「1対N時代の到来に向けたわが国の人材育成の在り方」調査の結果を公表



2020年11月10日
PwC Japanグループ
「1対N時代の到来に向けたわが国の人材育成の在り方」
調査の結果を公表

Society5.0時代へのスムーズな移行が見込まれる人材は組織の中の27.7%



PwC Japanグループ(グループ代表: 木村 浩一郎)は、社会経済の不確実性の高まりによって労働者と組織の就業関係が変化するのではないかと考え、変化に適応した労働政策の検討を開始しました。
具体的には、Society5.0時代の到来により長期雇用の保障が困難になること、加えて、副業・兼業などの新しい働き方の多様化に親和性のある雇用管理への移行が求められていることを踏まえ、企業と労働者の関係が、現在の1人1社(1対1)の雇用関係から、1人の労働者が複数の企業と就労関係を持つ「1対N」の関係が増えるだろうと想定し、同状況下での能力開発支援を検討すべく、2020年3月に全国の正社員3,000人を対象としたアンケート調査「1対N時代の到来に向けたわが国の人材育成の在り方」を実施しました(調査概要は文末参照)。

Society5.0の到来に伴う今後のキャリアへの不安を感じる人は66.5%にのぼる
AIやIOTの活用をはじめとするDXの進展と、多様な人材の創造/想像による価値創造を目指すSociety5.0時代の到来は、利便性が向上する一方で、労働者に求められる知識やスキルに大きな変化をもたらすと同時に、企業等が長期雇用を維持することが難しくなるといわれています。本調査から、そのようなSociety5.0時代が到来した際に、66.5%の人が自分のキャリアに不安を感じていることが分かりました。


創意工夫力があり、キャリア展望が明確な人材は組織の中で27.7%に留まる
Society5.0時代においては、「1対N」の企業と労働者の柔軟な関係性が実現する一方で、労働者は自律的にキャリアを形成していく必要性が高まります。自らキャリアを形成していく際に必要な「ジョブ・クラフティング」※と「キャリア展望の明確性」を軸に回答者を「自律自走型」「組織従事型」「何とかなる型」「パラサイト型」の4つのグループに分類したところ、1対N時代へのスムーズな移行が見込まれる「自律自走型」は27.7%に留まることがわかりました。
※ジョブ・クラフティング:労働者が主体的に自らの仕事を再定義し、創意工夫するという行動を意味し、労働者が主体的に業務に取り組むため、仕事の成果にもつながるといわれている。



「自律自走型」人材は転職/異動経験を有していることなどからの高い情報感度が特徴として挙げられる
「自律自走型」人材の特徴として、転職や大きく異なる仕事/職場への異動経験を有していることや、関わりあう人材が多様であるがゆえの社会動向の情報感度の高さが挙げられます。さらに、この「自律自走型」の人材はこれまでの自身のキャリアに対する納得度や自身の力でキャリアを形成してきたという意識が高く、自身の強みとして「主体性」をあげる割合が他の分類より高いことも特徴となっています。

「自律自走型」人材の活用に向けて企業はクリエイティブな職場環境の実現が求められる
また、「自律自走型」人材の所属する職場特性としては、新しい発想やアイディアなどチャレンジが受容される職場であり、かつ多様性の高い、クリエイティブな要素が多い傾向にあることが分かりました。また、上司である管理職が人材マネジメントに関わる割合が高く、能力開発を支援する制度の導入および利用率も高くなっています。能力開発は個人の資質要因も影響しますが、組織として職場の管理職や管理職が創出する職場環境に影響を受けることが明らかとなりました。こうした結果を受けて、企業では、次世代に向けた人材ポートフォリオを明確にした上で、「自律自走型」人材への移行を促す必要がある場合には、従業員への啓発や支援・制度を充実させるのみならず、制度活用の効果を下支えする管理職の意識改革や職場環境改革に取り組む必要があると考えます。

本調査において、これからの時代に活躍する人材像について明らかになったものの、労働者の意識醸成や企業の変革は途上にあり、自助だけでなく人材育成・教育における公助、共助も含めたあるべき姿の検討が急がれます。

