IPCC報告書によって変わるものは?

アンドリュー・ハワード
サステナブル投資グローバル・ヘッド

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の画期的な報告書は、今後の課題の規模を明確にしており、政府の取組みを促し、社会的圧力に拍車をかけています。しかし、より積極的な行動が必要です。


気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今週、第6次評価報告書(AR6)を発表しました。この報告書は世界中で大きな注目を集めており、現代の決定的な課題である気候変動問題に取り組むためのグローバルアクションの次のステップに合意するために、世界のリーダーたちが一堂に会するCOP26に向けて、厳しい背景を示しています。
世界の投資家として、進むべき道は明らかです。IPCCの最新の報告書は、今後の課題の規模を明確に示し、政府による行動や社会的圧力に弾みをつけていますが、私たちが向かっている目的地を変えるものではありません。


報告書から見えてきたもの
今回の報告書には、今までになかった全く新しい内容というものはほとんどありません。
気候変動に関する科学的知見が増えてきたことで、報告書の執筆者たちは、気候が変化していること、人間の活動が原因であること、そしてその変化がもたらす結果が劇的なものになることを、より確実に述べることができるようになりました。
しかし、世論も政府もおおむね、すでにこれらの点を受け入れていました。
さらに重要なことは、科学者たちが辛口で正確な表現を好む傾向があることにもかかわらず、最新の分析では、今後の脅威の規模に疑いの余地がないと示したことです。IPCCは、何もしなければどうなるかを明確にしています。どのようなシナリオを描いても、2030年代には気温が1.5度で上昇し、物理的な被害の拡大は避けられません。
2050年までに排出量を削減すれば、今世紀後半には気温が下がりますが、排出量と気温上昇の間に遅れが生じた結果、初期の気温上昇は避けられません。今後数十年で排出量を削減しなければ、21世紀末までに気温は過去の基準値よりも最大で4度上昇することになります。


この意味するところは
1.5度と4.0度の違いは些細なことに聞こえるかもしれませんが、人間が受ける影響はそうではありません。 1.5度の気温上昇では、干ばつの頻度が2.4倍、異常降雨の頻度が1.5倍になります。4度になると、これらのリスクは約2倍の5.1倍、2.8倍になり、世界の多くの地域で人が住めなくなり、大規模な移住が避けられなくなり、経済的にも深刻な影響を受けることになるでしょう。
これらの警告は、今世紀半ばまでに排出量をネットゼロにするための野心的かつ包括的な行動を各国政府が調整するために必要な触媒となるかもしれません。


やるべきことは
この目標を達成するためには、今後10年間で世界の排出量を半減させる必要があり、年率6〜7%の削減が必要です。過去50年間、二酸化炭素の排出量は平均して毎年2%ずつ増加してきました。
このシナリオの達成は可能ではありますが、著しく積極的な対策を講じない限り、非常に楽観的です。例えるならば、私は次のオリンピックに出場するかもしれませんが、優先順位とトレーニング方法を完全に見直さない限り、それは実現しないのと同じようなものです。
新型コロナウイルスの危機は、そのきっかけになるかもしれません。2020年は、世界の排出量の減少が6%と、今後維持しなければならないペースに近づいた唯一の年ですが、その減少も少なくとも部分的には一時的なものだったようで、2020年12月までに世界の排出量は前年比2%増となっています。
とはいえ、政治指導者たちは気候の脅威に焦点を当て続けており、景気刺激策を気候目標に結びつけ、今世紀半ばに世界をネットゼロにするための各国の脱炭素目標を設定しています。
現在までに、世界の排出量および経済の観点で70%以上を占める政府が国別のネットゼロ目標を設定しており、グリーンインフラへの支出は今後10年間で2兆ドルに達すると予想されていますが、その大部分は民間からの資金提供が見込まれています。目標は意欲的ですが、実現のためにはハードワークが必要で、特に「排出削減困難」 セクターにおける技術進歩に依存しています。IEAは、2030年以降のCO2排出削減量の半分近くが、未だ研究開発中の技術によってもたらされると予測しています。


企業はもっと努力すべき
企業はこの動きに追随し始めていますが、さらに前進する必要があります。世界の株式市場の約15%を占める企業が、長期的な気温上昇を1.5度に抑えるために、排出量の削減を迅速に行うことを約束しています(Science Based Targetイニシアチブを通じて目標を設定している企業の分析による)。
クリーンテクノロジーや新しく成長する製品への投資も同様に増加していますが、多くの場合、製品レンジ全体の設計変更を目標とするのではなく、個々の製品カテゴリー内での検討に止まっています。
求められる変化の規模を考えると、今後30年間で世界経済がネットゼロへの移行を実現できるかどうかは議論の余地があります。しかし、重要なのはその時期であって、移行の必要性ではありません。長期的な気温上昇を2度程度に抑えるという野心的でない目標は、プロセスを数十年遅らせることになりますが、排出量をネットゼロにする必要性や行動の緊急性は変わりません。
今年初め、私たちは科学的根拠に基づく目標を設定することを約束し、その詳細を詰めています。また、他の資産運用会社とともに、政治指導者たちに気候変動への取り組みを強化するよう働きかけています。さらに重要なことは、そこに到達するための道筋を明確にし、お客様のために運用する投資対象が直面するリスクを管理し、機会を捉えるために、可能な限りの準備を整えていることです。




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組織名
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
ホームページ
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
代表者
黒瀬 憲昭
資本金
49,000 万円
上場
未上場
所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館21 階
連絡先
03-5293-1500

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