ギリアド・サイエンシズ 開発中の抗ウイルス薬remdesivirの人道的使用対象患者53例のデータをThe New England Journal of Medicineで発表

―この限定的なデータセットではremdesivir投与患者の68%が臨床的改善を示す―

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ、ナスダック:GILD、以下「ギリアド」)は4月10日、開発中の抗ウイルス薬remdesivirを人道的使用目的で個別に投与した、入院中で重度合併症を呈する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者53例を対象としたコホート分析結果を発表しました。本国際コホート研究では、患者の過半数が臨床的改善を示し、remdesivir投与において新たな懸念を示す兆候は認められませんでした。人道的使用プログラムを通じて得られるデータは限定的であり、COVID-19治療薬としてのremdesivirの安全性および有効性は、別途実施中の複数の第III相臨床試験でさらなる検討を行います。本コホート分析の詳細は、本日(4月10日)The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されました。

remdesivirは世界のいずれの国でも認可・承認されておらず、COVID-19治療薬としての安全性と有効性は十分に解明されていません。

本コホートでは、患者の3分の2近く(64%、n=34/53)がベースライン時点で人工呼吸器を使用しており、そのうち4例は体外式膜型人工肺(ECMO)を使用していました。remdesivirの初回投与から18日目(中央値)に、患者の68%(n=36/53)で酸素補充の必要レベルが改善しました。人工呼吸器使用患者の過半数が抜管し(57%、n=17/30)、全患者の約半数がremdesivir投与後に退院しました(47%、n=25/53)。Kaplan-Meier分析の結果、28日間の観察期間に認められた臨床的改善の累積出現率は84%でした。なお、本研究での臨床的改善とは、(1)退院、(2)事前に規定された6段階の評価基準でベースラインから2段階以上の改善の、少なくともどちらかを満たす場合と定義しています。臨床的改善を認めた患者の割合は、非侵襲的換気療法実施患者に比べて侵襲的喚起療法実施患者で低く(ハザード比(HR):0.33[95%信頼区間(CI):0.16、0.68])、また70歳以上の患者でも低くなりました(50歳未満に対するHR:0.29[95%CI:0.11、0.74])。人道的使用プログラムを通じて得られた今回のデータは、コホートが小規模であること、観察期間が比較的短いこと、プログラムの性質上揃わないデータもあること、無作為化された対照群がないことから、限定的です。

シダーズ・サイナイ医療センター(米国ロサンゼルス)の病院疫学科ディレクターで、本論文の筆頭著者であるジョナサン・D・グレイン(Jonathan D. Grein, MD)は、「現在、COVID-19に対する確立された治療法はありません。本データから確たる結論を下すことはできないものの、remdesivir投与を受けた入院患者に関する観察結果は有望なものです。今回得られたデータを検証し得る、比較対照臨床試験の結果を待ちわびています。」と述べています。

本コホートにおける全死亡率は13%(n=7/53)であり、死亡率は、非侵襲的換気療法実施患者(5%、n=1/19)に比べ、侵襲的喚起療法実施患者(18%、n=6/34)で高率に認められました。死亡リスクを高める要因は、年齢が70歳以上であること(70歳未満に対するHR:11.34[95%CI:1.36、94.17])、またベースライン時点で血清クレアチニン値が相対的に高い(すなわち腎機能が低下している)こと(mg/dLごとのHR:1.91[95%CI:1.22、2.99])でした。

また本コホートでは、肝酵素値(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の、いずれかもしくは両方)の軽度から中等度の上昇が、患者の23%(n=12/53)で認められました。remdesivir短期投与期間中、安全性において新たな懸念を示す兆候は認められませんでした。

今回得られたデータセットとその分析結果は限定的であり、remdesivir投与の臨床的影響について科学的に頑健な理解を得るためには、現在進行中のremdesivirのランダム化臨床試験の結果が必要です。

ギリアドのチーフ・メディカル・オフィサーであるマーダッド・パーシー(Merdad Parsey, MD, PhD)は、「今回の人道的使用データの分析結果から示された転帰は有望ではありますが、データは限定的です。ギリアドは、remdesivir臨床試験を複数進めており、初期データは数週間以内に得られる見込みです。私たちの目標は、蓄積されつつあるエビデンスをできるだけ早く積み上げてremdesivirの可能性をさらに詳しく評価すること、また、適切である限り本剤がより幅広く使用されるよう支援することです。」と、述べています。

ギリアドは、remdesivirの第III臨床試験2試験で構成される臨床試験プログラム、通称SIMPLE試験を、COVID-19の感染拡大国で実施しています。SIMPLE試験のうち重度症状を呈する患者対象の試験結果は今月中に、中等度症状を呈する患者対象の試験結果は5月に得られる予定です。ギリアドはまた、中国湖北省で実施中の臨床試験2試験を含め、社外の組織が主導する臨床試験も複数支援しています。中国で行われていた重度症状を呈する患者対象の試験は、登録症例数不足のため早期中止との連絡を受けました。そのデータを綿密に分析するために、データの公開を待っています。一方、同じく中国の、軽度から中等度症状を呈する患者対象の試験は継続中です。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)主導のremdesivir国際共同試験も、現在症例登録中であり、5月にはデータが得られる見込みです。さらに、世界保健機関(WHO)のマスタープロトコルに基づく、COVID-19に対するremdesivirをはじめとする複数の治験薬の臨床試験は、世界中で症例登録を開始しています。

