遠隔手術を支えるロボット操作・同一環境共有をIOWN APNで実証開始 ~100km以上離れた拠点間を同一手術室のようにする環境を実現~

日本電信電話株式会社

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と株式会社メディカロイド(本社:兵庫県神戸市、代表取締役 社長執行役員 CEO:浅野 薫、以下「メディカロイド」 )は、将来一般化していくと想定される遠隔手術の実現に向けた研究として、国産の手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」(※1)とIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、APN)(※2)を接続することで、物理的に離れた環境を1つの環境のように統合し、手術室の状況をよりリアルに伝送でき、コミュニケーションがスムーズに行える場の共有をめざした共同実証を開始しました。

 NTT武蔵野研究開発センタ内に、大容量・低遅延・遅延ゆらぎほぼゼロの特徴を持つAPNの実証環境(100km以上)を構築しました。その環境下でメディカロイドの「hinotori™ サージカルロボットシステム」を接続し、APN上で遅延ゆらぎほぼゼロでのロボット制御、非圧縮による超低遅延かつ暗号技術による高セキュリティな映像伝送での手術環境共有を行うとともに、NTTが長年取り組む音声技術を用いて、様々な音が飛び交う手術室でもクリアな会話を可能にする機械音除去等の技術の実証を行いました。

 なお、本研究成果は2022年11月16日から18日まで開催される「NTT R&Dフォーラム — Road to IOWN 2022」(※3)にて展示を予定しております。

1.背景
 手術支援ロボットによる遠隔手術は、人口減少や外科医師数の減少、医療の均てん化といった社会課題の解決だけでなく、地域医療支援と若手外科医の教育・育成による医療レベルの向上にも寄与することが期待されています。一方で、実現に向けては以下のような課題があります。

・手術支援ロボットの遠隔操作は、ネットワークでの遅延やゆらぎの影響を大きく受けるため、執刀医がストレスなく、通常のロボット手術と変わらない形で遠隔手術を行えること
・遠く離れた環境では手術中の意思疎通を図るコミュニケーションが重要であり、執刀医や医療従事者が長時間ヘッドホン等のデバイスを装着することはストレスとなるため、デバイスを装着することなく空間環境全体の映像や音などの情報を高品質かつリアルタイムに伝送できること
・遠隔手術ではロボットにかかわる情報だけでなく、バイタルデータなどの個人に関わる情報を安全かつ正確に伝送するため、量子コンピュータでも解読されない高度なセキュリティ対策が講じられること

2.共同実証内容
 本研究では、APNを中心としたNTTの技術を応用することで以下の実証を継続して実施いたします。

・拠点間で1波長あたり100 Gbps以上の大容量、物理限界に迫る低遅延性、ネットワーク遅延の時間変動がない遅延ゆらぎほぼゼロの特徴を持つ光伝送パスを実現し、通常の手術と変わらない動きでの遠隔操作に関する実証
・超低遅延映像伝送技術(※4)により、8Kの超高精細映像で手術環境の共有に必要な手術支援ロボット以外の情報を光伝送パスに非圧縮でダイレクトに送出し、長距離かつ超低遅延のリアルタイムコミュニケーションを行うとともに、コミュニケーションの阻害要因となる音のみを除去するノイズキャンセリングにより同一環境で手術しているかのような手術環境の共有に関する実証
・量子計算機でも攻撃が困難な暗号鍵交換技術やセキュア光トランスポートネットワーク技術(※5)を用いて、遠隔手術で送受信するデータを耐量子計算機暗号技術で交換した暗号鍵で暗号化することによる、量子計算機時代のセキュリティ確保に関する実証
 
図1:構成図

3.今後の展開
 今後、本研究および技術を適用した遠隔手術支援のフィールド実証を共同で進め、遠隔医療の更なる拡大による医療の質の向上、質の高い医療へのアクセシビリティの確保に貢献するとともに、この基盤であるIOWN APNの技術を、遠隔での低遅延、遅延ゆらぎのないリアルタイム制御の活用を通して、各産業分野における課題解決ならびに、社会課題の解決に展開していきます。

<用語解説>
*1 hinotori™ サージカルロボットシステム
メディカロイド製の手術支援ロボットで、2020 年 8 月に国産の内視鏡手術を支援するロボットとして製造販売承認を取得(承認番号:30200BZX00256000)。同年 12 月に 泌尿器科領域で1 例目の手術を実施しました。2022年10月には消化器外科および婦人科への適応について承認を取得。現在は日本全国で使用症例を増やしています。

*2 IOWN オールフォトニクス・ネットワーク
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、主に、ネットワークだけでなく端末処理まで光化する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とする「デジタル・ツイン・コンピューティング」、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備する「コグニティブ・ファウンデーション」の3つで構成されます。
APNは、ネットワークから端末、チップの中にまで新たな光技術を導入することにより、これまで実現が困難であった超低消費電力化、超高速処理を達成します。1本の光ファイバ上で機能ごとに波長を割り当てて運用することで、インターネットに代表される情報通信の機能や、センシングの機能など、社会基盤を支える複数の機能を互いに干渉することなく提供することができます。

*3 NTT R&Dフォーラム — Road to IOWN 2022
  URL:https://www.rd.ntt/forum/

*4 NTTが2022年2月に発表した超低遅延映像伝送技術。
「世界初、SMPTE ST 2110による非圧縮8K120pに対応した超低遅延映像伝送技術を開発」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/02/22/220222a.html

*5 NTTが2021年11月に発表したセキュア光トランスポートネットワーク技術。
「次世代の高安全な暗号技術を適用した光トランスポートネットワーク技術を開発」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/05/211105b.html

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