時系列でオペレーターの疲労を分析。定時終業時間に近づくにつれて作業のバラツキが増加
作業負荷を7項目/10段階で評価・検証
3月8日は国際女性デー。働き方の選択肢を増やすことで、多様な人財が活躍する会社を目指す当社でも、それぞれの職場でダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けた取り組みが進められています。もちろん、製造・生産現場も例外ではありません。
「2年間の改善活動で、女性や高齢者のオペレーターが担う領域が大きく拡がりました」――。こう話すのは、当社磐田南工場の船外機部品組立ラインで活躍する大石かのこさんです。職場の女性リーダーと協力し合い、二人三脚で「身体への負荷を数値化するエルゴノミクス(人間工学)の手法」を用いた環境改善に取り組んできました。
大石さんらが改善の基軸としたエルゴノミクスの評価手法は、作業における運動部位の7項目(首・肩・腰・膝・肘・手首・指の動き)に対し、その負荷の大きさを測定して10段階で評価するというものです。たとえば棚から部品をピッキングする動作では、肘の角度160度(Lv.7)・首35度(Lv.7)・手首20度(Lv.3)というように身体への負荷を数値化し、同じ作業における男女オペレーターの差異等を検証・検討しました。
作業の手元化や自動化、角度変更などの改善が進められ、従来は男性のみが担当していた工程にも、女性や高齢者の比率が増えた
女性や高齢者が活躍する領域を拡大
一つのラインに対して、評価の対象となったのはじつに7,000項目。浮かび上がった課題に対しては、棚の角度を変更する、治具の位置を調整するといったように、作業の手元化や自動化など細かく丁寧な改善が加えられました。この結果、以前は働き盛りの男性だけが担っていた工程に、たくさんの女性や高齢者も加わるようになっています。
「以前は夕方が近づくと疲労を感じ、木・金曜日あたりにはその傾向がますます強まる印象でした。その結果、生産性のバラツキなどにも影響を及ぼしていました」と大石さん。エルゴノミクスを用いた評価と解析は、感覚的な負荷を可視化するとともに、疲労要因の特定や疲労感に対する職場の理解共有にもつながっているそうです。
世界的な感染症の拡がりやサプライチェーンの混乱等に起因して、この数年、各生産現場は変化・変動への対応力が問われてきました。そうした観点でも、「誰もが働くことができ、補い合える環境づくり」は、現場の対応力を高めることにもつながっています。
「できることが増えるのは、モノづくりに関わる者として純粋に嬉しいですし、生産性の向上や、間接的には働く人びとの私生活の充実にも貢献できたと思います」と大石さん。入社以来9年間、組立職場で活躍してきた彼女は、この春、より男性比率の高い加工職場に異動し、そこでもエルゴノミクスによる職場環境の改善にチャレンジすることになっています。
組立職場にエルゴノミクスによる改善をもたらした大石さん。春からは、より身体的負担の大きい加工職場で改善に取り組む
■広報担当者より
これまで男性だけが担ってきた身体的負荷の高い工程を改善し、自らもそのラインに立つ大石さん。「働く皆さんの役に立てることが嬉しいですし、自分のできる領域が拡がるのも楽しい」と、そのモチベーションを話してくれました。