-COVID-19危機には「マスク国家隊」を素早く形成し競合各社が連携協働-
台湾貿易センター ニュースレター 4回シリーズ:台湾主力産業の「いま」
第1回:工作機械・ツール関連産業編
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響は、世界的なマスク不足という状況にも及んでいます。現在、台湾の工作機械業界は、生産ラインの調整や増設によりマスクの生産を拡張増強し、世界各地における感染拡大防止のために重要な役割を果たそうとしています。
台湾工作機械企業一致団結!「マスク国家隊」確立
台湾では去る2月22日、産業一体となったイニシアティブ「マスク国家隊」が形成されました。マスク国家隊は、台湾精密機械研究センター(PMC)、財団法人工業技術研究院(ITRI)の研究開発及び技術支援のほか、台湾工作機械業界最大手である東台精機、台灣瀧澤科技、永進機械工業、亞崴、ハイウィン、大銀をはじめ多数の台湾工作機械企業が結集、団結して確立されたものです。これらの企業はいずれも工作機械産業におけるパイオニア、大手企業として、通常は強い競合関係にあります。しかし今回のコロナウイルス感染症による世界的な危機局面に際しては、各企業の社長が自社事業を一旦ストップし、競合各社との緊密な協力提携や無償での「人員、製造、部品」の供給を素早く決断したことで、過去に例を見ない強力なマスク国家隊の形成が実現しました。 精密機械研究センター(PMC) 総経理 賴永祥氏はこう述べています。「台湾政府より2億台湾元(約7億円)が投じられ、マスクの生産設備60基を導入、増産が指示されましたが、当初半年かかると予想されていた生産量を1ヶ月で生産できるようになったのは、まさに”マスク国家隊”の強力な支援があったからこそです」
こうして台湾国内におけるマスクの1日あたりの生産量は、4月3日時点で1300万枚に達しており、台湾経済部(日本の経済産業省相当)は、6日以降は1500万枚を製造できる見通しと発表しています。
今回のような需要の急激な変化や、きめ細かいカスタマイゼーション(個別化傾向)要求に応じて、生産体制やサプライチェーンを迅速かつ柔軟に変更、最適化するためには、ひとつの企業努力だけでは大きな限界があり、産業を横断した強力な生産ソリューションが不可欠になります。台湾のスマート工作機械業界は、ICT産業、メディカル関連産業はじめ多彩な先端企業と近接、集積し、連携する仕組みを長期にわたって築いてきました。世界各国がそれぞれの科学、技術、知恵を結集してCOVID-19の拡散を防止し、危機や不安を乗り越えるべき今、台湾のスマート工作機械業界もこれまでの取り組みや知見を結集し、全力で貢献していきたいと考えています。そして一日も早く、世界中の人々が安心で平穏な毎日を取り戻し、あらゆる製品の製造やサービスの提供が活発旺盛に復旧、発展することを心から願っています。
以下では、現在の台湾スマート産業における最近のハイライトを紹介します。
現在、世界規模でインダストリー4.0を推進し、製造業全体としての自動化に向けた動きが加速しています。台湾のスマート機械産業は、強力なICT産業チェーンと精緻な機械技術とを統合し、包括的なスマート生産ソリューションを提供することで、各国ごとに特徴のある製造システムのアップグレードや生産の最適化のニーズに応え、グローバルな産業アップグレードフェーズにおける最高の選択肢を提供しています。
台湾機械産業の生産高・輸出額動向
2018年、台湾の機械生産高は1兆1,800億NT$(現在のレートで約約4兆2,600億円)と過去最高を記録し、輸出額を7.3%伸ばしました。米中貿易戦争の影響を受けた2019年の輸出額は8%減少したものの、機械業界全体の生産高は依然として1兆1,000億NT$(同、3兆9,700億円)を維持し、交渉段階にある新規受注も含めて、受注高は米中摩擦の影響から徐々に持ち直しつつあります。
今年に入ってからは、COVID-19の拡大に伴い、1月の輸出額は615億NT$(現在のレートで約2,220億円)対前年同月比15.4%減少と影響を受けた統計となっています。一方で、台湾メーカー各社が、その製造拠点を台湾に戻して生産ラインを拡大したり、多くの企業が東南アジアや南アジアなど、中国以南の新しい市場で工場や生産ラインの新展開を進めているのに併せ、台湾工作機械産業もこれをサポートする万全の体制を整えています。
また、諸外国政府も持続的に産業オートメーションや生産のスマート化を推進していることから、スマート機械製品に対する広範かつに力強い需要は今後もますます旺盛であることが予測されます。台湾機械工業会理事長 柯拔希(Ke, Ba-Xi)氏は、2020年2月中旬時点での予測として、「産業アップグレードや機械業界の安定した需要から、台湾の工作機器の輸出は今年、5~10%の増加を見込んでいる」と述べています。
台湾機械産業における最近のイノベーション例
研究開発、デザイン、品質、マーケティングなどで卓越した製品のみに贈られる台湾エクセレンス賞(Taiwan Excellence Award)の、2020年度受賞企業のうち機械業界の企業は、全業界中で2番目に多い46社を占めました。、これは、台湾の機械業界が従来の製造機械メーカーから製造サービスソリューションのプロバイダーへと変貌を遂げていく中で、製品の革新的な性能や品質が高く評価されたことを示すものです。2020年度受賞企業のイノベーションとして、例えば以下のようなものが含まれます。
衆程科技股份有限公司(Equiptop HiTech Corp)は、IIoT(製造業IoT)と連携するデジタル制御システムを採用し、正確性と精密性を高めた独自の
“TD-ADC”スマート精密グラインダーを他の設備機器にも取り入れることで、顧客の生産ラインを、より正確で効率的なものに構築しています。
