2023年12月4日
東芝エネルギーシステムズ株式会社
株式会社 東芝
公益財団法人 電気科学技術奨励会「電気科学技術奨励賞」を受賞
東芝グループの、「国内初となる自然由来ガスを用いた環境調和型電力用 GIS の開発および実用化」、および「重粒子線治療向け回転ガントリー照射装置の X 線撮影装置の自動校正手法」の2件が、公益財団法人 電気科学技術奨励会の「電気科学技術奨励賞」を受賞し、11月30日に贈呈式が行われました。
「電気科学技術奨励賞受賞」は、日本の電気科学技術に貢献した功労者をたたえ、これを顕彰して対象者に贈呈されるものです。昭和27(1952)年に創設され、今年度23件、62名が授賞しました。
受賞者と功績概要
(1)国内初となる自然由来ガスを用いた環境調和型電力用 GIS の開発および実用化
東芝グループ内の受賞者
東芝エネルギーシステムズ株式会社 浜川崎工場開閉装置部エキスパート 向田 彰久
(本件は、東京電力パワーグリッド株式会社および株式会社明電舎それぞれの代表者との共同受賞です。)
功績概要
六フッ化硫黄ガス(SF6)は化学的に安定しており、かつ極めて高い絶縁性能や電流遮断性能を有することから、送変電機器の絶縁媒体として過去50年にわたり世界で使用されてきました。しかしながら、SF6はCO2と比べて20,000 倍以上の高い地球温暖化係数を有することから、近年その使用禁止に向けた法整備が欧州や米国の一部の州などで進められています。このような背景の中、送電線に異常が生じた場合に電流を遮断して他の電力機器への影響を防ぐための遮断器や、送電系統を切り換えるための断路器、過大な雷エネルギーから保護を行うための避雷器、電力潮流(電力系統内の有効電力および無効電力の流れの総称)を計測するための計器用変成器などから構成される設備であるガス絶縁開閉装置(GIS) 向けの絶縁媒体として、安全性が高く、漏えい時の環境影響がないドライエア(N2とO2の混合ガス)を採用しました。
今回、電気絶縁性能がSF6ガスの約3割しかないドライエアを採用するにあたり、機器の大形化を避けるため、高電圧がかかる金属導体表面への絶縁コーティングの採用、電力会社向けGISに求められる電流開閉性能に対応可能な開閉器構造への見直し等を行うことなどによって、経年 GISの設備更新需要に求められる機器サイズを実現しました。本器は各種センサ取付によるオンラインのデジタル機器診断にも対応し、設備保全のさらなる省力化にも寄与します。また、環境に対する優位性として、製造から廃棄に至るまでの生涯におけるCO2等価排出量(温室効果ガスの排出量を地球温暖化係数で重み付けしてCO2等価量に換算した値)をSF6ガス器に対して約70%削減できると見込んでいます。
本GISは2022年12月に東京電力パワーグリッド株式会社 府中変電所向けに国内初の電力用SF6フリーGISとして据付を完了し、2023年2月に運転が開始され、実用化しました。
(2)重粒子線治療向け回転ガントリー照射装置の X 線撮影装置の自動校正手法
東芝グループ内の受賞者
株式会社 東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 アナリティクスAIラボラトリー
エキスパート 坂田 幸辰
東芝エネルギーシステムズ株式会社 パワーシステム事業部 粒子線事業技術部 スペシャリスト岡屋 慶子
(本件は、量子科学技術研究開発機構の研究代表者との共同受賞です。)
功績概要
重粒子線治療装置を用いたがん治療において、重粒子線を腫瘍に正確に照射するには、正しく患者の位置決めを行う必要があります。患者の位置決めには、重粒子線治療装置に内蔵されているX線撮影装置で撮影した画像を使いますが、X線撮影装置は照射時にガントリーと同期して動くため、定期的にX線撮影装置の位置校正を実施する必要があります。
回転ガントリー照射装置は360度任意の角度から治療ビームを照射できるため、重要臓器を避けて照射する場合にも、患者を傾けるなどの負担がなくなります。その一方で、装置全体でX線撮影装置も同時に回転するため、角度ごとに校正が必要になり、校正の作業量が膨大となります。
本技術は、回転ガントリーの角度を変えながら校正用マーカーをX線撮影し、画像内のマーカー位置からそれぞれの角度のX線撮影装置の位置を自動計算します。量子科学技術研究開発機構QST病院の回転ガントリー照射装置で校正作業を大幅に省力化することを実証し、患者負担の低減を実現しました。本技術を用いた重粒子線治療装置は、山形大学向けの回転ガントリーですでに製品化されており、今後、韓国・延世大学病院向け、韓国・ソウル大学病院向けの照射装置でも順次展開を予定しています.
当社グループは経営方針に基づいた研究開発を進め、引き続き、日本の電気科学技術発展に貢献してまいります。
(1)の受賞者 向田
(2)の受賞者 岡屋(左)、坂田(右)