議決権行使シーズンの注目点

年に一度の株主総会での議決権行使はどのように行われているのでしょうか?このレポートでは、株主総会での議決権行使の事例をご紹介します。

議決権行使は、投資家が会社の経営に影響を与える最も重要な方法の1つです。

毎年、アクティビストを含む株主は、企業の株主総会で、気候変動や人権、データ・プライバシーなどに関する決議を提出します。資産運用会社は、顧客の最善の利益のために投票することに対し責任を負っています。

サステナブル投資チームのグローバル・ヘッドであるアンドリュー・ハワードは、次のように説明しています。「私たちは、議決権行使の責任を非常に重く受け止めています。すべての決議案は、特定の企業に対する具体的な質問であり、私たちは独自の企業調査を通じて評価します。私たちは、決議を、ある問題に対する私たちの一般的なスタンスの表明として扱うことはできません。詳細が重要なのです」。

当社のエンゲージメント・ブループリントは、株主決議へのアプローチを含む、アクティブ・オーナーシップに関する当社の指針を定めています。

アップル社の男女賃金格差報告について
アップルは、3月10日(金)に年次総会を開催しました。5つの株主提案があり、そのうちの1つは、性別と人種の賃金格差に関するものです。この提案は、「人種や性別による給与格差の中央値について、関連する政策、風評、競争、運営上のリスク、多様な人材の採用と維持に関連するリスクを含めて報告する」ことを求めています。

アップルは現在、例えば同様の役職の男女間や同様の学歴レベルの男女間など、統計的に調整された給与格差を報告しています。未調整の給与格差の中央値の報告には、これらの要因が反映されておらず、提案者は、未調整の指標の方が女性やマイノリティが経験する実際の給与格差をよりよく捉えていると主張しています。

本提案を検討した結果、以下の分析に基づき、賛成に投票することを決定しました。

・本決議案は、当社のブループリントに合致しているか?:はい。「ダイバーシティ&インクルージョン」は私たちの優先テーマの一つであり、その中で私たちは企業に性別や民族間の賃金格差情報を開示するよう求めています。多面的な多様性は、貴重な視野と意見をもたらし、包括的な文化と組み合わさることで、より質の高い仕事、より良い意思決定と問題解決、そしてチームの満足度を高めることにつながります。

・決議案は、その問題に対処するための最良の方法か?:はい。私たちは、この問題に関してエンゲージメントを実施しており、決議案への支持を表明することで、この件に関する私たちのエンゲージメント活動を支援できると考えています。

・決議案は、同社がすでに行っていることに付加価値を与えるものか?:はい。性別や民族間の賃金格差に関する透明性が向上すれば、同社が多様性の目標に対してどのように進んでいるかをよりよく理解することができ、投資家に対してより比較可能なデータを提供し、同社が多様な労働力のメリットを享受するためにどのように自らを位置づけているかをより深く理解することができます。

・本決議案は、意図しない有害な結果を引き起こす可能性があるか?:いいえ。同社はすでに給与格差の指標を開示しているため、これが意図しない損害をもたらすことはないと考えています。

アプライドマテリアルズ社の臨時株主総会の招集に対する閾値について
米国に本社を置く半導体およびディスプレイ装置メーカーであるアプライドマテリアルズは、3月9日(木)に年次株主総会を開催しました。株主は、取締役会に対し、「同社の発行済み普通株式の合計10%の所有者に臨時株主総会を招集する権限を与えるべく、適切な会社統治文書を修正するために必要な措置を講じること」を求めています。

同社は、臨時株主総会を招集するための閾値を20%に設定しています。提案者は、この基準値を10%に引き下げることで、株主は総会以外で行動を起こすことが容易になり、また、同社の現在の書面による同意の形式は、株主にとって障壁が多すぎると主張しています。

本提案を検討した結果、以下の分析に基づき、賛成に投票することを決定しました。

・本決議案は、当社のブループリントに合致しているか?:はい。株主との関係性は、当社のブループリントの優先テーマである「ガバナンス」に該当し、その中で当社は、年次総会だけでなく、年間を通じてオープンな対話を維持することを企業に求めています。私たちは、企業が株主やその他の主要なステークホルダーの最善の利益のために行動し、長期的で持続可能な価値創造を推進するためには、強力なガバナンス方針と実践が不可欠であると信じています。

・決議案は、その問題に対処するための最良の方法か?:はい。本決議案に賛成することが、経営陣にこの問題を提起する最善の方法だと考えています。

・決議案は、同社がすでに行っていることに付加価値を与えるものか?:はい。発行済普通株式の10%という基準は、同社の既存の書面による同意の形式よりも好ましく、経営陣が株主に対して説明責任を果たすのに役立つと考えています。