背景
わが国をはじめとした各国ではいま、「D」がつく3つのメガトレンド(1:Demography:高齢化の進展 2:Digitalization:デジタル技術の進展 3:Diversity:人材の多様化)に直面しています。また、グローバル化の加速や昨今の不確実で予測困難な状況から、企業などはこれまで以上にスピーディに、各事業に必要な人材を、必要な時に必要なだけ確保することが求めるようになると考えられます。したがって、これまでのように人材を長期に雇用し、多額の教育投資をするインセンティブは小さくなり、限定的な対象へ積極的に教育投資をする方向性が強くなると想定されます。一方で、労働者は、どのような時代においても「労働/職業」を得られるように、エンプロイアビリティ(雇用される能力)を高めていく必要があります。

PwC Japanグループでは、今後、教育投資を限定的に行わざるを得ない企業等と、エンプロイアビリティを高める必要がある労働者の両者がwin-winとなり、これからの時代に求められる能力を開発しうる支援とはどのようなものかを探るため、本調査を実施しました。

調査対象・分析対象
全国の全産業における高卒以上の年収200万円以上、年齢20~55歳の正規雇用者3000人
※年齢性別分布は以下の表のとおり



収集したサンプルにおいて業種や職種が不明な7サンプルについては集計から除外し、全2993サンプルを分析対象とした。

調査方法
インターネットモニターリサーチ

調査時期
2020年3月26日~3月29日

調査結果抜粋
・AIなどIoTの活用が進み、デジタル革新が進むことにより利便性が高まる一方で、求められる知識やスキルの変化が大きくなるため、企業等が長期雇用(終身雇用)を維持することが難しくなる「Society5.0」時代の到来に際し、自分のキャリアにどの程度不安を感じるかたずねたところ、全体では「非常に不安を感じる」「不安を感じる」「少し不安を感じる」を合わせて約66.5%となった。

・これまでのキャリアについて、「自分で納得できるキャリアをつくってきた」という質問に対し、「そう思う」と「まあまあそう思う」を合わせると51.6%となるが、「私のキャリアはこの先、社外でも通用すると思う」という質問に対し、「そう思う」と「まあまあそう思う」を合わせた割合は45.2%に低下した。

・「自己啓発」に投じる時間について聞いたところ、全体の平均時間は、就労日は約0.3時間、非就労日は約0.7時間であった。

・今後のキャリアについてたずねたところ、全体では「特に希望はなく、成り行きに任せる」が18.2%と最も多く、「どういう道に進んだら良いかわからない」が18.0%と次に多くなった。「どういう道に進んだら良いかわからない」と回答した割合が最も多かったのは25-29歳男性で22.6%、次いで30-30歳女性で21.0%と、若年層でも2割以上がキャリア展望を明確に有していないことがわかった。

・「今後のキャリア展望変数」の明確度の違いと「ジョブ・クラフティング(労働者が自ら仕事を定義し、創意工夫する行動)変数」の高低からから回答者を「自律自走型」「組織従事型」「何とかなる型」「パラサイト型」の4つのグループに分類し、その違いについて分析したところ、特に「組織従事型」がキャリアに対し強い不安を感じていることが分かり、また「自律自走型」は職場にクリエイティブな要素がある傾向にあることが分かった。

*詳しくはこちらの報告書をご確認ください。https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/human-resource-development2011.pdf

政策提言活動
PwC Japanグループでは、「社会における信頼を築き、重要な課題を解決する」というPwCのPurpose(存在意義)の実現につながる活動として、2018年秋に政策提言活動を有志で開始しました。日本の重要な社会課題である「社会保障・少子高齢化」「人材育成・教育改革」「地方創生」「多文化共生」「環境・エネルギー」という5つのテーマを取り上げ、解決に向けた政策の研究や提言作成を進めています。このたび「人材育成・教育改革」分野において、変化に適応した労働政策を探るために、本調査を実施しました。

以上


PwCについてhttps://www.pwc.com
PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界155カ国に及ぶグローバルネットワークに284,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はhttps://www.pwc.com をご覧ください。

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この企業の情報

組織名
PwC Japanグループ
ホームページ
https://www.pwc.com/jp/ja/
代表者
木村 浩一郎
資本金
1,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0004 東京都千代田区大手町1‐1‐1大手町パークビルディング
連絡先
03-6212-6810

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