醸造科学科 鈴木 敏弘 准教授らが開発した乳製品が「にっぽんの宝物 JAPANグランプリ 2024-2025」伝統と進化部門グランプリを含む3賞を受賞、世界大会に進出
失われつつある伝統文化を次の世代に繋ぐ
醸造科学科 鈴木 敏弘 准教授と発酵食品化学研究室の大多和 春花さん(醸造科学科 4年)、山田和広さん(2021年度卒業)らをはじめとする学生、東京都 八丈島でくさや製造を営む長田 隆弘さん(長田商店)、東京諸島のチーズ職人 魚谷 孝之さん(エンケルとハレ)による研究チームは、八丈島の「くさや汁」と「自生明日葉」から分離した乳酸菌を活用し発酵乳、発酵バター、 チーズを開発。「にっぽんの宝物 JAPANグランプリ 2024-2025」(全国大会)に挑戦し「伝統と進化部門」でグランプリを受賞した他、「東京建物YNK賞」、「ベストイノベイティブ賞」を受賞し、6月に開催される「EXPO2025 大阪・関西万博」での世界大会出場を決めました。
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「にっぽんの宝物」は地域に眠る宝物・宝人を「学ぶ機会」と「チャレンジする機会」を通して磨き上げ、全国レベル・世界レベルで活躍できる人材と商品に育て上げるプロジェクトです。
■東京八丈島の宝物グランプリで準グランプリ!
今回、鈴木准教授と発酵食品化学研究室の学生、長田さん、そして魚谷さんは協力し、東京都 八丈島の地域活性化と伝統発酵食品文化保全の一環として伝統水産発酵食品「くさや」製造に重要な「くさや汁」と八丈島に自生し、別名「八丈草」とも呼ばれるセリ科の多年草「明日葉(あしたば)」から乳酸菌を分離。
その乳酸菌と「八丈島ジャージー牛」の乳を使って発酵乳を開発し2024年12月18日(水)、東京都が主催する「東京八丈島の宝物グランプリ」にて準グランプリを受賞し、全国大会に進出しました。
■全国大会へ進出!
その後、さらに試作を重ね、新たに発酵バターとチーズを試作。2025年2月26日(水)、「にっぽんの宝物 JAPANグランプリ 2024-2025」 の「伝統と進化部門」でグランプリを含む3賞を受賞。
今年6月の「EXPO2025 大阪・関西万博」で実施予定の世界大会に駒を進めました。
「くさや」は製造者の高齢化と後継者不足による伝統の消失が危惧されており、原料魚を獲る漁船も一隻で運用していることから資金面でも困窮。「くさや」製造と「くさや」製造に欠かせない「くさや汁」の保全・維持が窮地に立たされています。
こうした現状を打破するために前述した研究チームは菌、原料、製造まで全て地域のものを使い、八丈島発酵食品産業の水平展開を立案。
「くさや汁」と自生明日葉から分離した菌を八丈島特産のジャージー牛と組み合わせることで新たな発酵食品を生み出し、失われつつある伝統文化を次の世代に繋ぐ、オール八丈島プロジェクトを始動しました。
![]() くさや |
![]() くさや汁 |
そして、分離した菌を「伝統文化由来微生物」として使用することで、八丈島の新しい発酵食品を完成させることに成功。今回の研究成果により伝統産業・文化の保全への一助となることが期待されます。
今回、発酵食品化学研究室でくさやを研究している鈴木准教授が、“神秘の発酵食品”と呼ぶ「くさや」について、以下の動画で解説しています。こちらもぜひご視聴ください。
【知るスパ】くさや Kusaya | 醸造科学科 鈴木 敏弘 准教授【東京農大ガストロノミー】