込み、消化して分解する作用。
貪食の対象物は、細胞死(アポトーシス)した細胞、体内に侵入した病原体などの異物、が
ん化した自己の細胞などである。このような働きを持つ細胞は貪食細胞または食細胞と呼
ばれ、マクロファージなどが代表的なものである。

注4 中和抗体価:
ウイルスによる細胞障害を阻止できる強さを示す。採取した血清から
様々な希釈倍率の検体を作成し、ウイルス増殖を阻止できる最も高い血清の希釈倍率を中
和抗体価とする。例えば中和抗体価が10 倍という場合、血清を10 倍希釈してもウイルス
による細胞変性を50%阻止する能力を有していると定義することがある。

注5 補完医療:
通常医療とともに用いられる非通常医療を指す。一般的な通常医療に属さないか通常の西洋
医療以外に由来する幅広い治療法、介入、天然物などが含まれる。比較される医療として
代替医療や統合医療がある。代替医療は通常医療の代わりに用いられる非通常医療、統合医
療は健康、治療者と患者の関係、患者の全体像に焦点を置く考え方に基づいて、すべての適
切な通常医療と非通常医療を用いる医療を指す。



▼本件に関する問い合わせ先
中部大学 入試・広報センター
TEL:0568-51-5541
メール:chubu-info@fsc.chubu.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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