~2022年11月15日、世界人口が80億人に~ アフリカで拡大する食料危機改善のため食料安全保障の強化に向けた支援を展開

~2030年までに約2.5億人分の必要エネルギーの食料生産と27万人の栄養改善、2025年までに20万人の農業人材の育成を目指す~

「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、日本の政府開発援助(ODA)実施機関として開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人国際協力機構(理事長:田中明彦、本部所在地:東京都千代田区、以下:JICA)は、アフリカで拡大する食料危機に対して、緊急支援とともに中長期的視点からの協力を展開しています。

国連の推計によると、2022年11月15日に世界人口が80億人に達する見込みです(注1)。人口増加率が高く栄養不足人口が特に多いアフリカ地域は、ウクライナ侵攻等による食料・肥料価格の高騰、気候変動の影響により深刻な食料危機に直面しており、「人間の安全保障」が脅かされています。JICAでは食料安全保障の4つの視点(Food Availability、Food Access、Food Utilization、Food Stability)に応えるため、1.食料生産(Availability)、2.農家の育成・民間農業開発(Access)、3.栄養改善(Utilization)、4.気候変動対策(Stability)に対する支援を展開し、(1)2030年までに約2.5億人分の必要エネルギー(相当)の食料生産と27万人の栄養改善、(2)2025年までに20万人の農業人材の育成への貢献を目指しています。

食料生産 Food Availability
JICAは食料作物の生産に対して緊急、中・長期の両面から支援を展開しています。緊急支援では、食料作物の生産に必要な肥料や優良種子に対する支援を行っています。具体的には、危機に直面するアフリカの小規模農家によるメイズ(トウモロコシ)、コムギ、キャッサバ、コメなどの食料作物生産を支援するため、アフリカ開発銀行と連携して、ナイジェリア、コートジボワール、タンザニアの3か国に対して計400億円に及ぶ肥料や優良種子に対する支援を進めています。また中・長期支援では、栽培環境が適しており収穫後に日持ちすること、調理のしやすさなどから、アフリカで消費量が拡大し続けているコメに対して日本の栽培技術を応用した技術支援などを展開しています。

CARD(カード)(アフリカ稲作振興のための共同体)(注2) Coalition for African Rice Development
 2008年の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で、アフリカのコメ生産倍増(2018年:2,800万トン)を目指すイニシアティブとして発足しました。倍増の目標は達成しましたが、依然アフリカではコメの需要が伸び続けていることから、2019年に更なる倍増(2030年:5,600万トン)を目指し、フェーズ2をスタートしました。JICAは、アフリカ32か国を対象に、他の18機関とともに単収の向上、生産面積の拡大、バリューチェーンの構築等を支援しています。


<代表的なCARD案件>
〇ウガンダ国コメ振興プロジェクトフェーズ2(PRiDe2)
優秀な農民に独自の称号を与え、稲作技術普及を進めています。

農家の育成・民間農業開発 Food Access
世界的な食料危機に対し、JICAは農家の意識改革を通じて農民自身が自ら判断し、行動できるようになること、すなわち「考える農家」の育成により様々なリスクに対応できる能力を高めることが大切だと考え、SHEP(市場志向型農業振興アプローチ)を推進しています。また、食料安全保障の強化に向けて民間企業との連携事業を推進しており、アフリカ進出に意欲のある本邦企業の進出を後押ししています。

SHEP(シェップ)(市場志向型農業振興アプローチ)(注3) Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion
 「自ら考え実践する農家」の育成に取り組んでおり、現在はアフリカ30か国で協力を展開しています。「作ってから売り先を探す」ことが当たり前だった小規模農家が、収穫時期や品質・形状により市場価格が変動することを知ることで、主体的な営農計画を立てられるようになります。さらに、バイヤーとの交渉能力、収支計算能力を身に着け実践することで「売れるものを作れる」ようになる、ビジネスとしての農業を推進するアプローチです。2006年に開始したケニアでは、わずか2年で2,500世帯の小規模農家の収入が倍増しました。


<代表的なSHEP案件>
〇マラウイ「市場志向型小規模園芸農業推進プロジェクト」
市場調査で、野菜の需要や価格が変わることを学んでいます。

AFICAT(アフィカット)(日・アフリカ農業イノベーションセンター)(注4) Africa Field Innovation Center for Agricultural Technology
 農業機械化を中心に、アフリカでビジネス展開を検討している本邦の農業関連企業の進出やビジネス促進を支援しています。民間企業の関心が高いタンザニア、ケニア、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリアの5か国で、2022年3月からパイロット事業を開始しています。現在10数社から、アフリカ進出に係る相談を受けており、現地でのデモンストレーションや具体的な事業実施、その準備に向けた各国政府との調整を支援しています。


