豆乳を蜂蜜で固めたスイーツ「豆蜂(トーファン)」の開発で特許(第7220889号)を取得している武庫川女子大学食創造科学科の食品科学研究室(有井康博教授)が、食物アレルギーやえん下障害など食の制限を持つ人に向けた「豆蜂」の進化系スイーツを開発しました。植物由来の「プラントベース」スイーツのため、ベジタリアンやヴィーガンの人も安心して食べられます。
特許取得の「豆蜂(トーファン)」は豆乳と蜂蜜が主原料で、食物アレルギーの主な原因である卵、小麦、乳を含みません。また、ムース状で緩やかに飲み込めることから、えん下障害のある人にも安全(消費者庁が定めた許可基準を満たす)であることが特長です。ゼリーやフルーツで飾り付けた高級感あるスイーツとして商品化しています。
ただ、原料の淡路島産蜂蜜が希少であるため大量生産に適さないこと、柔らかくて形が崩れやすいこと、蜂蜜を使用すると乳児に与えられないことが難点でした。このため、凝固剤として、豆乳に添加すると蜂蜜の成分に変化するグルコノデルタラクトンを使用。水の添加量を最小限に抑えてタンパク質濃度を上げ、硬度を高めるよう工夫しました。また、甘味成分として、蜂蜜の代わりに上白糖、てんさい糖、さとうきび糖など種類の異なる砂糖を使用し、豆乳や水、砂糖の割合を変えて、9種の試作品で物性がどう変わるかを検証しました。
その結果、豆乳と蜂蜜で作るより、グルコノデルタラクトンと砂糖を使った方が形状は安定し、原価も抑えられるうえ、乳児にも安心なスイーツになりました。また、すべての物性は消費者庁ガイドラインに基づく、えん下困難者用食品の許可基準を満たしました。
試食アンケートでは「おいしい」との評価が多く、上白糖の代わりに未精製の砂糖であるてんさい糖やさとうきび糖を使用すると豆乳の味に対する感度が低下し、「豆乳嫌い」の人も食べやすくなることが分かりました。動物由来の成分が入らない未精製の砂糖を使うことで、ヴィーガン食としても使用が可能です。
有井康博教授は「食の制限を持つ人達の抱える課題に科学的にアプローチするとともに、入手しやすい原料などを用いて汎用性を高め、より多くの人のQOLの向上に役立つ食の提案をしていきたい」と話しており、家庭でも作れる調理方法も発信していく予定です。
本研究はJSPS科研費JP22K02191の助成を受けたものです。同研究室の神田美紗さん(2022年度卒)が卒業研究で取り組んだ内容を論文にまとめ、International Journal of Gastronomy and Food Science(オランダ)に掲載されました。
・論文のリンクはこちら
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1878450X23002019?via%3Dihub
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