子どものスポーツ活動、親の負担感が影響 支援体制が求められる

公益財団法人 笹川スポーツ財団

「小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究」
笹川スポーツ財団 2016年度 研究調査事業

「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)は、小学生のスポーツ活動をささえる立場にある保護者の意識調査を実施しました。小学1~6年生の第1子を持つ母親を対象にインターネット調査およびグループインタビューを実施し、保護者が子どものスポーツ環境をささえる行動の実態、子どものスポーツ環境やそれをささえる保護者の意識を明らかにし、報告書としてまとめました。

子どものスポーツ活動は保護者にとって「やりがい」がある一方で「負担」も大きく、スポーツ実施状況に家庭環境が影響せざるをえないという課題が浮かび上がりました。報告書では、こうした状況を詳細にまとめているほか、子どもが家庭環境に左右されずにスポーツ活動をできるようにするために当事者だけでなく周囲の人々や社会がどうすべきかについても考察しています。以下に主な調査結果について報告いたします。


※なお、本レポートの全文は、SSFウェブサイトでご覧いただけます。
http://www.ssf.or.jp/research/report/category4/tabid/1510/Default.aspx

【主な調査結果】

1.多くの母親が、スポーツ活動への関与に「やりがい」を感じている
子どものスポーツ活動に関わっている母親に対し、「やりがい」と「負担感」の程度を尋ねたところ、ほとんどの項目で、「負担」より「やりがい」を感じているという回答が上回った。
→詳細:次ページ「図1」(報告書p.22「図表1-18」)

2.子どもがスポーツ活動をしない理由の上位は「保護者の負担」
スポーツをしない理由として、低学年で「送迎や付き添い」「費用の負担」「係や当番の負担」など保護者の負担が上位に見られた。また、世帯年収別に見ると、「費用の負担」などの項目で大きな差が見られ、保護者の負担感は家庭環境などに影響を受けていることが示唆された。 
→詳細:3ページ「図2、3」(報告書p.26「図表1-22」、p.28「図表1-23」)


■研究担当者コメント

今回の調査結果からは、子どもがスポーツ活動をしない理由の一つとして、費用や係・当番に対する保護者の負担感があることが明らかになった。保護者の働き方や経済状況、家族構成など、家族のあり方が多様化するなかで、余裕のない家庭では保護者自身の負担が理由になり、子どものスポーツ活動を諦めている可能性が示唆される。母親個人にできることには限界があり、多様な親子が参加しやすいクラブの運営や、活動の場に関する情報の集約・公開など、スポーツ関係者にできる工夫を検討することが重要だろう。また、グループインタビューからは、熱心にみえる母親たちも、さまざまな葛藤をしながら「ささえる」役割を引き受けている様相も明らかになった。母親たちに当たり前のように課される役割を見直すこと、母親以外の担い手を増やすことは、スポーツ活動に限らず子どもが育つ環境全体の問題でもあり、社会で検討できる課題であると考えられる。この分野については、今後も継続して調査していく。             
【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 宮本幸子】
 
【調査のポイント】

1.多くの母親が、スポーツ活動への関与に「やりがい」を感じている

スポーツ活動をしている子の母親に、実際に母親自身が行っている支援について、どの程度「やりがい」や「負担感」があるのかを尋ねた。「自主練習につきあう」「大会や試合に付き添う」「ルールを勉強する」は約8割が「やりがい」があると回答した。
一方、「負担感」が高いのは「送迎をする」「活動場所の手配や予約」などで、約5割となった。また、会費や大会参加費・合宿費などの費用も3~4割の母親が負担に感じていることも分かった。

図1  母親のやりがい・負担感(スポーツ活動をしている子)


注1)「やりがい」は「とてもやりがいを感じている」+「まあやりがいを感じている」の%。
「負担感」は「とても負担に感じている」+「やや負担に感じている」の%。
注2)上から13項目に関しては、別の質問でそれぞれの支援を「よくする」「時々する」と回答した人を母数にしている。
( )内がそれぞれの母数となる。



2.子どもがスポーツ活動をしない理由の上位は保護者の負担

スポーツの活動をしない理由を子どもの性別・学年別にみると、性別にかかわらず、低学年では保護者の負担が上位にあがり、それぞれ5割以上を占めている。
一方、高学年では保護者の負担を理由にする割合が4割程度に下がるものの、「お子様の年齢ではもう遅いと思うから」「お子様はスポーツを好きではないから」などの割合が低学年に比べて大きく上がっている。

図2 スポーツ活動をしない理由(性・学年別 ※男子1、6年生を抜粋)


注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。

1年生と6年生の男子の図表を抜粋。全学年・男女別のデータはウェブサイトでご覧いただけます。
http://www.ssf.or.jp/research/report/category4/tabid/1510/Default.aspx

また、保護者の負担に関わる項目について世帯年収別に分析すると、「費用の負担が大きいから」の項目で特に大きな差が見られた。また、「送迎や付き添いの負担が大きいから」「保護者の係りや当番の負担が大きいから」「保護者どうしの人間関係に気を使いそうだから」でも差が見られ、保護者の負担感は家庭の経済状況や保護者の生活の事情などに影響を受けていると考えられる。

図3 スポーツ活動をしない理由(世帯年収別)


注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。 <、>…5ポイント以上の差 ≪、≫…10ポイント以上の差

調査概要】
【調査名】   小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究
【調査対象】インターネット調査:小学1~6年生の第1子をもつ母親。第1子の属性が
      各学年男女400名ずつになるように回収した。有効回答数は 2,368名。
      グループインタビュー:第1子が小学生の母親10人を2グループに分けて実施。             
【調査期間】2017年2月(インターネット調査)、同6月(グループインタビュー)
【研究主体】公益財団法人 笹川スポーツ財団
 

【笹川スポーツ財団とは】

公益財団法人 笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。国、自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

■公益財団法人 笹川スポーツ財団について

名称  : 公益財団法人 笹川スポーツ財団
代表者 : 理事長 渡邉 一利
所在地 : 〒107-6011 東京都港区赤坂1-12-32
      アーク森ビル イーストウィング11階
設立  : 1991年3月
目的  : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容: ・生涯スポーツ振興のための研究調査
      ・生涯スポーツ振興のための研究支援
      ・生涯スポーツ振興機関との連携事業
      ・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL   : http://www.ssf.or.jp/

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