学校法人ものつくり大学(埼玉県行田市)は、ものつくり大学 赤松明学長の任期満了に伴い、2022年4月1日付けで國分泰雄(こくぶん・やすお)が学長に就任しました。任期は2026年3月31日までとなります。國分新学長は、2021年より学長顧問を務め、その間、産学連携をはじめとする本学の教育・研究分野に対する諸活動への取り組みを推進してきました。4月5日(火)にキャンパス内の体育館で挙行された2022年度入学式において、「未来社会で必要とされるテクノロジスト人材に成長されることを祈念します」と新入生に対してエールを贈りました。
【新学長プロフィール】
國分 泰雄(こくぶん やすお)
1952年生まれ
工学博士
[略歴]
1975年 横浜国立大学工学部電気工学科卒業
1980年 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了、同年 同大学精密工学研究所助手
1983年 横浜国立大学助教授に着任。同大学教授、工学部長、理事・副学長を歴任
1984年~1985年 AT&T Bell Laboratories 客員研究員
1996年~1999年 神奈川科学技術アカデミー「3次元マイクロフォトニクスプロジェクト」プロジェクトリーダー兼務
2018年 中部大学副学長・教授、学長顧問
2021年 ものつくり大学学長顧問
【学長メッセージ】
https://www.iot.ac.jp/guide/greeting/
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【2022年4月5日入学式「新入生に贈る言葉」(全文)】
ものつくり大学へのご入学・ご進学、おめでとうございます。本日この佳き日に、ここに希望に充ちた多くの新入生をお迎えし、入学式を挙行できますことは、ものつくり大学全構成員の大きな喜びであります。全ての教職員、卒業生、在校生を代表して、皆さんを心から歓迎いたします。
ものつくり大学の一員として、皆さんの今後のご活躍を期待しております。また、これまで皆さんを励まし、支えてこられた関係者の方々にも、心よりお祝い申し上げます。今後とも温かく、励まして下さいますよう、お願い申し上げます。
先ず、皆さんが入学された、ものつくり大学についてご紹介します。
ものつくり大学は、21世紀の最初の年にあたる2001年に開学して、昨年度で20周年を迎えました。そして、文明社会の持続発展に不可欠な『テクノロジスト』を育成することを使命としています。『テクノロジスト』とは、大学の英語名称の Institute of Technologists にもなっている言葉で、「現代経営学の父」と呼ばれる著名なドラッカー教授が提唱した新しい人材の概念です。すなわち知識の裏づけと理論を基盤とした技術を身に付けて、さらに実際にものづくりができる技能にも秀でた人材を指します。
また、日本語の大学名称は『ものつくり大学』で、濁音を含みませんが、この名称は著名な哲学者で本学の初代総長でもあった梅原猛先生の命名によるものです。ものづくりは、本日これからお聞きいただきます本学の校歌にも第1番の歌詞に歌われていますが、2000年以上も前の縄文時代から続く我が国の伝統であり、また古代の大和言葉では濁点を用いないことから『ものつくり大学』と命名されました。
次に、本学が育成することを使命としている『テクノロジスト』についてお話しします。
私たちが暮らすこの世界には、人工物、すなわち人の手によって形作られたものが沢山存在します。陸地の多くが人工物で覆いつくされていると言っても過言ではありません。農耕用の田畑や耕作地、あるいは森林でさえも人の手が加えられ、さらに建物や都市や道路、交通機関、電力設備や水道などの公共インフラ、あるいは皆さんが着用している衣服から所持している身の回りのあらゆるものが人工物です。そして、これらの人工物は誰かの手によって形作られ、そして使えるようになります。植物の種をまけば芽が出て、その芽が育って実がなるのとは異なり、皆さんの着ている衣服や住居や利用している交通機関、あるいはスマートフォンなどの通信手段が自然に得られるということはありません。
人の手によって形にして使えるようになって初めて私たちの生活を支えます。このようなものづくりは、紀元前の昔から熟達した匠が技を修得して弟子に秘伝として伝承されてきましたが、技を教えるための方法はなかなか確立されませんでした。そして、18世紀になってはじめて、ヨーロッパにおいて、匠の技の経験は知識として、また技の秘伝は方法論に一般化されて、技術教育が可能になりました。その後の産業革命や科学技術の進歩によってさまざまな物が人の手によって発明され、それを作る技術も進歩してきました。今日、このような『もの』とそれをつくる『ものづくり』は、我々の文明社会を支えて持続可能な発展を可能にする上で欠くことができない基盤となっています。
