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広島国際大学(広島県東広島市)リハビリテーション学科の月城慶一教授と福祉機器メーカーの株式会社今仙技術研究所(岐阜県各務原市)は、低価格で練習(特別なコツの習得)不要な義足用膝継手<注1>「MCK(エムシーケー)」を共同開発しました。2022年4月1日より今仙技術研究所から全国の義肢装具製作所を通じて販売を開始する予定です(厚生労働省に補装具完成用部品指定申請中)。
【本件のポイント】
●膝折れ<注2>を防止し、同価格帯の従来品と異なり、特別な練習を必要としない
●特許技術(申請中)の油圧ダンパ(膝の減衰装置)が転倒リスクを大幅に低減
●産学連携による開発<義肢装具士の月城慶一教授&今仙技術研究所>
膝継手は、太ももから脚を切断した方の膝関節の代わりとなる義足部品で、市場に出回っているものは、大別すると安価な「機械制御式」と高価な「コンピューター制御式」の2種類に分かれます。前者は約20~60万円と安価ですが、膝折れを防ぐ仕掛けを使いこなすには練習とコツの習得が必要です。一方、後者は複数のセンサーとマイコン制御により、確実に膝折れを防ぎますが、重量が非常に重く、100万円以上の価格帯がネックとなり、社会福祉制度の予算的制約により使用できる方は限られます。安価な膝継手のユーザーは、膝折れによる転倒の危険性があるため、リハビリのハードルが高く、実生活で荷重のかけ方や着地の仕方に注意を払い、リスクと闘いながら生活しています。
以上の背景から、「安全」「使いやすい」「低価格」「コンパクト」「軽量」な膝継手の開発に向けドイツの義肢装具メーカー・オットーボック社で経験を積んだ月城教授と特許技術の強みを持つ今仙技術研究所が2018年から共同研究を開始しました。
開発過程で、設計⇒試作⇒試歩行⇒評価⇒問題解決⇒設計変更を繰り返し、「機械仕掛けの可能性」を追究しました。こうして開発した高機能普及型の「MCK」は、コンピューター制御式よりサイズや重量、コストパフォーマンスに優れ、同等の使いやすさを実現。より多くのユーザーの日常生活を豊かにする''大切な体の一部''として普及することが期待されます。
<注1>膝関節の代わりとなる義足部品の総称。バネ、空圧、油圧機構などを用いて、屈曲・伸展などの動作を制御。
さまざまな種類の膝継手があり、ユーザーの活動度や要望に合わせて選択。
<注2>膝が不用意に急激に曲がる危険な現象で、転倒につながるため大腿義足ユーザーが最も恐れる現象。
■MCKの特長
(1)新技術による膝折れ防止
新技術を搭載した油圧ダンパ(膝の減衰装置)は、義足の傾きと加速度を検知し、''歩く''と''立ち止まる''に必要な油圧抵抗を瞬時に切り替える。立っている時はイールディングと呼ばれる、強い油圧抵抗による膝折れ防止機能が働き、特別な練習(コツの習得)は不要。
(2)豊富な切替モード
切替レバーを操作することで、4つのモードが選択可能。これにより、高齢者から若者まで、低活動から高活動の幅広いユーザーに適応。
●ノーマルモード
日常生活で使うモード
・立っているとき:膝折れ防止ON
・歩くとき:膝折れ防止OFF
●常時イールディングモード
どんな時でも膝折れ防止ON(強い油圧抵抗がかかる)
例)渓流釣り、登山、などで有効
●ロックモード
膝が完全に伸びた状態で固定
例)長時間の立ち仕事、滑りやすい路面や不整地で有効
●サイクリングモード
常に膝折れ防止OFF(油圧抵抗がかからない)
例)自転車をこぐときなど油圧抵抗が不要な場合に有効
(3)組み立てが簡単
フレーム横の基準線が垂直になるように組み立てるだけ。各調節も簡単にできるよう工夫。
■MCKの概要
・素 材 :アルミ合金
・体重上限:100kg
・参考質量:約940g
・想定価格:40万円以下
・販 売 :2022年4月1日から販売開始予定(厚生労働省に補装具完成用部品指定申請中)
・原 産 国:日本
■広島国際大学 リハビリテーション学科 義肢装具学専攻
http://www.hirokoku-u.ac.jp/rehabilitation/department/po/
■今仙技術研究所ウェブサイト
https://www.imasengiken.co.jp/
▼本件に関する問い合わせ先
学校法人常翔学園 広報室
名越
住所:広島県東広島市黒瀬学園台555-36
TEL:0823-27-3102
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/