今回の人道的使用コホート分析について
2020年1月25日以降、重度のCOVID-19合併症を呈する、現行の臨床試験に参加できない患者に関し、緊急時使用に適合する患者を対象にremdesivirを提供しています。これまでに1,800人を超える患者が、人道的使用プロトコルに基づいて個別にremdesivir投与を受けています。

本コホート研究では、ギリアドの人道的使用プログラムを通じて2020年3月7日以前にremdesivirを1回以上投与された、米国、欧州、カナダ、日本の患者53例のデータを評価しました。患者は全員、COVID-19感染による重度急性呼吸器症状を呈する入院患者で、酸素飽和度が94%以下、もしくは酸素補充が必要でした。remdesivir投与開始前の症状持続期間の中央値は12日間でした。患者の多く(75%)は、高血圧、糖尿病、高脂血症、喘息などの併存症を有する60歳以上の男性でした。このような基礎疾患が3種類併存する場合、COVID-19の転帰不良に関連することが分かっています。

本研究での治療期間は、remdesivirの10日間投与でした。これは、1日目に負荷投与量として200mg、その後9日間は100mgを1日1回静脈内投与するものです。53例のうち75%の患者での投与期間は10日間、19%は5~9日間、6%は4日間以下でした。観察期間は、remdesivirの投与開始から28日間でした。4例は治療途中で投与が中止されましたが、その理由は既存の腎機能障害の悪化が1例、多臓器不全が1例、肝酵素値の上昇が2例(うち1例は斑状丘疹状皮疹発現)でした。

本研究では、事前に設定された評価項目はありませんでした。分析の一環として、酸素補充の必要レベルの変更、退院、remdesivirの投与中止につながった有害事象(報告ベース)、死亡など、主要な臨床的事象の発生率を定量分析しました。さらに、臨床的改善を認めた患者割合の評価にあたっては、WHOの「R&Dブループリント(戦略対策計画)」で推奨されているとおり、臨床的改善を、(1)退院、(2)入院や酸素補充の必要レベルなどで評価する6段階の評価基準でベースラインから2段階以上の改善、と定義しました。

remdesivirについて
remdesivirは、エボラウイルス、マールブルグウイルス、MERSウイルス、SARSウイルスを含む、複数のエマージングウイルス病原体に対し、in vitroと動物モデルを用いたin vivoの両方で広範な抗ウイルス活性を有する開発中の核酸アナログです。ギリアドが実施したin vitro試験では、remdesivirのCOVID-19原因ウイルスに対する活性が示されました。COVID-19治療薬としてのremdesivirの安全性および有効性は、現在進行中の複数の第II相および第III相臨床試験で検討されています。臨床試験の初期データは、4月下旬に得られる見込みです。

ギリアド・サイエンシズについて
ギリアド・サイエンシズ・インクは、医療ニーズがまだ十分に満たされない分野において、革新的な治療を創出、開発、製品化するバイオファーマ企業です。会社の使命は、生命を脅かす病を抱える世界中の患者さんのために医療を向上させることです。カリフォルニア州フォスターシティに本社を置き、世界35か国以上で事業を行っています。
ギリアド・サイエンシズの、COVID-19感染拡大に対する取り組みについて、詳細は https://www.gilead.com/purpose/advancing-global-health/covid-19 をご覧ください。

将来予想に関する記述
本プレスリリースは、1995年米国民事証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)で定義される「将来予測に関する記述」に該当し、いくつかのリスクや不確定要素などの要因に左右される場合があります。remdesivirは開発中の治療薬であり、世界のいずれの国においても認可・承認されていません。またCOVID-19を含め、いずれの疾患の治療薬としての安全性および有効性も、十分に解明されていません。remdesivirの臨床試験で好ましくない結果が得られる可能性、またこういった試験の一つ以上が現在予定する期間内に、もしくは期間にかかわらず完了できない可能性があります。さらに、ギリアドがremdesivirの開発を中止する戦略的判断を下す可能性や、米国食品医薬品局(FDA)およびその他規制当局に承認されない可能性があり、承認されてもその使用が大きく制限され、その結果、remdesivirが製品化に至らない可能性もあります。過去の事実以外のすべての記述は、将来予想に関する記述とみなしてください。これらのリスク、不確定要素、その他の要因により、実際の結果が「将来予想に関する記述」と著しく異なったものとなる可能性があります。将来予想に関する記述のみに依拠することのないようご注意ください。これらのリスクやその他のリスクについては、米国証券取引委員会に提出している、2019年12月31日を期末とするギリアド年次報告書(フォーム10-K)で詳細に説明しています。将来予想に関する記述はすべて、ギリアドが現在入手できる情報に基づいており、ギリアドは将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。
本件に関するお問合わせ先
お問い合わせ先:
ギリアド・サイエンシズ株式会社 広報部
E-mail: JPPublic.Affairs@gilead.com
TEL:03-6837-0790
FAX:03-5224-5270

この企業の関連リリース

この企業の情報

組織名
ギリアド・サイエンシズ株式会社
ホームページ
http://www.gilead.co.jp
代表者
ルーク ハーマンス
資本金
0 万円
上場
非上場
所在地
〒100-6616 東京都千代田区丸の内グラントウキョウサウスタワー 16F
連絡先
03-6837-0055

検索

人気の記事

カテゴリ

アクセスランキング

  • 週間
  • 月間
  • 機能と特徴
  • Twitter
  • Facebook
  • デジタルPR研究所