<AFICAT活動事例>
〇タンザニアの農業機械デモ。製品を操作してもらいました。

栄養改善 Food Utilization
JICAは国際的なイニシアティブであるIFNAの推進を通じてアフリカの栄養改善を支援しています。健康的な暮らしには適切な栄養の摂取が不可欠ですが、元来アフリカの栄養不足人口は多く、2019年は2.5億人いると推計され、2030年には4.3億人を超えると予測されています。またCOVID19やウクライナ侵攻によって、更なる悪化が懸念されています。

IFNA(イフナ)(食と栄養のアフリカイニシアティブ)(注5) Initiative for Food and Nutrition Security in Africa
 2016年のTICAD VIで立ち上げた、食と農業を通じて栄養改善を推進するイニシアティブで、現在JICAを含む10機関が支援しています。JICAは政策レベルでの栄養改善の普及、地域社会や個人に向けた啓発活動を通じ、行動変容を進めています。農業に限らず母子保健や水衛生改善など、幅広い取組を展開しています(注6)。
 JICAは2021年12月開催の「東京栄養サミット」で、栄養改善にかかる基本的な考え方や取り組みを示した「JICA栄養宣言:栄養をすべての人々へ-人間の安全保障のための10箇条の約束-(注7)」を発表しました。


<代表的なIFNA案件>
〇ナイジェリア「連邦首都区における栄養改善向上プロジェクト」
研修に夫婦で参加し、意識改革や行動変容を促しています。

気候変動対策 Food Stability
JICAでは渇水や豪雨など、近年の異常気象に備えた水資源の効率的な利活用に取り組んでいます。また自然災害に脆弱な小規模農家への支援として、農業保険普及の支援や耐候性品種の導入を進めるなど、サービスや営農技術の改善にも取り組んでいます。アフリカでは農業に必要な水を降雨に依存している国が多いことから、これらの水のコントロールは極めて重要です。


<代表的な気候変動対策案件>
〇ザンビア「地域密着型灌漑開発の展開プロジェクト」
丸太などの自然素材を使って簡易水路を掘り、小河川や湿地帯の水を活用して安定的な農業生産を目指すプロジェクト。わずか4年間で961ヘクタールの新規灌漑開発を達成し、13,745世帯が栽培面積の拡大に成功。農家の着実な収入向上につなげています。

(注1)世界人口は2022年11月15日に80億人に達する見込み(2022年7月11日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp)
https://www.unic.or.jp/news_press/info/44737/
(注2)アフリカ稲作振興のための共同体(CARD) | 事業・プロジェクト - JICA
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/card.html
(注3) SHEP(市場志向型農業振興)アプローチ | 事業・プロジェクト - JICA
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/shep/index.html
(注4)日・アフリカ農業イノベーションセンター(AFICAT) | 事業・プロジェクト - JICA
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/aficat/index.html
(注5) 栄養改善 | 事業・プロジェクト - JICA
https://www.jica.go.jp/activities/issues/nutrition/index.html
(注6)食べること つくること 生きること | JICA Magazine | 広報誌 JICAマガジン
https://jicamagazine.jica.go.jp/magazine/?date=2021_12&tits=%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%80%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%80%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8
(注7) nutrition_declaration_leaflet.pdf (jica.go.jp)
https://www.jica.go.jp/activities/issues/nutrition/ku57pq00002cy9oo-att/nutrition_declaration_leaflet.pdf



■独立行政法人国際協力機構(JICA)について
JICAは、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関で、150以上の国と地域で事業を展開しています。
国際社会の課題は日本とも密接に関係しています。国内外のパートナーと協力してそれらの解決に取り組み、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献します。
詳しくは https://www.jica.go.jp/index.html をご覧ください。

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この企業の情報

組織名
独立行政法人 国際協力機構
ホームページ
https://www.jica.go.jp/
代表者
田中 明彦
資本金
8,318,600 万円
上場
非上場
所在地
〒102-8012 東京都千代田区二番町5-25二番町センタービル
連絡先
03-5226-6660

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