シュローダー 2023年市場見通し:エマージング市場

エマージング諸国の経済成長は2023年に減速するように見受けられますが、株式市場の支援材料となる可能性がある4つの要素があります。
  • 世界的な需要の鈍化、コモディティ価格の軟調な見通し、政策の引き締め等を背景に、2023年の経済成長は減速する可能性が高いとみています。
  • 2024年は、インフレの緩和により景気が回復する可能性があるとみています。
  • 2023年のエマージング株式市場は、中国のゼロコロナ政策からの脱却、世界的な物価上昇ペースの鈍化、米ドルの安定化または下落、魅力的な株価水準、が支援材料になる可能性があるとみています。
エマージング諸国経済
デビッド・リース シニア・エマージング・マーケット・エコノミスト

2023年にエマージング諸国の経済成長が鈍化すると考える理由は少なくとも3つあります。

第一に、米国がユーロ圏と英国に続いて景気後退に陥る可能性があり、世界の需要が鈍化する可能性が高いことが挙げられます。特に、輸出が経済成長に大きな影響を及ぼすアジアや中東欧、メキシコ等の小規模で開放的な経済の国にとっては脅威となります。

第二に、中国における経済活動の再開が天然資源に対する需要を下支えする可能性がある一方で、世界の経済成長鈍化がコモディティ価格の重しとなる可能性があることが挙げられます。このことは、少なくともコモディティを輸出しているエマージング諸国では、一般的に成長のドライバーでもある交易条件の改善が見込めないことを示しています。そして、このドライバーが逆転するリスクもあります。

第三に、国内における経済政策の引き締めがますます経済成長の重しとなる可能性があることが挙げられます。政府は新型コロナウイルスの感染拡大で受けた財政的なダメージを修復しようとしているため、財政政策は概して緊縮傾向にあり、過去の大幅な利上げが需要を減退させるとみています。国際収支の悪化により、世界的な金融引き締めが続けば、アジアと中東欧の一部でさらなる利上げが必要になるかもしれません。

一方、良いニュースとしては、欧州の物価上昇率がピークに近づいており、2023年には低下し始めると思われます。2022年にロシアがウクライナに侵攻した後のコモディティ価格急騰の影響は緩和され始めると考えており、政策の引き締めと経済成長の鈍化が物価上昇の重しとなるとみています。

物価上昇が緩和されれば、実質所得への圧力が緩和され、特にラテンアメリカ諸国を中心に一部の中央銀行が2023年後半に金利を引き下げ始め、2024年に向けて景気が回復し始めるとみています。

エマージング株式
トム・ウィルソン エマージング株式ヘッド
2023年のエマージング株式市場には、支援材料となる可能性がある4つの要素があります。

中国の経済回復の可能性
中国において循環的な景気回復が見られる可能性があります。中国経済にとって、ゼロコロナ政策と不動産セクターが重しとなってきました。特に前者は経済活動に影響を与え、支援策の効果を限定的なものにしています。中国は現在、新型コロナウイルスを管理するためのエンデミックなアプローチに移行しており、新しいワクチンがワクチン普及の推進力となっています。エンデミックな状態への移行は不安定な状況を引き起こす可能性はありますが、マクロ経済に対する圧力が持続するリスクは大幅に軽減されます。

不動産セクターについては、以前に行われた政策の引き締めとデベロッパーの負債に対する規制強化が相まって、2022年に危機と顕著な販売不振を招きました。これを回復させることは容易ではありませんが、当局は段階的に支援策を実施しています。

一方、マイナス材料は払拭されていません。世界の経済成長が2023年の輸出の重しとなる可能性があることに加え、新型コロナウイルスへのエンデミックな対策への移行により集団免疫が達成されることになれば出口の波が来る可能性があります。しかし、消費と不動産市場は現在低迷しており、ゼロコロナ政策からの脱却が、経済回復に対する確信度を高めています。

物価上昇ペースの鈍化がドル安を促進する可能性
2023年は、世界的に物価上昇ペースが鈍化するとみています。エマージング諸国の金利上昇は、物価上昇ペースの鈍化や実質金利(もしくはインフレ調整後利回り)の改善につながり、これらのことはエマージング諸国通貨にとって大きな支援材料となります。米ドルの実質実効為替レート(他の複数の通貨の加重平均と比較し計算した数値)は、過去の水準から見て割高な水準にあり、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価上昇を適切に抑えこめているとの確信が高まり、また、FRBが物価上昇がピークに達したと判断すれば米ドルが下落する可能性があるとみています。米ドルが下落すれば、エマージング諸国通貨は回復し、エマージング諸国の中央銀行と財政状況への圧力の緩和に寄与するとみています。

株価水準は相対的に魅力的
2023年の世界経済の成長見通しは軟調であり、物価上昇と金利の見通しは不透明となっています。しかし、株価水準はより厳しい業績見通しを織り込んだものとなっており、不確実性と短期的な業績への重しは、投資機会の創出につながるとみています。過去の水準からみて株価は魅力的な水準にあるとみており、エマージング諸国通貨の回復は米ドルで投資している投資家のリターンの改善につながると考えます。

今後数カ月は投資機会が生まれる可能性が
2023年の経済見通しは軟調かつ不透明であり、当面は変動の大きい相場環境が続く可能性があります。米中間の地政学的緊張感等の多くのリスクが残っているものの、市場は先を見据えています。株価水準は改善し、業績予想はリセットされ、通貨は魅力的な水準になっています。2023年には金融サイクルのピークが訪れ、2024年には経済状況が好転する可能性があります。足元市場は反発しましたが、投資家は今後数か月間、投資機会を探し続ける必要があると考えます。

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組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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