この『ものづくり』は、単に知っているだけでものができるわけではなく、経験に基づく技、すなわち実践的技能が伴って初めて可能になります。すなわち、知識の裏づけと理論を基盤とした技術に加えて、実際にものづくりができる技能が必要になり、このような能力を備えた人材をドラッカー教授はテクノロジストと名付けました。本学は、このテクノロジストの育成を使命としており、そのために6つの基本理念を定めています。
この6項目の基本理念は各教室にも掲げてありますので授業が始まったら読んでいただきたいのですが、その第1番目に『1.ものづくりに直結する実技・実務教育の重視』と書かれています。この基本理念に沿って、本学のカリキュラムは実験・実習が半数以上を占めて、とくに2年生では第2Qに40日間の企業インターンシップに出かけて現場を体験するという、特徴あるカリキュラムになっています。実習やインターンシップにおいては、チームを組んでものづくりに取り組んだり、先生方から実地の指導を受けますので、コミュニケーション力やマネジメント力も鍛えられます。また、産業界の最前線で活躍した実践的技術力に優れた教員も多く、懇切丁寧に、時に厳しく、みなさんを社会で頼られるテクノロジスト人材に育成します。
このように、本学は知識・技術・技能を一体的に学ぶことができる教育体系を組み、さらにこれを実施するための教育設備はものづくりの現場で用いられる本物の機器をそろえ、実習においても本物を作る体験を通してものづくりを学ぶという、他に類を見ない特徴をもっています。皆さん、本学に入学あるいは進学をされたこの機会に、このすばらしい環境の中で学べることに誇りと自信をもち、ぜひ、我が国の社会と産業の持続的発展を支えるテクノロジストとして成長してください。
次に、学部の新入生のみなさんは本日からは、生徒から学生に身分が変わるとともに、学び方も『学生としての学び方』に変わります。とくに本学の教育体系の特徴である実験・実習を通した学びでは、知識を吸収したうえでその意味と原理を考え、理解し、そして実行するという過程を通して、初めて知識・技術・技能の一体的な学びになります。みなさんはこれからの学びにおいて、知識を吸収したうえで、常にその意味や原理を考え、そして実行するという学び方そのものを身に付けてください。こうして身に付けた学び方は、日々進歩して新しい科学技術が生まれる今日にあって、皆さんがこれからの人生を生き抜くうえで、常に最新の知識と技術・技能を自ら学び、イノベーションを起こし続けるテクノロジスト人材として活躍できる重要な素地になります。
最後に、大人になった皆さんが、社会の構成員として果たさなければならない責務についてお話しします。学部の新入生のみなさんは18歳を超えているはずですので、4月から法的にも大人の仲間入りをしました。大人になるということは、個人においても自由と責任が対になって付与されるということです。この自由と責任については、各学科や新入生ガイダンスにおいて詳しい注意点などのお話があるはずですが、同時に、社会の構成員として果たさなければならない責務があります。皆さんはこの世界に生を受けてから周囲の人々に温かく見守られて今日まで育ってきましたが、外に目を向ければ、現代の地球環境と人類社会、日本を取り巻く社会状況、国際情勢などに多くの問題が常に発生していることも理解しているはずです。大人の責任とは、このような問題に目をそらさず、友人や周囲と議論し、解決策を考え、そして必要な行動をすることです。この時にも、『常に学び、考え、実行する』というテクノロジストとしての学びの習慣は、必ず役に立つはずです。ぜひ、この習慣を身に付けて、さらにその学び方を次の世代にも伝えていただきたいと思います。社会の持続には、次の世代への学び方の伝承が必要不可欠です。
本日ものつくり大学に入学あるいは大学院に進学された皆さんが、卒業あるいは修了される時、多くのかけがえのない友人を得て、未来社会で必要とされるテクノロジスト人材に成長されることを祈念しまして、入学式の式辞といたします。
令和4年4月5日
ものつくり大学学長 國分泰雄
▼本件に関する問い合わせ先
ものつくり大学 広報地域交流係
TEL:048-564-3906
メール:koho@iot.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/