オートメーション機器のサプライヤーである達佛羅企業有限公司(Buffalo Machinery)は、
スマート機械監視システム「Axile ART(2020年度 台湾エクセレンス賞金賞受賞)」を発表し、生産データをより迅速に把握し、ビッグデータを活用して生産ラインのエネルギー消費や製造プロセスを効果的に管理できるようにして、ダウンタイム率の大幅な削減を実現します。
GreenTrans Corp.社の
「無軌道走行型ロボット」は、卓越した正確性を持つ無軌道誘導装置により、粉じん障害のないクリーンルーム環境など、半導体製造工程における無人オペレーションを実現します。
ACME Machinery社の
AM-ICD染色機は、染色工程をスマート制御により簡素化し、染時間の短縮やテキスタイルカラーの統一を図るだけでなく、水の使用量やCO2排出量を大幅に削減する革新的な工程設計によって従来の染色業界の課題である環境汚染の問題も大幅に軽減します。
いうまでもなく機械はすべての産業の基盤であり、スマート機械業界の究極の目標は、いかに、より正確で効率的かつ融通性の高い生産ラインを顧客のために構築できるかにあります。日本やドイツと並び工作機械生産における世界的リーダーとして、高精度の機械製造技術とこれを支える強力なR&Dや卓越した対応力をもつ台湾機械産業は、今後、あらゆる国が高効率な製造施設を構築していく上で強力なパートナーとしてサポートしていきます。
台湾貿易センター(TAITRA)のWalter Yeh(葉明水)CEOは、TAITRAは、目覚ましい発展を遂げている台湾スマート機械産業の一層の振興を図り、台湾製品の強みを世界各国で紹介するため、あらゆる形で支援すると明言しています。今年12月に東京ビッグサイトで開催予定の「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF)」、米国で9月に開催予定の「国際工作機械見本市(IMTS)」など世界の主要展示会には、台湾から多数の機械メーカーが参加を予定しています。
また、台湾国内では9月の「台北インテリジェント機械製造技術展(iMTduo)」、9月の「台北国際プラスチック・ゴム工業見本市(TaipeiPlas)」をはじめ、各種の国際見本市を主催するほか、11月には東京で約55社の台湾精密加工部品のベンダーと直接商談の場として「2020年台湾精密加工部品調達商談会」の開催を予定しています。さらに台湾では、台湾工作機械・周辺機器製造業工業会(TMBA)主催で11月に台中市で「台湾国際工作機械展(TMTS)」を開催し、海外バイヤーの注目を集める最先端の工作機械を展示します。
*本ニュースレターは、激動する国際社会,科学技術、経済、ビジネス、貿易などの潮流のなか、台湾主力産業の「いま」を、台湾貿易センター(日本のJETROに相当)より4回シリーズ週刊でお届けするものです。以降、第2回:5G通信・AIoT産業 第3回:スマート医療産業、第4回:ドローン関連産業 を予定しています。
台湾エクセレンス賞について
台湾エクセレンス賞(Taiwan Excellence Award)は台湾製品のイメージアップやグローバル市場へのプロモーションを目的として1993年に設立されました。毎年、台湾の経済部による厳格な審査を経て受賞製品が選出されます。研究開発、デザイン、品質、マーケティングなどで卓越した製品のみがその称号を得ることができ、受賞すれば国際的な様々なマーケティングやプロモーションでロゴマークの使用が許されます。6本のアーチラインからなる、台湾エクセレンスロゴマークは「台湾伝統文化における円満を追求する心」を表し、「台湾が国家レベルで認めた優良製品」であることを証明するマークでもあります。
https://www.taiwanexcellence.org/jp
中華民国経済部国際貿易局について
中華民国経済部(日本の経済産業省に相当)国際貿易局(BOFT)は、貿易及び経済協力に関連する政策と規定の実施を担っています。1969年に設立されたBOFTの役割と位置づけは、変化し続ける世界経済と貿易環境のニーズを満たすべく定期的に調整されてきました。BOFTは国内外における貿易関連プロジェクト・イベントにおいて中華民国対外貿易発展協会(日本での名称は台湾貿易センター、略称TAITRA)を指導し、サポートしています。数十年に渡りTAITRAと緊密な連携を保っているBOFTはビジネス、貿易及び投資に関連する重要な政府プロジェクトを今後も引き続きTAITRAに委託し、あらゆる面から台湾の海外プロモーションを行っていきます。
台湾貿易センター(TAITRA)について
1970年に台湾の対外貿易促進を目的に、台湾政府と業界団体の支援により設立された非営利団体です。本部は台北にあり、台湾国内5箇所の事務所(桃園、新竹、台中、台南、高雄)と世界各地にある63の海外事務所をネットワーク化し、総勢1,300名以上のスタッフが台湾企業の国際競争力の強化、海外企業のビジネスマッチング、世界市場への進出をサポートしています。TAITRAは毎年、台湾で年間約40の国際専門見本市を主催する他、TWTC台北国際展示ホール、TWTC南港国際展示ホール、TICC台北国際会議センターなどの施設を運営しています。1973年に東京で日本事務所を設立以来、台日パートナーシップの強化を目指し、数多くの見本市へ出展するなど、日本・台湾間の貿易振興を図っています。また日本企業に対し、台湾からの調達及び台湾への投資、台湾で開催される国際専門見本市への参観及び出展誘致などを行っています。現在、台湾貿易センターは日本国内に3箇所の事務所(東京、大阪、福岡)を設けています。
https://tokyo.taiwantrade.com/