ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)にて、2020年度にご覧いただける企画展覧会をご案内いたします。現在予定している3つの企画展覧会について、概要をご紹介いたします。
シュルレアリスムと絵画 ―ダリ、エルンストと日本の「シュール」
会期:2019年12月15日(日)~ 2020年4月5日(日)
2019年はシュルレアリスム誕生から100年という節目にあたります。フランスで誕生したシュルレアリスムは、理性を中心とした意識では捉えきれない新しい現実を表現することを目指して始まりました。この100年で変遷を遂げたシュルレアリスムの展開と、フランスから日本、そしてアメリカ、アジアにいたるまでのシュルレアリスムの広がりを約100点の絵画、版画によってたどります。
古賀春江 《白い貝殻》 1932年(昭和7)ポーラ美術館
フランスの詩人アンドレ・ブルトンが中心となって推し進めた「シュルレアリスム」は、20世紀の芸術に最も大きな影響を及ぼした運動のひとつです。彼らは理性を中心とする近代的な考え方を批判し、精神分析学の影響を受けて理性の支配の及ばない無意識の世界に「超現実」を求める前衛的な詩作を繰り広げ、1924年には「シュルレアリスム宣言」を発表しグループとして活動を始めました。ドイツ出身の画家マックス・エルンストによる実験的な作品に美しさを見いだすなど、シュルレアリスムは詩や思想だけではなく絵画の分野にも拡大します。またスペインからこの運動に加わったサルバドール・ダリは「偏執狂的=批判的」方法という独自の理論にもとづいて絵画を制作し、美術だけではなくファッション界をも巻き込む大きな流行を作り出していきます。
こうした動向は同時代の日本にも伝えられ、1930年代を通して「超現実主義」という訳語のもと、最新の前衛美術のスタイルとして一大旋風を巻き起こします。しかし、日本では「無意識の探究」という本来の目的を離れ、現実離れした奇抜で幻想的な芸術として受け入れられます。そして、しだいに東洋的な思想と混ざり合いながら独自の絵画表現や「シュール」という感覚が生まれるに至ります。
本展は、西洋におけるシュルレアリスムの運動からどのようにシュルレアリスム絵画が生まれたのか、さらに超現実主義から、いわゆる「シュール」と呼ばれる独自の表現への展開に焦点をあてる試みです。
モネとマティス ―もうひとつの楽園
会期:2020年4月23日(木)~ 11月3日(火・祝)
19世紀後半、近代化する都市を離れ、パリ郊外のジヴェルニーの自邸に造成した睡蓮の池を繰り返し描いたモネ。南仏のアトリエを調度やテキスタイルで装飾し、室内画を制作したマティス。モネとマティスは、それぞれ「庭」、「室内」という描くテーマとなる空間を創りあげ、画家の理想の楽園ともいうべき環境で絵画を追究しました。
クロード・モネ 《睡蓮の池》 1899年 ポーラ美術館
19世紀後半に、近代化する都市を離れ、豊かな自然に心の平穏を求めて、郊外や地方で新しい風景を発見したのが、クロード・モネ(1840-1926)です。終の棲み家となったジヴェルニーにおいて、画家は思うがままに庭を造成すると、この私的な敷地をアトリエとして、睡蓮の連作という自らの理想を実現します。
アンリ・マティス(1869-1954)もまた、室内という環境を自在にいろどり、装飾的な絵画を制作しました。南仏のアトリエで、モデルや衣装、調度品によって室内を舞台さながらに飾り立てたのち、画家はその空間を独自の絵画表現へ反映させました。
アンリ・マティス 《トルコの椅子にもたれるオダリスク》 1928年 パリ市立近代美術館
© Musée d’Art Moderne/Roger-Viollet
理想の空間を現実世界に創り出し、それを主題に作品を制作したモネとマティス。さらに、自らの生きる環境でもある庭や室内を理想化した点においても、彼らは互いに照応する芸術家であると言えます。本展では、二人の画家の絵画制作において通ずる点を、海外と国内の作品によって探ります。
日本とフランス ―往還する美(仮)
会期:2020年11月 ~ 2021年3月(予定)
フランスを中心として巻き起こった「ジャポニスム」は、欧米のデザインや、伝統を重んじるアカデミックな芸術界にまで広範な影響を及ぼしました。時を同じくして、開国を機に急速な欧化政策を進める日本からは、黒田清輝をはじめとする多くの若者がフランスへ留学し、彼らがそこで学んだ美術はその後の近代日本美術の礎となっていったのです。双方の芸術が生み出した「美の往還」を探ります。
ポール・セザンヌ 《砂糖壺、梨とテーブルクロス》 1893-1894年 ポーラ美術館
19世紀の後半から20世紀初頭にかけて、日本の浮世絵や工芸品が欧米の芸術に大きな刺激を与え、モネやゴッホなど近代を代表する芸術家たちの重要なインスピレーション源となったことはよく知られています。フランスを中心として巻き起こったこの「ジャポニスム」は、欧米のデザインや、伝統を重んじるアカデミックな芸術界にまで広範な影響を及ぼしました。時を同じくして、開国を機に急速な欧化政策を進める日本からは、黒田清輝や安井曾太郎をはじめとする多くの若者がフランスへ留学し、彼らがそこで見て学んだ美術は、その後の近代日本美術の礎となっていったのです。
安井曾太郎 《薔薇》 1954年(昭和29)ポーラ美術館
近代化の進む激動の時代、日本とフランスという二つの国は、それぞれに新しい美の基準や価値観を生み出し、模索する上で、互いに必要不可欠な存在であったといえます。パリ画壇の寵児となった藤田嗣治(レオナール・フジタ)による独自の技法や世界観もまた、日仏両方の要素が絡み合った結果であるといえるでしょう。大量のモノや情報、そして人の往来が可能になった時代に、長い歴史の中で培ってきた双方の芸術が生み出した「美の往還」を検証する試みです。
■ポーラ美術館について
2002 年に神奈川県箱根町に開館。ポーラ創業家二代目の鈴⽊常司が40 数年間にわたり収集した、⻄洋絵画、⽇本の洋画、ガラス⼯芸、古今東⻄の化粧道具など総数約 1 万点を収蔵。
・開館時間︓9︓00-17:00(入館は 16︓30 まで)
・休館⽇︓無休(展⽰替えのための臨時休館あり)
・所在地︓神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭ 1285
・TEL︓0460-84-2111
- 本件に関するお問合わせ先
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<報道関係者お問合わせ先>
ポーラ美術館 広報担当 : 中西、井本 TEL:0460-84-2111/ FAX:0460-84-3108
ポーラ美術館広報事務局 : 屋木、名取 TEL:03-4570-3172/ FAX:03-4580-9128
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