・本決議案は、意図しない有害な結果を引き起こす可能性があるか?:いいえ。株主が会社と継続的に対話することは、株主の権利の重要な要素であり、10%という基準値は合理的で、株主がその権利を乱用して日々の経営を混乱させるリスクはないと考えています。

当社の議決権行使の考え方
シュローダーのアクティブ・オーナーシップ・アプローチの中核をなすのは、社会を再構築する環境・社会的な力と、それが企業に与える影響です。年間を通じて、企業が直面する長期的な課題に備えているかどうか、またどのように備えているかを理解し、企業が長期的な見通しを強化し、株主に対してより質の高いリターンを生み出すために、変化が必要な場合には行動を起こすよう働きかけています。

私たちが株主として声を上げるもう一つの方法は、企業の年次総会での投票です。これは、私たちが変化をもたらすのに役立ち、エンゲージメントがうまくいかない場合に私たちの懸念をエスカレートさせる方法の一つです。

ESG関連の決議案は、近年、量的にも質的にも増加しており、この傾向は今年も続くと思われます。これらの決議案を評価するためには、企業、セクター、決議案の採択がもたらす潜在的な影響について詳細に理解する必要があります。私たちのエンゲージメント・ブループリントは、投資リスクに対して特に重要な意味を持つ可能性があると私たちが考える問題についての見解をまとめたものです。私たちは、議決権行使に対するアプローチを、私たちの広範なアクティブ・オーナーシップの優先事項と一致させることを目指します。私たちは、関連する要素を考慮した上で、そうすることが株主とお客様の最善の利益につながると考える場合には、取締役会の提案に反対し、株主決議を支持します。

ブループリントでは、4つの主要な質問に基づいて株主総会決議を評価するプロセスを概説しています。
・決議案は、当社のブループリントに合致しているか?:ブループリントで取り上げている6つのテーマ別優先事項の中で私たちが概説している期待に、決議が合致しているかどうかを検討します。

・決議案は、その問題に対処するための最良の方法か?:私たちは、企業を細かく管理するのではなく、対話、エンゲージメント、議決権行使を通じて、監督と指導を行うことを意図しています。さらに、例えば政府による規制など、他の関連するステークホルダーがその問題に対処するのに適しているかどうかを検討します。

・決議案は、企業がすでに行っていることに付加価値を与えるものか?:これには、企業がどのようにリスクを特定し管理しているかをよりよく理解するための透明性の向上、方針と慣行が効果的に実施されているという安心感の提供、論争の解決と予防のための管理システムの強化、企業がESGベストプラクティスに向かうことを奨励すること等が該当します。

・決議案は、意図しない有害な結果を引き起こす可能性があるか?:これは、コスト、セクター、地理、経済情勢など様々な状況要因を考慮し、その提案が実施された場合、企業のステークホルダーに重大なレベルの意図しない結果を引き起こす可能性があるかどうかを検討します。

【本資料に関するご留意事項】
  • 本資料は、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッド(以下、「作成者」といいます。)が作成した資料を、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が和訳および編集したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。英語原文と本資料の内容に相違がある場合には、原文が優先します。
  • 本資料に示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。
  • 本資料は、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、弊社はその内容の正確性あるいは完全性について、これを保証するものではありません。
  • 本資料中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。
  • 本資料中に個別銘柄についての言及がある場合は例示を目的とするものであり、当該個別銘柄等の購入、売却などいかなる投資推奨を目的とするものではありません。また当該銘柄の株価の上昇または下落等を示唆するものでもありません。
  • 本資料に記載された予測値は、様々な仮定を元にした統計モデルにより導出された結果です。予測値は将来の経済や市場の要因に関する高い不確実性により変動し、将来の投資成果に影響を与える可能性があります。これらの予測値は、本資料使用時点における情報提供を目的とするものです。今後、経済や市場の状況が変化するのに伴い、予測値の前提となっている仮定が変わり、その結果予測値が大きく変動する場合があります。シュローダーは予測値、前提となる仮定、経済および市場状況の変化、予測モデルその他に関する変更や更新について情報提供を行う義務を有しません。
  • 本資料中に含まれる第三者機関提供のデータは、データ提供者の同意なく再製、抽出、あるいは使用することが禁じられている場合があります。第三者機関提供データはいかなる保証も提供いたしません。第三者提供データに関して、本資料の作成者あるいは提供者はいかなる責任を負うものではありません。
  • シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。
  • 本資料を弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。

この企業の関連リリース

この企業の情報

組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

検索

人気の記事

カテゴリ

アクセスランキング

  • 週間
  • 月間
  • 機能と特徴
  • Twitter
  • デジタルPR研究所