応用数理研究室(機械学科・中山雄行准教授)に所属する山本圭恭さん(大学院工学研究科博士前期課程2年)が、米国ジョージア州アトランタで昨年11月18~20日に開催された「The 71st Annual Meeting of the American Physical Society Division of Fluid Dynamics(第71回アメリカ物理学会流体力学部門)」の学生ポスターセッションで1位に選ばれました。山本さんは2017年も同部門1位に輝いており、過去に例がないとみられる2年連続受賞に関係者から驚きの声が上がっています。
「アメリカ物理学会で1位ということは、野球に例えると世界一のチームを決めるアメリカシリーズ(=ワールドシリーズ)で1位というのと同じくらいの価値」と、同席していた世界第一線で活躍する福本康秀先生(元九州大学マス・フォア・インダストリ研究所長)は評価しています。同国際会議は流体力学の研究コミュニティにおける世界最大の集まりの一つであり、今回も米国内外から3000件を超えるエントリーがありました。
山本さんが取り組んでいるのは、自然現象を解明して物理量や法則を導く「基礎研究」で、流れを理論的に考察して渦の物理量や定義などを導出し、乱流の元である渦の現象の解明に励んでいます。
今回、1位に輝いたポスター発表のテーマは「Relationships between vortex stretching and its elongating feature among several scale vortices in an isotropic homogeneous turbulence(一様等方性乱流における様々なスケール間の渦における渦伸長と渦強化特性の関係)」。流体力学では、「渦の伸長」により回転しようとする渦が自分自身を強化する現象が知られています。しかし、「渦巻く渦(旋回を伴う渦流れ)」における渦の伸長には、旋回を発達させる成分と渦軸を倒してしまう成分が共に存在することが中山准教授の研究で示されました。私たちがよく見る様々な流れは乱流ですが、これは様々なスケールの渦が発生して生じます。山本さんは、これらのスケールの異なる渦の相互・共存作用について上記観点から解析しました。その結果、全周で吸い込みを伴っている渦は、その渦を強めると同時に、より小さいスケールの渦を強めるという相互作用があり、また、同じメカニズムにより、湧き出し流れを伴う渦は、自身の渦を弱めると共に、より小さいスケールの渦も同時に弱めていることが分かりました。これにより、乱流の渦のスケール構造には、渦の発達・減衰の相互作用があることを明らかにしました。
山本さんは、本学機械学科の独自プログラムである「P.E(Professional Engineer)」コースに参加しており、実用的な英語のトレーニングを受けていることが今回の発表でも役立ちました。「2年連続で過分な賞を頂き、信じられないというのが率直な気持ちです。福本先生をはじめ世界の著名な先生方から御褒めの言葉を頂き、とてもうれしく思います。受賞は、親身に時に厳しく指導してくださった中山先生のおかげです。今回の経験で、広い視野を持つことによる柔軟な発想と日々の地道な努力の大切さを学びました。世界の研究者のレベルと意識の高さを忘れず、自らの仕事や人生に活かしたいと思います」と喜びを話しています。
指導に当たる中山准教授は「2017年は『運良く過分な賞を頂いた』と本人も話していましたが、これが2年連続であるということは驚くほかありません。私が生まれる前から流体力学の理論を研究していらっしゃるケンブリッジ大学のKeith Moffat先生も『APS(アメリカ物理学会)でこのような2年連続の受賞は例がないのではないか』と言われていました。APSでの2年連続1位が本学の学生たちの励みになれば幸甚です」と快挙を称えています。
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