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日本女子大学(東京都文京区、学長:篠原聡子)は、2026年3月6日(金)、目白キャンパスにおいて、日本古来の製錬技術である「たたら製鉄」を学修・研究するイベントを実施しました。
本イベントは、建築デザイン学部建築デザイン学科と文学部史学科が共催し、理学部の協力を得て実施したもので、学生や教員、学外協力者など141名が参加しました。
今回の取り組みでは、製鉄に使用する砂鉄の採取から、製鉄炉の組み立て、1,200度を超える炉への火入れ、砂鉄および木炭の投入、さらに鉄塊(ケラ)を取り出す「ケラ出し」に至るまで、全工程を学生自らが実践しました。加えて、採取した砂鉄および取り出したケラについては、今後、理学部において採取地による違いを成分分析によって明らかにする予定です。
本取り組みは、人類の歴史とともに歩んできた鉄という素材を改めて身近に感じ、古来の技術の一端に触れ、鉄づくり本来の魅力を体験することで、素材への理解を深めるとともに、「人の手によるものづくり文化」の継承にもつながるものとなりました。本学では今後も、文理融合の総合大学としての強みを生かし、各学科や異分野が連携し、実践的な学びの機会を学生たちに提供していきます。
全員が注目したケラ出しの瞬間
■江戸時代に使われた小鉄舟(こがねぶね)を再現し、砂鉄を採取
文学部史学科の德安浩明教授が島根県雲南市教育委員会の協力のもと文献調査および資料提供を行い、建築デザイン学部の学生たちが、江戸時代に使われていた比重選鉱による砂鉄採取の道具である小鉄舟を再現しました。
完成した小鉄舟は、鉄の産地として知られる鳥取県の地元市民の協力を得て、米子市内の弓ヶ浜における砂鉄採取に実際に使用されました。また、本学の学生たちは、神奈川県鎌倉市の稲村ヶ崎海岸および千葉県旭市の飯岡海岸で、磁力選鉱による砂鉄採取を実施しました。
今回のイベントでは、弓ヶ浜および稲村ヶ崎海岸で採取した砂鉄を用いて、「たたら製鉄」による製鉄を行い、弓ヶ浜の砂鉄から抽出したケラについては、後日、米子市へ返還します。なお、飯岡海岸で採取した砂鉄についても後日製鉄を行う予定です。
小鉄舟制作の様子
地元市民と德安教授が小鉄舟で砂鉄を採取
■火入れから5時間後に10.5kgのケラを抽出
今回のたたら製鉄は、「ものづくり教育たたら連絡会」の協力のもと、学生たちが全工程を自ら実践しました。製鉄炉は2炉設置し、弓ヶ浜および稲村ヶ崎海岸で採取した砂鉄各20kgを、1~1.5kgずつに分けて時間をおきながら、木炭と交互に炉に投入しました。また、東京科学大学より借用した「ふいご」を用いて炉へ送風する工程も参加者が体験しました。
その結果、火入れから5時間後に弓ヶ浜の砂鉄からは4.0kg、稲村ヶ崎海岸の砂鉄からは6.5kgのケラを抽出することができました。
「ふいご」で送風し炉内の温度を上げる
抽出した2つのケラ
■「たたら製鉄」を科学的に分析する理学部の協力
今回採取した砂鉄および抽出したケラは、後日、理学部化学生命科学科において電子顕微鏡にてX線分析を実施し、産地による成分の違いを解析する予定です。また、たたら製鉄の実施当日は、理学部数物情報科学科の石黒亮輔教授の協力のもと、炉内の温度測定も行いました。これにより、参加者が炉内の状況変化を可視しながら「たたら製鉄」に参加することができました。
炉内の温度上昇を可視化した
サーモグラフィカメラも設置
■鍛冶体験と特別講演も同日に実施
「たたら製鉄」と並行して、各分野の専門家による学術講演(砂鉄の地理学、たたら炉の構造、製鉄集落の歴史等)を実施したほか 、平安時代から続く甲冑師の家系である明珍本舗53代当主・明珍宗敬氏を招いた鍛冶体験も行い、参加者が鉄や製鉄についてさらに理解を深められる取り組みとしました。
明珍宗敬氏による鍛冶の説明
ハンマーで熱した鉄を叩く参加者
【講演内容】
・「日本女子大学のたたら製鉄イベント」
講師:日本女子大学建築デザイン学部建築デザイン学科江尻憲泰教授
・「“菅谷たたら山内”にみる製鉄集落の特徴と現在の課題」
講師:日本女子大学建築デザイン学部建築デザイン学科武藤美穂子学術研究員
・「鉄をつくると、学問が見えてくる ― たたら製鉄から広がる科学と歴史 ―」
講師:東京科学大学物質理工学院渡邊玄助教
・「たたら鉄つくりを2倍楽しむための砂鉄採取入門」
講師:日本女子大学文学部史学科德安浩明教授
■参加した学生のコメント
