「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、日本の政府開発援助(ODA)実施機関として開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人国際協力機構(理事長:田中明彦、本部所在地:東京都千代田区、以下:JICA)は、3月下旬から4月中旬にかけ、ウクライナの農業政策・食料省(以下ウクライナ農業省)を通じ、ウクライナ北東部のハルキウ州の農家にヒマワリの種子約30トンとトウモロコシの種子約60トンを配布しました。
ハルキウ州はウクライナ有数のヒマワリ産地で、トウモロコシの生産も盛んです。2022年2月のロシア侵攻後一時ロシア軍の支配下にあったこともあり、激しい戦闘で大きな被害を受けました。
種子は3月下旬から4月上旬にかけて、国連食糧農業機関(FAO)の協力を得て、ウクライナ農業省からハルキウ州内の約400軒の農家に配布されました。4月は播種の季節であり、「農家にとって畑は生活のすべて」「種子の配布は、侵攻で大きく傷ついた農家の精神的な支えとなった」などの感謝の声が寄せられました。
JICAは、4月16日から22日に実施したウクライナ農業省高官の招へいと今回の種子の協力を皮切りに、ウクライナの主要産業である農業の復旧・復興に向けた協力を順次展開していく予定です。
【供与品目】
ウクライナ産ヒマワリ種子:4.8億粒(約150,000粒×3,200袋、約30トン)
ウクライナ産トウモロコシ種子:2.16億粒(約80,000粒×2,700袋、約60トン)
(総額1.66億円相当。農家400軒分の作付面積10,000ha分程度)
【ハルキウ州概要】
ハルキウ州はウクライナの北東部に位置し、ロシアと国境を接しています。2022年2月にウクライナ侵攻が開始された際、ロシア軍の 主戦場の1つとなり、一時占拠されました。激しい戦闘に見舞われましたが、ウクライナ国防省系メディアは同年9月、ハルキウ州の大部分を奪還したと発表しています。
【ハルキウ州における農業被害と、ヒマワリ油、トウモロコシ減産の影響】
世界銀行が2022年8月に公表したRAPID DAMAGE AND NEEDS ASSESSMENTによると、ロシアによるウクライナ侵攻による農業被害総額は約305億米ドルと推定され、ハルキウ州は国内で3番目に被害の大きい州です。
ロシア侵攻以前、ウクライナ産のヒマワリ油の流通量は世界一(約50%)で、中でもハルキウ州は国内有数のヒマワリの産地でした。またトウモロコシは世界の流通量の16%をウクライナ産が占めていました(世界4位)。ハルキウ州のヒマワリの作付面積は侵攻前後で575,000haから250,000haに、トウモロコシは287,000haから136,000haと半減以下となっています。ウクライナのヒマワリの減産は油製品の世界的な価格高騰につながっており、飼料需要が高いトウモロコシの減産は畜産業にも影響を与えています。
■独立行政法人国際協力機構(JICA)について
JICAは、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関で、150以上の国と地域で事業を展開しています。
国際社会の課題は日本とも密接に関係しています。国内外のパートナーと協力してそれらの解決に取り組み、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献します。
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