暑い夏に活躍する製品として、エアコン(※1)や扇風機(※2)がありますが、使用頻度が高くなる夏季に製品事故が多く発生しています。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、エアコン及び扇風機を使用する前に気を付けるポイントを紹介します。
NITEに通知された製品事故情報(※4)において、エアコン及び扇風機の事故は2019年度から2023年度の 5 年間に合計403件 (エアコン:340件、扇風機:63件)ありました。
製造されてからの年数が経った製品ほど、何かしらの不具合を生じて火災に繋がるケースが増える傾向にあります。最近では、趣がある“レトロ”なアイテムに注目が集まっており、昭和レトロを感じる古い扇風機もそのひとつです。物を大切に長く使うのは大事なことです。しかし、製品にも寿命はあります。もし製品に異常が見られたら、直ちに使用を中止し、レトロな製品はインテリアにとどめるなどして安全に過ごしましょう。
また、製品の取扱説明書や据付説明書で禁止されている行為をしたことによる事故も発生していますので注意してください。特にエアコンでは、誤った内部洗浄や配線を途中接続したことによる火災事故などが発生しています。
夏を迎える前に、製品に不具合が生じていないか点検するとともに、取扱説明書などで禁止されている行為をしていないか確認し、快適で安全な夏を過ごしましょう。
■エアコン・扇風機を使用する前に気を付けるポイント
○異常(異音や異臭がする、意図せず停止するなど)がないか点検する。
○エアコンの取り付け・取り外し・内部洗浄といった工事や作業は、販売店やメーカーに相談し、専門の知識や資格を有する業者に依頼する。
○使用している製品がリコール対象ではないか確認する。
(※1)ルームエアコン(室外機も含みます)。
(※2)サーキュレーターや電気冷温風機、電源がソーラー発電・乾電池・USB端子により給電するもの(携帯用扇風機など)は除きます。
(※3)本資料における内部洗浄とは、液状の洗浄剤などを噴霧し機器内部の汚れなどを洗い流すことを指します。各機器の取扱説明書に記載されているフィルターなどの手入れは該当しません。
(※4)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
本資料で対象とする製品例
1.事故の発生状況
NITEに通知された製品事故情報のうち、2019年度から2023年度までの5年間に発生したエアコンの事故340件及び扇風機の事故63件(計403件)について、事故発生状況を以下に示します。なお、調査中の案件74件(エアコン:58件、扇風機:16件)も含みます。
1-1. 年度別の事故発生件数
エアコン及び扇風機の事故(計403件)について、年度別の事故発生件数を図1に示します。403件中378件(エアコン:316件、扇風機62件)が火災事故となっており、事故の9割以上を占めています。
1-2. 月別の事故発生件数
エアコン及び扇風機の事故(計403件)について、月別の事故発生件数を図2に示します。6月から8月の夏季に多く事故が発生しています。暑くなる季節での使用機会の増加に伴うものと考えられます。
1-3.原因別の事故発生件数
エアコン及び扇風機の事故(計403件)について、製造からの年数(※5)別の事故発生件数を図3に示します。403件中223件(エアコン:190件、扇風機33件)が、製造から10年以上経過した製品での事故となっています。製造されてからの年数が経った製品、特に設計上の標準使用期間を超えている場合は注意が必要です。
(※5)正確な製造年月は不明なものの、型式などから製造・販売・輸入の期間が推定できるものについては、製造等の開始年月を基準として年数をカウント。先述でも年数が不明なもので、使用期間が判明しているものは、使用期間から判断。
このうち、調査が完了し、かつ製造からの年数が判別できたエアコン及び扇風機の事故320件(エアコン:278件、扇風機:42件)について、原因別の事故発生件数を製造からの年数が「10年未満」、「10年以上」に分け、図4、図5に示します。エアコン及び扇風機ともに、製造からの年数が10年以上になると「製品に起因する事故」の割合が高くなっています。「製品に起因する事故」として、電気部品の絶縁性能が低下するなどの経年劣化による事故やリコール対象製品による事故などがありました。
1-4. 「製品に起因しない事故」の事象別の事故発生件数
エアコン及び扇風機の「製品の不具合以外による事故」の事象別事故件数を表1及び表2に示します。製品からの出火痕跡のない事故が多くを占めており、製品の周囲に置かれていた可燃物からの延焼が疑われる事故が含まれています。それ以外には、エアコンの誤った内部洗浄や電源コードを加工したり傷付けたりするなど、製品の取扱説明書や据付説明書で禁止されている行為をしたことによる事故が発生しています。
表1 エアコンの「製品に起因しない事故」の事象別件数
表2 扇風機の「製品に起因しない事故」の事象別件数
1-5. 事故の被害状況
エアコン及び扇風機の事故における被害状況別の事故件数を表3、表4に示します。製品が壊れるだけでなく、死亡事故などの人的な被害も発生しています。
表3 エアコンの被害状況別の事故件数(※6)
表4 扇風機の被害状況別の事故件数(※6)
(※6)()は被害者数。物的被害(製品破損または拡大被害)があった場合でも人的被害のあったものは、人的被害に区分している。また、人的被害(死亡・重傷・軽傷)が複数同時に発生している場合は、最も重篤な分類で事故件数をカウントし、重複カウントはしていない。
(※7)製品本体のみの被害(製品破損)にとどまらず、周囲の製品や建物などにも被害を及ぼすこと。
