NXP「i.MX 8M Miniファミリ」に最適なパワーマネジメントIC「BD71847AMWV」を開発
スマートスピーカーやネットワークオーディオなど、先進電子機器のさらなる長時間駆動・小型化に貢献
<要旨>ローム株式会社(本社:京都市)は、NXP® Semiconductors(以下、NXP社)のアプリケーション・プロセッサ「i.MX 8M Miniファミリ」に最適な高効率パワーマネジメントIC(以下、PMIC)「BD71847AMWV」を開発しました。
NXP社の「i.MX 8M Miniファミリ」は、演算能力と省電力性能、音声・音楽、映像の処理に優れたアプリケーション・プロセッサです。
「BD71847AMWV」は、これまでロームが培ってきたプロセッサ向け電源技術を駆使して、プロセッサに必要な電源系統(パワー・レイル)と機能を集積化したPMICです。最高電力変換効率95%の高効率DC/DCコンバータ(*1)をはじめ、システムに必要な電源や保護機能を1チップで供給すると同時に、最適な電源管理を行うON/OFFシーケンサーを内蔵しているため、小型化はもちろんのこと、アプリケーション設計を容易にして、開発期間の大幅な削減に貢献します。
NXP Semiconductors社のi.MX マーケティングのシニア・ダイレクターであるLeonardo Azevedo氏は、「ロームはi.MXのエコシステムを実現する上で大切なパートナーです。BD71847AMWVは、i.MX 8M Miniアプリケーション・プロセッサの性能を最大限に活用したいお客様にとって最適な製品です。リファレンスボードにも搭載されており、シングルチップでプロセッサに最適なパワーソリューションを提供してくれます。」とコメントしています。
本製品は2019年3月よりサンプル出荷(800円/個:税抜)を開始しており、同年8月から月産40万個の体制で量産を行う予定です。生産拠点は前工程がローム浜松株式会社(浜松市)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc.(フィリピン)となります。
今後もロームは、省電力化やシステム最適化を実現する製品・ソリューションを開発し、社会に貢献していきます。
<背景>
近年、IoT技術の発展により、電子機器にはスマートスピーカーのボイスコマンドやストリーミングオーディオ/ビデオ用に、ユーザーとのインタラクション(対話・相互作用)が求められるようになっています。
NXP社のi.MX 8M Miniアプリケーション・プロセッサは、最大1.8GHzで動作する最大4個のArm® Cortex®-A53コアと、低消費電力のスタンバイ向けに最大400 MHzで動作するArm Cortex-M4コアを搭載しています。また、1080p解像度処理や2D/3Dグラフィックス、高度なオーディオ機能、高速インターフェースなどにも対応しており、幅広い民生機器や産業機器アプリケーションに向けて省電力かつ高性能なソリューションを提供します。
ロームはNXP社のi.MX 8Mファミリに最適なPMICを開発しており、昨年「i.MX 8M Quad/Dualアプリケーション・プロセッサ」に最適なPMIC「BD71837MWV」をリリースしました。今回は先進プロセスを採用して省電力性能も備えた「i.MX 8M Miniファミリ」に対して、新しいPMIC「BD71847AMWV」をリリースします。
<新製品の特長>
1.i.MX 8M Miniアプリケーション・プロセッサに必要な電源機能を1チップで簡単に実現
「BD71847AMWV」は、i.MX 8M Miniアプリケーション・プロセッサの電源系統に合わせて電源回路を設計しており、制御ロジック、降圧DC/DCコンバータ(Buck Converter)6ch、LDO(*2)6chを集積し、プロセッサだけでなくアプリケーションで必要とされるDDRメモリにも1チップで電源供給が可能です。加えて、SDXCカード用1.8V/3.3Vスイッチ、32.768kHz水晶振動子のバッファ、さまざまな保護機能(電源系統ごとの出力短絡、出力過電圧、出力過電流やサーマルシャットダウン)を内蔵しています。
最高電力変換効率95%の降圧DC/DCコンバータを搭載し、入力電圧は1セルのLi-IonバッテリーからUSBまで幅広い範囲(2.7V~5.5V)で動作することができるため、i.MX 8M Miniプロセッサが適用される分野に最適なPMICとなっています。
さらに、BD71847AMWVを簡単に評価できる環境も取り揃えています。
(1) Linuxドライバ準備済みで、アプリケーション開発時間を短縮
ロームからは、BD71847AMWV のLinuxドライバをはじめ、設計の際に必要な周辺アプリケーションに関する設計ガイドライン、リファレンス回路・レイアウトを提供しており、アプリケーション開発時間を短縮し、タイムリーに市場へ製品をリリースすることができます。
Linuxドライバや評価用ドキュメントについては、下記URLよりご覧ください。
https://www.rohm.co.jp/web/japan/products/-/product/BD71847AMWV
(2) i.MX 8M Mini EVKに搭載済みで、すぐに評価可能
NXP社からは、BD71847AMWVを搭載したi.MX 8M MiniプロセッサのEvaluation Kitが提供されており、i.MX 8M Miniプロセッサに対する動作をすぐに評価可能です。
1つの小型QFNパッケージ(7mm x 7mm, 高さ1mm Max, 0.4mm pitch, 56pin)で必要な電源機能を供給すると同時に、PMICの端子配置はi.MX 8M Miniアプリケーション・プロセッサとDDRメモリへの接続が容易になるように考慮されており、基板レイアウト設計時の負荷軽減に貢献します。新製品と同じ電源系統をディスクリート部品で構成した場合に比べて、部品点数を42個、実装面積を42%削減することが可能です(片面実装、Type-3 PCBを想定した場合)。また、両面実装にするとわずか400mm2以下の省スペースで電源機能を構成することも可能です。
3.システムの用途に合わせたカスタマイズが可能
新製品には、アプリケーション設計を柔軟にするために、パワーモード(RUN、IDLE、SUSPEND、SNVS、OFF)に対応したシーケンサーを搭載しています。I2CインターフェースとOTP(One Time Programmable)ROMを通じて、システムが求める機能やメモリの種類に合わせて、各電源の出力電圧やON/OFF制御、保護機能の有効・無効、さらにはパワーモードの遷移条件をカスタマイズすることで、用途に合わせて最適なアプリケーション設計を実現できます。
<新製品の機能概要>
- 入力電圧2.7V~5.5V
- 降圧DC/DCコンバータ x 6ch、LDO x 6ch
- SDカード駆動用パワーマルチプレクサ搭載
- 32.768kHz 水晶発振回路内蔵
- 多彩な保護機能搭載(ソフトスタート機能、パワー・レールエラー検出、過電圧保護、過電流保護など)
- I2Cインターフェース対応(Max 1MHz)
- 割り込み機能(マスク機能付き)
<用語説明>
(*1) DC/DCコンバータ
DC/DCコンバータは、電源ICの一種で直流(DC)から直流へ電圧を変換する機能を持つ。一般的に電圧を下げる“降圧”、電圧を上げる“昇圧”が存在する。
(*2) LDOレギュレータ (Low Drop Out レギュレータ / 低飽和レギュレータ)
入力と出力の電圧差が低く、リニアレギュレータ(入出力電圧が線形動作する)と言われる区分の電源ICに該当する。
DC/DCなどのスイッチングレギュレータと比較して、回路構成が簡単でノイズが少ないなどの特長を持つ。
ロームは、1958年(昭和33年)設立の半導体・電子部品メーカーです。自動車・産業機器のほか、民生・通信など多様な市場に対し、品質と信頼性に優れたLSIやディスクリート、電子部品を供給するとともに、システム全体を最適化するソリューション提案を行っています。