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昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の太田晴久准教授(発達障害医療研究所/ 所長:加藤進昌)らの研究グループは、感覚過敏と関連する脳白質神経線維走行(脳内結合と関係)の障害が、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)で共通して脳梁において認められることを報告しました。本研究は、感覚異常をはじめとする発達障害特性の原因について、診断カテゴリーにとらわれずに究明していく必要性を示したものです。
本研究結果は英科学誌の『Molecular Autism』(2020年10月19日オンライン掲載)に掲載されました。
自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)は共に神経発達障害の一種です。ASDは対人コミュニケーション障害とこだわり行動、ADHDは不注意、衝動・多動性といった特性を主な症状とします。両障害は全く異なる主症状を持つことから、それぞれ独立した診断カテゴリーに分類されています。しかし実際には両障害は非常に並存しやすく、現状の診断分類の妥当性についても、脳の構造や機能の観点から検証していくことが求められています。
ASDとADHDに共通してみられる代表的な症状として、感覚過敏を中心とする感覚の異常が挙げられます。ASDでは診断基準にも含まれていますが、ADHDでも同様に存在し、当事者に大きな苦痛をもたらします。また、近年では発達初期からある感覚の問題によりASDの対人コミュニケーション障害が構築される可能性が指摘されており、発達障害の主症状の原因をなす基礎的な問題としても注目されています。それではASDとADHDでみられる感覚異常の原因は両障害で異なるのでしょうか?
今回の研究では成人のASD(105名)、ADHD(55名)および健常発達者(58名)に対して、MRIを用いて脳白質神経線維の走行を測定しました。脳白質には脳の部位間を繋ぐ役割があり、発達障害の特性をもたらす要因として注目されています。結果、ASDとADHDでは脳白質神経線維走行が障害されている部位が共通している(脳梁)ことが明らかとなりました。更に、それらの部位(脳梁)における脳白質神経線維走行の障害の程度と感覚異常の重症度との関係性はASDとADHDで類似していることが示されました。
これらのことは、ASDとADHDは脳白質神経線維走行に関して共通した脳梁における問題を抱えており、感覚異常の原因も類似している可能性を表しています。感覚異常をはじめとする発達障害特性の原因について、少なくとも脳内結合の観点からは、診断カテゴリーにとらわれずに究明していくことが必要と考えられます。
■論文タイトル・著者情報
White matter alterations in autism spectrum disorder and attention‑deficit/hyperactivity disorder in relation to sensory profile
Haruhisa Ohta, Yuta Y. Aoki, Takashi Itahashi, Chieko Kanai, Junya Fujino, Motoaki Nakamura, Nobumasa Kato and Ryu‑ichiro Hashimoto* (*責任著者)
Molecular Autism(英国時間2020年10月19日オンライン掲載)
DOI:10.1186/s13229-020-00379-6
■お問い合わせ先
<研究について>
昭和大学発達障害医療研究所 准教授
太田 晴久 (オオタ ハルヒサ)
Tel: 03-3300-5231
email: haruhisap@med.showa-u.ac.jp
昭和大学発達障害医療研究所 客員教授
橋本 龍一郎 (ハシモト リュウイチロウ)
Tel: 03-3300-5231
email: dbridges50@gmail.com
▼本件リリース元
学校法人 昭和大学 総務課(広報担当)
TEL: 03-3784-8059
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/