小鉄舟の制作から本イベントに関わっていましたが、ずっしりと重いケラを取り出した瞬間は、感動しました。「たたら製鉄」の方法は昔の人たちが代々受け継ぎ、改良されてきたものだと思うので、自分たちで手順を追って、その全工程を体験できたことは貴重な経験でした。日本古来の伝統技能や伝統工法は継承しつつ、現代で活用する方法を見つけていく必要があると改めて感じました。
■担当教員コメント
建築デザイン学部建築デザイン学科 江尻憲泰教授
多くの参加者に楽しんでいただけたことを嬉しく思います。また、他学科も含めて多くの先生方に関心を持っていただき、教員同士がお互いの研究にどのような共通点があるのかを知る機会にもなり、その意味でも意義のあるイベントであったと感じています。
現代では、鉄が作られる過程を目にする機会はほとんどなく、均一な素材として捉えられているかもしれません。しかし本来は、厚みが違うだけでも性質は変わりますし、産地や作り方によっても異なっていたはずです。一様な素材を用いてものづくりを行うことも大切ですが、1つひとつを「手作り」するという感覚も、人間は持ち続けていかなければなりません。今回参加してくれた学生には、その「手作り」の感覚を感じ取ってもらえたのではないかと思います。その感覚を忘れず、これから社会に出て大きなものづくりに携わる際にも生かしていってほしいと願っています。
文学部史学科 德安浩明教授
今回の実験操業では、製鉄プロセスの追体験に留まらず、砂鉄採取用具の製作から、ふいごによる送風、さらには鍛冶体験に至る一連の工程を体験できました。これにより、学生たちは原理を含め、多角的な知見を習得できたのではないかと考えています。特筆すべきは、小鉄舟を再現・製作して臨んだ砂鉄採取です。これは他に類を見ない試みであり、比重選鉱の原理を理解する上で効果的でした。磁力選鉱とは比較にならない大量の砂鉄採取に成功したことは、私にとっても大きな驚きでした。採取した弓ヶ浜産の砂鉄は、学内で再度水洗した上で製鉄炉に投入しました。水洗のみで選鉱された砂鉄を用いた実験操業の前例を、私は知りません。鉄塊がどのような化学成分を有しているのか、その分析結果が待たれるところです。
理学部化学生命科学科 菅野靖史教授
理学部は、ものづくりの根底にある原理や真理を探究することが本流ですが、その先を意識する機会は多くありません。今回のたたら製鉄のイベントは、近代工業の誕生以前の日本の伝統的なものづくりを、その文化的背景も含めて実体験しようとの試みであり、理学部としてどのような協力ができるかを考えました。そこで、自然科学の理論や日ごろから取り組んでいる研究手法を駆使することで、理学が直接ものづくりにつながることを可視化するように努めました。理学部の協力のあり方として、ものづくりとその背景を含めた多面的な研究の一翼を担い、異分野連携の可能性を広げることができることを示せたのではないかと感じています。
【実施概要】
名称: 日本女子大学 たたら製鉄イベント
日時: 2026年3月6日(金) 9:00~17:00
場所: 日本女子大学 目白キャンパス(梅花寮跡、80年館B棟851教室)
参加者: 計141名(本学学生63名、教職員・学術研究員15名、ものづくり教育たたら連絡会9名、外部参加者等54名)
内容: たたら製鉄、鍛冶体験、学術講演会 等
【参考リンク】
日本女子大学 大学改革スペシャルサイト:
https://www3.jwu.ac.jp/fc/public/unv/jwu_vision/
【日本女子大学について】
日本女子大学は、日本初の組織的な女子高等教育機関として創立し、2021年に120周年を迎えました。私立女子大学唯一の理学部を有し、文理融合の教育環境をもつ女子総合大学です。「私が動く、世界がひらく。」のタグラインのもと、自ら学び、自ら行動し、新しい価値を創造できる人材を育てています。昨年度は「建築デザイン学部」を開設し、今年度には「食科学部」を開設しました。さらに2026年度に文学部2学科の名称変更を予定し、2027年度には「経済学部(仮称)」の開設(構想中)、2028年度には「ファッションデザイン学部(仮称)」および「人間科学部(仮称)」の開設(構想中)と、継続して大学改革を進めていきます。詳しくは、
https://www.jwu.ac.jpをご覧ください。
▼本件に関する問い合わせ先
学校法人 日本女子大学 法人企画部 広報課
住所:〒112-8681 東京都文京区目白台2-8-1
TEL:03-5981-3163
メール:n-pr@atlas.jwu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/