船外機のフラッグシップ「F425A」を搭載した五十鈴丸
漁船増産と艤装センターで漁業復興を支援
東北地方太平洋沖地震では、319か所の漁港が被害を受け、約2万隻の漁船が流出するなど、三陸を中心とした東北地方の沿岸漁業・養殖業に深刻な被害をもたらしました。復興に向け、一刻も早く新たな船の提供が必要とされている中、水産庁による共同利用漁船建造補助事業がスタートし、当社もこの事業の枠組みの中で2013年3月までに4,000隻の漁船の製造を担うこととなりました。
当社の前年までの漁船・和船の製造数は約250隻。そこに2年間で4,000隻の製造は困難を極めました。そうしたなか、FRP(繊維強化プラスチック)漁船の型をはじめとする設備投資、OBの技術者や被災地の造船関係者などから募った作業員の確保、さらには物流体制の整備など、増産と納入までの時間短縮に取り組んでいきました。
また、当社の関連施設「スポーツランドSUGO」(宮城県柴田郡)の施設内の屋内テニスコートに「艤装センター」を開設。漁業者と同じく被災した販売店に代わって漁業従事者の要望を聞きながら、完成した和船の最終的な艤装作業を行うなどの対応を図りました。
野村佳孝店長(右)と阿部順一郎営業部長。浜を走り回り漁業従事者を支援
震災前の収穫水準を超えた石巻のワカメ養殖
2021年3月、震災から10年を経た宮城県石巻市では、名産であるワカメの収穫が最盛期を迎えようとしています。震災時はほとんどすべての養殖資材が流失しましたが、それでも漁業従事者たちは互いに励まし合い、奮い立ち、支援に感謝しながら、震災前の水準を超える生産量を達成するまでに復興を遂げました。そして復興を象徴するかのように、浜には「W-43AF」をはじめ、国内では初となるV8の大型船外機「F425A」など、最新鋭の船とエンジンが続々と導入されています。
これらの製品を扱う現地の販売会社(株)野村モータースさんも、漁業従事者と同じく、深刻なダメージから不屈の精神で復興の道を歩んできました。
同社の野村和宏社長は「社屋も機材も車も、すべてを失いました。諦めそうにもなりました。それでも社員が全員無事だったことは救いでした。たった1台だけ残った息子の軽自動車に社員たちと乗り込み、道なき道を走りながら市場を回ったことを思い出します。お客様(漁業従事者)たちからの励ましが何よりもありがたかった。取引先を含む“オール石巻”でここまでやってきました」と、この10年間を振り返ります。
大震災のなかで、やむなく廃業する漁業従事者もありました。それでも東北地方の漁業は、2021年のいまも着実に前進しています。
10年前に復興対策で稼働していたスポーツランドSUGOの艤装センター
■ヤマハ発動機 漁船・業務艇
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/pro-fish/
■広報担当者より
当時を知るOBや社員からも被災後すぐに支援のために漁港や販路をまわった経緯を伺ったことがあります。10年をかけて、ひとつずつ、課題解決にむけて進んでこられた漁業従事者の方や、そこで生産された海産物を我々消費者に届けてくださる方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。