グリーン配当の恩恵を受ける方法
共同ヘッド
グローバル・リアルエステート証券
不動産投資の専門家Tom Walkerによると、グリーン配当は、ESGに焦点を当てた投資家が不動産資産にインパクトを与える有効な手段であるという。
不動産セクターが直面している最大の課題の1つは、温室効果ガス排出量を削減し、よりサステナブルかつエネルギー効率の良い不動産運営をすることです。不動産セクターは、二酸化炭素の排出量が最も多いセクターの1つとしてあげられます。国連環境計画の推計によると、不動産セクターは世界の温室効果ガス排出量の30%、世界のエネルギー消費の約40%を占めています。
問題は実に複雑化しており、老朽化した建物の多くはエネルギー非効率的であり、現在の環境基準を満たすためには、多額のコスト負担が生じます。コストの負担は、多くの建物の所有者にとってリターン水準を引き下げる可能性が高いため、老朽化した建物の改修が期待通りには進捗しない可能性が高いと考えられます。
Tom Walkerは、この難問を解決する一つの方法は、グリーン配当であると考えています。
グリーン配当とは何ですか?
グリーン配当は、投資家がサステナビリティ・プロジェクトに投資することを目的として、配当の一部を会社に残すことを可能にする方法です。これにより、企業は環境対策に貢献するものの財務リターン要求を必ずしも満たさないプロジェクトに資金を投入することができます。不動産会社の場合、例えば、老朽化した建物のエネルギーシステムをアップグレードし、新しい窓やサッシを設置するために資金を投入することができます。
グリーン配当は、新しいアイデアであり、そのコンセプトはドイツのオフィスREITであるアルストリア(alstria)によって開発されました。老朽化した建物を改修し、エネルギー効率を上げる取組みが期待通りに進捗しないという問題を解決する興味深い方法だと考えています。
新しい建物を建てるだけでは環境に配慮したことにならない?
現在、不動産セクターでの焦点は、照明、冷暖房をはじめとする日常的な運営からの炭素排出にあります。ただし、これには建設に必要な資材を製造する過程で発生する炭素排出は含まれていません。建設に必要な主な資材はコンクリートと鉄鋼であり、どちらも多量の炭素を排出します。多くの建物の所有者は、運営におけるエネルギー消費にのみ焦点を当てており、新しい建物の建設が、気候変動危機を抑制するのではなく、促進させていることにさえ気づいていません。
老朽化した建物に投資を行うことは、エネルギー効率を高めることで温室効果ガス排出量を削減するだけでなく、新しい建物を建設しないことで温室効果ガスの排出量を抑制することにも役立ちます。グリーン配当は、改修プロセスを加速するのに役立つといえます。
投資家がグリーン配当を受け入れる理由は?
シュローダーは、多くの投資家が気候変動分野での投資にインパクトを求めていると考えています。投資家が環境に対するいかなる犠牲を払ってでも利益最大化を優先する時代は過ぎ去ったと考えています。
グリーン配当を受け入れることで投資家は、投資リターンを確保すると同時に積極的な措置を講じ、温室効果ガスの排出量を削減することができます。会社は、財務的な観点のみでは許容されない改修プロジェクトを実施し、座礁資産(資産を改修するコストが価値よりも大きい)となる可能性を低減することができます。
グリーン配当は実際にどのように機能しますか?
アルストリアは、配当金の支払ごとにグリーン配当の割合を決議します。投資家は、配当の全額を受取りたい、もしくはグリーン配当を会社に残す意思があるかを選択し、ポートフォリオのサステナビリティを向上させる特定のプロジェクトに資金を投資することを選択することが可能です。
グリーン配当はグローバル都市にどのような影響を与えるでしょうか?
温室効果ガス排出量ゼロに向けた措置を講じる必要があるため、建物の所有者に対する法規制は今後も強化され、座礁資産が増加するのではないかという懸念が高まっています。多くの建物の所有者にとって、これらの法規制を遵守するコストは巨額なものである可能性があります。グリーン配当により、ネット・ゼロ・カーボンへの移行を早めることで環境に配慮した質の高い資産が得られます。
今後、グリーン配当の仕組みを導入する企業はどの程度ありますか?
Tom Walkerの知る限り、現時点でグリーン配当の仕組みを導入している会社はアルストリアREITのみです。しかし、この様な革新的な政策は、不動産市場の他企業においても採用されるべきであると考えています。投資先と対話を行うなかで将来的により広範な企業での採用を期待しています。
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