2. エアコン及び扇風機を使用する前に気を付けるポイント
〇異常がないか点検する。
製品の不具合による事故は、事故の予兆となる異常な症状がないかを点検することで防ぐことができる可能性があります。製品が正常に動作することを事前に確認しましょう。
以下のような異常が発生する場合は、直ちに使用を中止して(電源を切り)、電源プラグをコンセントから抜き、購入店または製造・輸入事業者の修理窓口に相談してください。
<エアコン点検のポイント>
☑ 室内機から水漏れする。
☑ 普段とは違った、異音・異臭がする(室内機及び室外機)。
☑ エラー表示が出る、運転が意図せず停止する。
<扇風機点検のポイント>
☑ スイッチを入れても羽根が回転しない。
☑ 電源コードに触れると急に羽根が回転する/回転が止まる。
☑ 羽根の回転が異常に遅い/不規則で安定しない。
☑ 羽根の回転時に異音/振動がある。
☑ 首振り動作が不規則/異音がする。
☑ モーター部分が異常に熱くなる/焦げ臭いにおいがする。
特に、製造から長期間経っている製品は、部品が劣化して火災のおそれがあります。2009年4月以降に製造または輸入されたエアコンや扇風機には設計上の標準使用期間が表示されていますので、買い替えの目安としてください。2009年4月より前に製造または輸入された古い製品や、設計上の標準使用期間を過ぎた製品を使い続ける場合は、異常がないか特に注視してください。少しでも異常が見られる場合は直ちに使用を中止し、製造事業者などの専門知識や資格を有する業者に点検を依頼するか、新しい製品に買い替えることをお勧めします。
また、エアコンについては、上記の異常の点検と併せて、室外機周辺の片付け、清掃もするようにしましょう。室外機の周囲に可燃物が置かれていると、可燃物が着火した際に室外機に燃え移り大きな火災に至るおそれがあります。他にも、ダンボールやごみなどを置いておくと、小動物や虫などのすみかとなり、製品内部に侵入して配線をかじったり、電源基板に接触したりすることによって短絡して発火するおそれもあります。可燃物を置かないように注意してください。
(※8)水が入ったペットボトルが凸レンズのように作用して、太陽光が一点に集まり、可燃物が発火すること。
〇エアコンの取り付け・取り外し・内部洗浄といった工事や作業は、販売店やメーカーに相談し、専門の知識や資格を有する業者に依頼する。
エアコンの取り付け・取り外し・内部洗浄といった工事や作業には、専門の知識が必要であり、中には資格が必要なものもあります。また、取扱説明書や据付説明書で禁止されている行為があり、特に以下の行為は重大な事故に至るリスクがありますので注意してください。
⚠電源コード・配線の加工
電源コードの継ぎ足し接続(ねじり接続)、内外連絡線を途中で接続するような加工は行わないでください。接続不良により、発煙・発火するおそれがあります。
また、エアコン専用に設置されているコンセントに電源プラグを差し込んでください。エアコンは大電流が流れる場合があるため、延長コードやテーブルタップなどを用いると異常発熱し、発煙・発火するおそれがあります。
電気工事は、有資格者(電気工事士)による実施が求められています。電源コードや電源プラグに不具合が生じた際は、必ず電気工事業の登録等をしている業者に相談するとともに、コンセントの移設などの電気工事は、電気工事士の資格を有した者によって行われるように依頼してください。
(参照:経済産業省 家庭用エアコンの設置・修理の工事について)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/koji_2.html
⚠エアコンの内部洗浄
エアコンの内部洗浄を行う際は、絶対に電源配線、電源基板などやファンモーターなどの電気部品に洗浄液がかからないよう十分に注意する必要があります。誤った方法で内部洗浄を行うと、洗浄液などが電源配線、電源基板などの電気部品に付着してトラッキング現象が生じ、発煙・発火するおそれがあります。
また、可燃性ガスを含む洗浄スプレーを噴射したために、製品内部に滞留した可燃性ガスに静電気等の火花が引火して出火に至ったケースもあります。
エアコンの内部洗浄は販売店やメーカーに相談し、専門の知識を有する業者に依頼するようにしてください。
〇使用している製品がリコール対象ではないか確認する。
エアコン及び扇風機のリコール対象製品による事故が発生しています。リコール開始から10年以上使用した後に発生した事例があり、長期間にわたり使用できている製品であってもリコール対象製品である場合があります。
事業者、消費者庁、経済産業省及びNITEなどはホームページでリコール情報を掲載しています。お持ちの製品がリコール対象製品かどうかを使用する前に確認してください。
リコール対象製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に確認や相談をしてください。また、事業者によっては古い製品の使用中止を呼びかけている場合もあります。
お持ちの製品がそれらの対象かどうかを事前に確認し、事故を未然に防ぎましょう。
【消費者庁のリコール情報検索サイトのご紹介】
消費者庁のリコール情報サイトにおいて、最新のリコール情報や、キーワードによるリコール情報の検索を行うことができます。
さらに、「リコール情報メールサービス」に登録することでリコール情報が提供されます。
https://www.recall.caa.go.jp/
【NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)のご紹介】
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html