メタバース利用で「素直な言葉を引き出す」美容医療カウンセリングの質向上にも寄与!? 美容医療のパイオニア医師が期待する「美容医療×メタバース」の可能性

~バーチャル領域で展開される「メタ・クリニック」もすでに登場~

 昨今急速に注目が集まっている「メタバース」。仮想空間でアバターを操作し他者と交流したり、仮想空間上で商品購入をできるようにするなどの試験的なサービスも行われています。技術の進展とサービス開発により、メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想され※1、10年で約20倍の成長が見込める新たな領域です。またGoogleでの検索数は、世界全体で約5倍※2に増加。Microsoft社やEpic Games社などの世界的なテクノロジーやゲーム会社がこの分野に数十億ドルの投資を発表し、旧Facebook社は社名を「Meta」に変更するといった動きもあるなど、今後より一層私たちの生活に身近な存在へと変化していく期待が寄せられています。実は医療業界ではメタバースの活用は進んでおり、美容医療業界ではバーチャル領域で顧客と対話する「メタ・クリニック」がすでに存在しています。「現実」の自身の姿を磨くものであるための“美”と、「仮想空間」である“メタバース”は対極の存在に感じられますが、現在どのように使用されているのか、また、美容医療業界において今後どのような広がりをみせる可能性があるのかについて、自由が丘クリニック理事長の古山 登隆先生に伺いました。

参考文献
「FUTURE of AESTHETICS 2022」 - Allergan Aesthetics an AbbVie company
https://allergan-web-cdn-prod.azureedge.net/allerganjapan/allerganjapan/media/allergan-japan/products/allergen_all.pdf 
※1 
出典:「令和4年版情報通信白書」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd236a00.html 
※2 
Google Trends, “Metaverse word search”, October 4, 2020 – October 2, 2021. Accessed February 28, 2022

■医療分野でも始まるメタバースの活用3事例
 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、2020年から日本でもオンライン診療が普及し、医療業界とオンライン空間の組み合わせは急速になじみ深いものとなりました。そうした影響もあってか、美容医療に限らず医療業界全体で、メタバースを利用した以下のような取り組みが散見されるようになっています。

(1)カウンセリングや座談会
 医療分野でも、メタバースを利用した取り組みが増えつつあります。例えば、メタバースを利用した医療相談で悩みを聞いたり、受診前相談を受けたりといった、医療行為の前段階として利用されるケース。さらに、患者会などの交流会がメタバース上で開催されることもあり、入院中やリハビリ中などで移動が難しい患者さん同士や、患者さんとその家族の交流にメタバースを使おうという計画が出るなど、コミュニケーションの場として利用を目指すケースが見られます。

(2)認知行動療法やトレーニング
 コミュニケーションを主とした治療や患者さんのトレーニングを、メタバース上で行う動きもあります。うつ病治療の認知行動療法や、発達障害の方のソーシャルスキルトレーニング(社会適応や職場復帰のための訓練)などをVRサービスとして提供する企業もあるようです。また、このようなVRを用いた医療行為は保健適応を目指そうとする動きも始まるなど、新しい流れが生まれているのがうかがえます。

(3)医師の研修
 スキャンデータによる3Dモデリング技術やXR技術などを活用した、メタバース上での遠隔医療教育の実証実験も行われ始めています。メタバース上に患者さんの体をスキャンして作成した3D データをおき、それをVR ゴーグルとコントローラーを用いて操作して、最先端の治療法のトレーニングをしたり、数が少なく珍しい症例の術式を学んだりするというもの。質疑応答やディスカッションなども含めメタバース上で行われており、今後はこうした動きが加速していくかもしれません。

■メタバースは美容医療にどう活用されていくの?
 メタバースは、美容医療の分野でも活用されていくことが期待されています。活用の場面は「患者視点」と「医療者視点」の2つに分かれます。

