東京工芸大学(学長:吉野弘章、以下本学)工学部工学科建築学系建築コース(所在地:神奈川県厚木市)の山村健准教授が、昨年6月~9月にかけて東京国立近代美術館で開催された「ガウディとサグラダ・ファミリア」展に企画アドバイザーおよび空間デザイナーとして参画。山村健准教授は建築家であるとともに、ガウディの研究者でもあり、自身の研究室「建築意匠Ⅰ研究室(以下、山村研究室)」の学生たちが制作したガウディの幾何学原理を示す5つの立体模型が、参考出品として展示された。会期終了後、山村准教授と学生らが同展に関する活動について振り返った。詳細は本学公式WEBサイト「コウゲイの学び」で公開している。
■学生が試行錯誤して制作、学び多き5つの模型
研究室の学生らは、サグラダ・ファミリア聖堂を構成する幾何学原理を示した5つの立体模型(単双曲線面模型・双曲線面模型・双曲線面ヴォールト模型・ラセン模型・錐状面模型)を制作した。
山村准教授は、これらは"どんな曲面も全て直線に分解できる"ということを直観的に理解してもらうための展示品だった、と述べる。「サグラダ・ファミリア聖堂をはじめとするガウディ建築は、一見すると非常に複雑そうに見えますが、原理はとても簡単です。ガウディは、形の発見を自然界から得ていたと言われていますが、その原理の根本には、線で分解できる幾何学があります。模型をみると、いずれの形も全て直線に分解できることに気づきます。ガウディは、こうした数々の立体幾何学原理を、図学を学んでいない職人とのコミュニケーションツールにしていました」。
模型の制作に際しては、作りたい模型の原理のみを学生に伝え、プロセスは伝えず、そこから考えるように課した。「学生たちはチームで試行錯誤しながら、2か月くらいかけて5つの模型を完成させました。自分たちで手を動かしたことで、様々な気づきがあったのではないかと思います」と、山村准教授は話す。
実際に模型制作に携わった学生たちに感想を聞くと、「材料選びが一番大変でした。展示を意識して模型を作るのも初めてで、良い経験になりました」「実際に模型を作ったことで、ガウディ建築への理解がより深まりました」「ガウディに触れ、設計には多角的な視点が必要だということを学びました」といった声が挙がった。
■建築家・ガウディ研究者としての空間デザインへのこだわり
さらに学生からは「山村准教授が手がけた展示、空間デザインに感動しました」という声もあった。山村准教授も、そこには相当なこだわりを詰めこんだと話る。「"展示品をネットワーク化して来館者が全体像を構築する展示構成"、簡単に言えば、順を追って展示を見ていくうちに、サグラダ・ファミリア聖堂を体感できる、全体像を理解できる、分かった気になって帰れる、そんな空間の作り方にこだわりました。例えば、展示室の一部に使用した『ガウディ・ブルー』は、カーペット、壁紙、什器と、それぞれの青のトーンをかえることで、ガウディが職人に伝えたとされる青の定義、"暁の地中海の青"を表現していたのです」。
東京国立近代美術館でのガウディ展は終わったが、まだまだやりたいことがあると山村准教授は言う。「ガウディの研究テーマは尽きません。ガウディと写真という観点で、東京工芸大学ならではの研究ができたらと、考えています。一人ではできませんので、企業の協力や学生のエネルギーを借りながら、実現していきたいですね」。
※所属・職名等は取材時のものです。
【コウゲイの学び記事:近代美術館「ガウディとサグラダファミリア展」を終えて】
https://www.t-kougei.ac.jp/manabi/engineering/85751.html
●東京工芸大学工学部工学科建築学系建築コース
少人数制の設計製図演習、充実した実験設備、そして教員と学生の距離の近さが最大の魅力。建築関連の基礎知識に加え、得意分野に合った専門知識を学ぶことで、建築の専門家を目指す。「建築」「構造」「環境」の3分野のデザインをバランスよく習得できる点も特徴。
https://www.t-kougei.ac.jp/admission/engineering/course/ac/
●東京工芸大学
東京工芸大学は1923(大正12)年に創立した「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、当初からテクノロジーとアートを融合した無限の可能性を追究し続けてきた。2023年に創立100周年を迎えた。【URL】
https://www.t-kougei.ac.jp/
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