アセットオーナーは目標(運用目標)と無縁ではいられません。目標を設定し、目標に照らして資産を運用し、時間の経過とともに目標を調整します。
2019年3月に私たちがご紹介した「サステナビリティバジェット」の考え方もその一例です。ポートフォリオの中でサステナブルな資本配分が目標に対してどの程度の割合であるかを評価します。当時我々はこれを「旅」に例え、アセットオーナーはこの目標を時間をかけて引き上げていく必要があると説明しました。
そして今、アセットオーナーも運用会社も目標を設定し直し、「旅」の構想を変更する必要性に気づいています。そして、今がまさに、2050年あるいはその前までの達成を目指している炭素排出量をネット・ゼロにするため、資産においても「カーボンバジェット」の導入を検討する絶好の機会です。シュローダーは2040年までのネット・ゼロ達成を目標に掲げています。アセットオーナーの皆様も、どの程度挑戦的にするかはともかく、それぞれの目標を設定する必要があるでしょう。
レズリーアン・モーガン
ヘッド・オブ・マルチアセット・ストラテジー
ベン・ポパラル
マルチアセット・ストラテジスト
本書では、マルチアセット運用会社としての私たちが現実的なポートフォリオの観点から脱炭素化の取り組みをどのように考えたかをご説明します。ここで取り上げるトピックは4つです。
1.道筋と目標の違いを理解する。
ネット・ゼロは「目標」、脱炭素化は「道筋」です。ポートフォリオに関するアクションを脱炭素化の観点から組み立てることが大切です。
2.何を、どのように測定するかを決める。
全部でない場合は、どのアセットをポートフォリオの炭素排出量測定項目に含めるべきか。資産レベルで含める排出量の範囲をどうするか。私たちはすべての資産を含め、スコープ1、2、3の排出量を検討し、予想される気温上昇の将来を見越して検討する必要があると考えています。
3.脱炭素化の軌道を定める。
どのようなトレードオフが生じるか。脱炭素化のスピードがあまりにも緩やかであれば気候変動に伴う物理的コストや移行コストが上昇します。反対にあまりにも速ければポートフォリオにおける投資のインテグリティ¹を損なうおそれがあります。
4.道筋から逸脱せず、目標を達成するために現実的な対策を講じる。
私たちは気候にプラスの影響を及ぼすソリューションや取り組みに投資する方がオフセットよりも重要だと考えていますが、現時点で選択肢の限られたアセットクラスやセクターが一部存在することも認識しています。
※各トピックの詳細につきましては、ページ下部「リリースPDFのダウンロード」からご確認をお願いいたします。