障害物を検知しながら、狙ったブドウを丁寧に収穫
モビリティとロボティクスの高度な融合を
熟したブドウをそっとくわえるその姿は、まるで愛らしい小動物のように見えませんか? この写真は、長野県のワイナリー「リュードヴァン」のブドウ畑で実施したUGV
※(無人走行車両)開発試験からの一コマです。当社では、農作業の自動化と省力化を目指して汎用性の高い無人走行車両の開発に取り組んでおり、この日はUGVと多関節ロボットの組み合わせによるブドウの自動収穫、自動運搬の試験が行われました。
「畑のような半自然環境に無人のロボティクス技術を導入するためには、モビリティとロボティクスの技術を高度に融合させることが不可欠です。当社はその二つを事業として展開している世界的にも珍しいユニークな存在ですから、この領域での社会課題解決に貢献できると考えています」。そう話すのは、当社FSR開発部の西村啓二さん。
日本をはじめ先進各国では、農業における労働力不足がますます深刻化しています。「現在のシステムではGPSを使って作業点まで移動を行いますが、AI技術を用いて自律的な走行を可能にすれば、農業だけでなく、林業や漁業などさらに幅広い領域で人々の生活の基盤となる産業に貢献できると考えています」(同)
自動走行により収穫作業点に移動するUGV
高度な技術を獲得して幅広い活用へ
汎用性の高い農業用UGVの開発に取り組む中、現在、ブドウの収穫と運搬に注力しているのは、他の農作物より難易度の高い技術が求められるからにほかなりません。ブドウの位置や数を検出して収穫すべき房に近づくためには、複雑に入り組んだ枝などの障害物を避ける技術なども必要です。ディープラーニングを用いてこうした課題を一つずつ解消しながら、将来的にはより幅広い用途での活用を目指しています。
たとえば、北海道のジャガイモ畑では、現在(株)農業情報設計社や生産者である池守農場との協力で、UGVによる野良イモ駆除の試験が進められています。野良イモとは、前年の収穫期にこぼれた子イモが越冬して雑草化したもので、これを駆除するための作業が生産者にとって大きな労働負担となっています。開発チームが目指しているのは、屋内にいながらにして野良イモの駆除を行うシステム。遠隔操作と自動運転の技術を組み合わせることで、省力化に直結するソリューションを導き出そうと取り組んでいます。
「今年は、ブドウ収穫UGVのプロトモデルをアメリカに送って、現地で開発を進める計画です。同時にさまざまな専門性を持ったパートナーと出会うことで、開発を加速させたいと考えています」と西村さん。そのチャレンジの概要は、ぜひ公開中の動画でご覧ください。
※UGV: Unmanned Ground Vehicle
遠隔作業により野良イモを駆除するシステムも開発中
農業用UGVブドウ収穫実証実験(YouTube 公式チャンネル)
■広報担当者より
当社では2000年代から無人化ソリューションの開発を行っていますが、近年、ディープラーニングをはじめとする周辺技術の高度化により、開発スピードが日に日に高まっています。これを西村さんは「機が熟した」と捉えているそうです。当社の製品が収穫したブドウで造られたワインを飲める日を楽しみに、今年から本格化するアメリカでの開発を見守りたいと思います。