(1)患者さんとのコミュニケーションの場
 先述の通り、バーチャル空間で医師やカウンセラーと患者さんとが交流したり、受診前の相談をしたりすることは、美容医療の分野でも、患者さんと医療者の両方にメリットをもたらすと考えられます。そのカギを握るのは、アバターの存在。メタバースでは、利用者同士はアバターと呼ばれる、自分の分身のようなキャラクターを使いますが、これにより対面では伝えにくいことも素直に言葉にしやすくなるため、コミュニケーションが進み、スムーズなカウンセリングにつながると大いに期待されています。
さらに将来的には、施術情報の提供だけでなく、独自のデジタルクローンをメタバース上にアップロードして、施術の結果をよりリアルに体験できるような日がくるかもしれません。

(2)医療者同士のコミュニケーション深度を高める
 メタバースでの会議や集まりは、VRゴーグルなどを用いることで周囲の雑音や情報が遮断されるため、メタバース上の出来事に集中できて、従来のオンライン会議よりも充実したコミュニケーションを図りやすいといわれています。このように、実際には別々の場所にいても、まるで同じ部屋にいるかのように会話をしたり、体験を共有できたりできるのがメタバース。この大きな特徴を活用し、美容医療に携わる医療従事者が世界中で密なコミュニケーションがはかれるようにもなり、医療技術の進歩のスピードがもっと早くなる可能性も考えられます。

(3)メタバースならではの新しいツールの採用も
 メタバースとは直接関係ありませんが、例えば、メタバース上で施術を予約し、その支払いを暗号通貨で……というように、新しい支払い手段が採用されることもあるでしょう。実際、海外では、すでにこのような支払い方法が可能なクリニックもあるそうです。そのほか、まったく新しい予約ツールができるなど、メタバースと関連した新しいツールが生まれたり、使われるようになったりすることも期待できます。

■メタバースが美容医療の未来を変える…!?
 美容医療におけるメタバースの活用について、日本の美容医療のパイオニアである自由が丘クリニック 理事長 古山登隆先生にお話を伺いました。

「現在のメタバースは進行途中で、これが実際の美容医療に応用できるようになるには、まだまだ時間がかかるだろうと思っています。
しかし、医師同士の会合や、ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入のトレーニングなど、すでにメタバース上で始めていることもいくつかあります。医師のトレーニングについては、今後もっと技術が進歩し、精度が上がってくれば、利用価値がさらに高まってくるでしょう。また『ここにヒアルロン酸をこれくらい入れたら、こう変わってくる』といったリアルなシミュレーションができるようになると、患者さんへのカウンセリングにも生かせるようになるかもしれません」

今後の期待ついて古山先生によると、
「あと医師と患者さん、または患者さん同士でのコミュニケーションの場としては、メタバースは有用だと考えています。アバターを使うことで互いに本音が言いやすくなるので、活発なコミュニケーションが今後メタバース上で行われていくことでしょう。
ただし、これらをどう利用するのかは結局のところ、各医師の裁量にかかっていると私は思います。技術がどれだけ進歩しようと、美しさと患者さんの個性とをどう兼ね備えてゴールを設定していくかが重要ということは、メタバースにおいても変わらないのではないでしょうか。技術の進歩だけでなく、医師がそれをどう使いこなせるかも重要なポイントといえるでしょう。」

■これからの美容医療でのメタバースの広がり
 これから先、デジタルとリアルな世界の間を自由に行き来する時代がくるかもしれません。ゲームなどの分野ではすでに、メタバースへの進出がどんどん進んでいるように、美容医療の分野でもメタバースの活用は必須になってくるでしょう。そのための技術の準備はすでに整っています。今後、美容医療の分野ではそうした動きがどのように広がっていくのか、ぜひ注目していきましょう。

取材協力

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑
形成外科・美容外科 古山 登隆(ふるやま のぶたか)



医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック
住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

アラガン・ジャパン株式会社について
アラガン・ジャパン株式会社は、アッヴィグループのアラガン・エステティックスとして、先進の美容医療を牽引する製品およびブランドを開発・製造し、販売しています。私たちの美容医療領域は、ボツリヌス治療やヒアルロン酸注入治療、脂肪冷却による部分痩せ治療、乳房再建関連製品等を中心に多岐に渡っています。
私たちは、イノベーション、教育、優れたサービスを一貫して、顧客の皆様のニーズに沿って提供することを目指しています。

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組織名
アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス
ホームページ
https://www.allerganaesthetics.jp/
代表者
スザナ・ ムルテイラ
上場
非上場
所在地
〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS

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