東京医科大学公衆衛生学分野町田征己講師ら研究チーム「新型コロナワクチン接種控えと5つの心理的要因:情報収集に熱心な人は接種を控える傾向がある ~全国インターネット調査の研究結果~」



東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)公衆衛生学分野町田征己講師らの研究チームは、新型コロナウイルスワクチンの予防接種を避けること(ワクチン忌避)に繋がる心理的要因を明らかにするため、2021年1月と4月に日本全国の20-79歳の男女3,000人を対象にインターネット調査を実施しました。調査の結果、下記の知見が明らかになり、2021年11月1日に国際医学雑誌Human Vaccines & Immunotherapeuticsオンライン版に掲載されました。




【本研究のポイント】
(1)国内で初めて新型コロナワクチン忌避とワクチン忌避に関連する5つの心理的要因(5C psychological antecedents of vaccination)についての調査を実施しました。
(2)ワクチン忌避に関連する5つの心理的要因(信頼・自己満足・制約・計算・集団責任)のうち、「制約(予防接種のアクセスのしづらさ)」は男性でのみワクチン忌避と関連が見られました。
(3)「信頼(ワクチンの効果や安全性への信頼)」と「集団責任(予防接種によって他者を守るという思い)」が高いことはすべての性別・年代においてワクチン接種を希望することと関連していました。
(4)すべての性別・年代において、「計算(ワクチンに関する広範な情報検索への関与)」が高いことはワクチン忌避と関連がありました。
(5)ワクチン接種を控える人の中には、情報収集をすることで誤った情報や誤解を招く情報、否定的な情報に接する機会が多くなってしまい、その結果ワクチンを避けている人がいる可能性があり、この問題に対する対策を検討する必要があります。

【研究の背景】
 新型コロナワクチンの予防接種を躊躇あるいは拒否する、いわゆるワクチン忌避が世界的な問題となっています。新型コロナワクチンの忌避については国内外で様々な研究が行われていますがこれらの研究の多くが、ワクチンの効果や副反応に対する信頼を高めることと、新型コロナウイルスの危険性を理解してもらうことが接種率を高めるために重要であると報告しています。
 一方で、一般的にワクチン接種の意思決定は非常に複雑であり、ワクチンへの信頼や病気の危険性だけではなく、他の様々な心理的要因が影響することが指摘されています。ワクチン忌避に関連する心理的要因を包括的に説明したモデルの一つとして「5C psychological antecedents of vaccination (日本語訳:ワクチン接種の5つの心理的要因)」があり 1)、ワクチン忌避に関連する心理的要因として以下の5要因が挙げられています。

■ワクチン接種の5つの心理的要因 1):
(1)信頼(Confidence):ワクチンの効果と安全性への信頼、制度や政策立案者への信頼
  設問例:COVID-19ワクチンは安全だと確信している
(2)自己満足(Complacency):疾患の認識されている危険性
  設問例:COVID-19 は予防接種を受ける必要があるほど深刻ではない
(3)制約(Constraints):予防接種のアクセスのしづらさ、価格など
  設問例:私にとってCOVID-19 ワクチンの予防接種を受けることは不便だ
(4)計算(Calculation):ワクチンに関する広範な情報検索への関与
  設問例:予防接種を受ける前にCOVID-19ワクチンに関する話題を十分に理解しておくことは私にとって大切だ
(5)集団責任(Collective responsibility):予防接種によって他者を守るという思い
  設問例:免疫力が弱い人を守ることもできるので私はCOVID-19 ワクチンの予防接種を受ける

 新型コロナワクチン忌避の要因をより詳細に明らかにするために、このモデルを新型コロナワクチンにもあてはめて検討することは有効と考えられますが、そのような研究は世界的にも極めて乏しい状況です。
 また、ワクチン忌避者は若年者で多いなど、性別や年齢などによってワクチンへの考え方が大きく異なることが明らかになっています。よって、ワクチンの普及・啓発戦略を検討する上で、それぞれの性・年齢層にどのようなアプローチが有効かを個別に検討することが重要となります。
 そこで本研究は、日本における新型コロナワクチン接種が開始される前と開始された後における一般市民の接種希望者割合の推移と、5つの心理的要因と新型コロナワクチン接種希望の関係を、性別・年代別に明らかにすることを目的に行いました。

【本研究で得られた結果・知見】
■ワクチン接種希望者の推移(図1)
 対象者から新型コロナワクチン接種希望について聴取し、「とても受けたいと思う」あるいは「やや受けたいと思う」と回答した方をワクチン接種希望者、「あまり受けたいと思わない」「全く受けたいとは思わない」「わからない」と回答した方をワクチン忌避者と定義しました。2021年1月と4月に調査を行い接種希望者の割合を比較したところ、4月時点で接種を希望する人は全体としては増加傾向でしたが、20歳代、30歳代では依然として60%程度でした。

■ワクチン忌避に関連する5つの心理的要因(図2)
 5つの心理的要因についての解析ではすべての年代において、「信頼(ワクチンの効果や安全性への信頼)」と「集団責任(予防接種によって他者を守るという思い)」が高いことはワクチン接種を希望することと関連を示しました(図2)。「制約(接種へのアクセスのしづらさ)」は男性ではワクチン忌避と有意な関係を示しましたが、女性では関連は見られませんでした。一方、「計算(ワクチンに関する広範な情報検索への関与)」が高いことはすべての世代でワクチン忌避と関連していることが明らかになりました。これは、個人が情報収集をすることで誤った情報や誤解を招く情報、否定的な情報に接する機会が増えるためかもしれません。心理学的にも否定的な情報は、その情報量が少ない場合でも影響の大きいことが指摘されています 2)。

【今後の研究展開および波及効果】
 新型コロナワクチンの普及活動においては、ワクチンへの信頼を高めることや予防接種によって他者を守るという意思を高めることがすべての世代に効果的であり、男性ではさらに接種の利便性を高めることも効果的と考えられます。また、ワクチン接種を控える人の中には、情報収集をすることで誤った情報や誤解を招く情報、否定的な情報に接する機会が多くなってしまっている方がいる可能性があり、この問題に対する対策を検討する必要があります。

【掲載誌名・DOI】
 Human Vaccines & Immunotherapeutics
 https://doi.org/10.1080/21645515.2021.1968217

【論文タイトル】
 Trends in COVID-19 vaccination intent from pre- to post-COVID-19 vaccine distribution and their associations with the 5C psychological antecedents of vaccination by sex and age in Japan

【著 者】
 町田 征己、中村 造、小島 多香子、齋藤 玲子、中谷 友樹、埴淵 知哉、高宮 朋子、小田切 優子、福島 教照、菊池 宏幸、天笠 志保、渡邉 秀裕、井上 茂

【主な競争的研究資金】
 令和3年度 東京医科大学研究助成金

【参考文献】
1)Betsch C, Schmid P, Heinemeier D, Korn L, Holtmann C, Bohm R. Beyond confidence: Development of a measure assessing the 5C psychological antecedents of vaccination. PLoS One 2018; 13:e0208601. doi: 10.1371/journal.pone.0208601.
2)Betsch C, Renkewitz F, Betsch T, Ulshöfer C. The influence of vaccine-critical websites on perceiving vaccination risks. J Health Psychol. 2010 Apr;15(3):446-55. doi: 10.1177/1359105309353647.

○その他の新型コロナウイルス感染症に関する東京医科大学公衆衛生学分野の研究結果
 https://www.tokyo-med.ac.jp/univ/covid-19/information.html#new2

▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1
TEL:03-3351-6141
FAX:03-6302-0289
メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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