人々が想像するほどデータ・センターが環境に負荷を与えない理由

データ・センターによるエネルギー消費量は爆発的に増え、深刻な状況におちうるのではないか、との警告にもかかわらず、過去10年間においてデータ・センターで消費されたエネルギー量はほとんど変化していません。この事実は同セクターへの投資家にとっては朗報となるでしょう。

トム・ウォーカー
共同ヘッド
グローバル・リアルエステート証券


データ・センターは、炭素集約度(一定のエネルギーを利用することでどの程度の炭素が排出されるか)とエネルギー消費量に関して批判されることがよくあります。近年のインターネット需要の指数関数的な成長と共に、データ・センター・セクターは現在急成長している業界です。
Covid-19危機の間に、インターネットが日常生活に必要不可欠であることが人々の間で改めて認識された結果、データ・センターはますます注目を浴びる業界となっています。事実、英国政府は現在これらの不動産資産は社会の効果的な運営に不可欠であるため、「ミッションクリティカル(必要不可欠な資産)」と呼んでいます。
数年前までは、データ・センターなどのデジタル・インフラストラクチャーが、2025年までに世界のエネルギーの20%を消費する可能性があるとメディアは警告していました。このような可能性は、接続性の急速な成長を背景に、広く信じられていました。
国際エネルギー機関(IEA)では、Covid-19のパンデミック危機による、オンラインゲーム、ビデオ会議、ストリーミングなどの分野からの需要の高まりを受け、インターネット・トラフィックは2019年から2022年の間に倍増すると予測しています。


グリーン・データ・センター: ネット・ゼロを超えて

データ・センターの重要性が上昇 - デジタル経済の根幹にある見えざる資産


デジタルおよびデータに関連するあらゆるものが指数関数的に成長基調にあるため、デジタル・インフラストラクチャーが、世界のエネルギーを消費する主要な業界の1つになりうることは依然として容易に信じられるでしょう。しかしながら、これらのデータ・センターによる消費エネルギーが相当量になるだろうという予想とは、現実は多少異なります。
IEAの統計では、2020年にデータ・センター業界が消費したエネルギーは、世界全体のわずか1%にすぎません。この事実を聞いて多くの人が驚かれることでしょう。これは、比較的直近に報じられていた、世界のエネルギー消費量の20%を占めるという予測数値を大幅に下回ります。また過去10年間でデータ消費量は急速に増加しましたが、データ・センターが消費する電力量はほとんど変化していません。


環境へのインパクト

データ・センター業界のエネルギー使用量の推移


これらの予測が大幅に間違った主な背景として、3つの主要な領域でのイノベーションがあげられます。第一にデータ・センターの効率的な運用と開発。第二に、プライベート・データのクラウドへの転送。そして第三に、革新的なIT機器の設計。これらの各領域を詳細に分析することで、データ・センターによるエネルギー消費量が、近年のデータ・ブームにもかかわらず変化していない理由を理解しやすくなるでしょう。

データ・センターの運用は効率化がすすむ
一部の専門的なデータ・センター事業者は、管理するデータ・センターのエネルギー効率を最大化するために多くのツールを開発しています。そのような取り組みを行っているデータ・センター事業者は、Switch、Equinix、QTS、Interxion、Next DCなどがあげられますが、これらの事業者は、建設、冷却、電力の最適化、およびセキュリティの世界標準化をすすめています。

クラウドへの構造的なシフト
かつて企業は、自社のオフィスでデータ・サーバーを保有し、多くの場合は地下に配置していました。これは非常に非効率的なインフラストラクチャーの使用方法です。というのもサーバーは実際に使用されているかいないかに関わらず、24時間稼働し続けるからです。しかしながら企業は、専門的に運営されているデータ・センターに自社データを移すことでコストを削減し、運用効率を向上させられることを認識し始めています。
効率的な運営を推進するデータ・センターでは、人工知能(AI)を使用し、電力と冷却が必要な場所と時間を正確に特定します。そのため企業は専門的なクラウド事業者などによって管理されたクラウドサービスを利用することで、サーバーの稼働状況を容易に判断でき、エネルギー使用量を30%削減できると推定されています。

革新的なIT機器
人工知能(AI)とサーバーなどのIT機器の新たな進歩により、データ消費に伴うカーボンフットプリント(二酸化炭素の換算排出量)は以前よりもはるかに少ない量となっています。

環境対応の進展にもかかわらず、さらに多くの取り組むべき課題
業界が持続可能な方法で成長し続けるためには、データ・センター企業はネット・ゼロの達成に積極的に取り組む必要があります。業界内においても、リーダー企業と遅れをとっている企業があります。企業を効果的に比較するための標準化された報告指標はありませんが、一般に広く用いられている指標(PUE)があります。


グリーン・データ・センター - 7つの主要な投資分野


電力使用効率(PUE)はデータ・センターのエネルギー効率を示す指標であり、データ・センター全体の消費電力と、ICT機器の消費電力で割った数値として計算されます。PUEが低いほど効率的とされており、2020年のUptime Instituteのグローバル・データ・センター調査によると、業界平均は1.59です。

データ・センターは引き続きミッションクリティカルな資産クラス
否定的な見出しに惑わされず、その先へ視野を広げることは大切です。データ・センターは引き続きミッションクリティカルなセクターであることを忘れないでください。このデータ・センター・セクター内でポジティブな影響を与えている企業に投資することは、サステナブルなデジタル化社会の未来を創造するために重要となるでしょう。




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組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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